2023年4月、KDDIがスマホでプレイできるメタバース「αU」をリリースしたことが話題となりました。
日本でも次々とメタバースプラットフォームが登場していますが、なかなか身近な存在に感じられないのが現状です。
そのため、
- なぜメタバースが流行らないのか?
- メタバースが普及しない原因は?
- メタバースが普及するための方法は?
などの疑問を持つ方も多いでしょう。
結論から言うと、メタバースに関する誤解や技術的な問題がその普及を妨げているのです。
この記事ではメタバースがなぜ普及しないのか、流行らない理由とその将来性について、具体的な事例を交えながら解説します。
誤解と真実を理解することで、メタバースの未来に対する考え方が変わるでしょう。
ぜひ最後までご覧ください。
メタバースとは、オンライン上でアバターを使ってコミュニケーションをとれる仮想空間のことです。
ゲームだけでなくビジネス、教育、建築など、さまざまな分野で活用されています。
メタバース内ではアバターやアイテムがNFT化され、仮想通貨を使って取引されるケースも。
Meta(旧Facebook)や、マイクロソフトなどの大手企業がメタバース事業に参入しており、世界的に注目を集めています。
メタバースについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
メタバースに関するよくある5つの誤解
メタバースの普及を妨げる、よくある誤解5つをご紹介します。
- メタバース=ゲームのイメージがある
- 専門知識が必要そう
- NFTや仮想通貨が必要でうさんくさい
- VR機器を購入しなくては利用できない
- セカンドライフと同じように失敗しそう
1.メタバース=ゲームのイメージがある
メタバースとゲームとのイメージが強く結びついているのは、初期のメタバースがゲームの世界で形作られたからでしょう。
メタバースは自由度が高いことからゲームとの相性がよく、多くのメタバースゲームがリリースされています。
そのため、人々はメタバースをゲームと同じものとして捉えがちです。
しかし、メタバースはゲームだけでなく、ライブイベントやビジネスミーティングの場としても活用されています。
単なる遊びの枠を超えて、ビジネスの効率化にも役立つツールとしての認識が広まれば、メタバースの普及も進むことでしょう。
メタバース会議について詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
2.専門知識が必要だと思われている
メタバースは高度なテクノロジーを使用しているため、専門的な技術知識がなければ利用できないと誤解している人も散見されます。
しかし現状では、スマートフォンやパソコンからもアクセス可能で、特別なスキルや知識なしでも楽しめるメタバースが増えています。
例えば、「Roblox」は子供でも簡単に利用でき、自分だけのゲームやアイテム作成が可能です。
2023年4月にKDDIがリリースしたメタバース「αU」では、アバターを使ったユーザー同士の交流のほか、アーティストによるライブイベントが開催されています。
メタバースへのアクセスはますます簡単になっており、今や誰でも簡単に利用できるのです。
αUの始め方については以下の記事で詳しく解説しています。
3.NFTや仮想通貨が必要でうさんくさい
メタバースゲームでは、NFTアイテムやキャラクターが仮想通貨を通じて取引されることがあります。NFTや仮想通貨はまだ一般的に理解されていない部分もあるため、疑惑を持つ方もいると考えられます。
たとえば、「Decentraland」では土地や建物をNFTとして購入できますが、実際の物理的な資産ではありません。
また、NFTは法的な所有権がまだ認められていないことから、メタバースへの参加に二の足を踏む人もいるでしょう。
しかし、メタバースとNFTや仮想通貨は相性の良い関係ですが、必ずしも必要なわけではありません。
実際に、日産自動車が実験的にリリースしたメタバース店舗では、新車の試乗や購入契約が可能で、仮想通貨やNFTは利用されていません。
メタバースはNFTや仮想通貨を利用しなくても、十分に楽しめる存在なのです。
4.VR機器を購入しなくては利用できない
メタバース利用にVR機器が必須だという誤解も、その普及を妨げている一因です。
2023年5月現在、代表的なVR機器「Meta Quest 2」は約6万円と手軽に購入できる価格ではありません。また、使用方法が煩雑だったり、セットアップに手間がかかるなど、導入のハードルが高く感じられます。
たしかにVR機器を利用すれば、メタバースならではの没入感や新しい体験が得られます。
しかし現在、多くのメタバースはVR機器を用意しなくても、PCやスマートフォンだけで利用可能です。
例えばメタバースゲームの代表「The Sandbox」や、NFTアートギャラリーを作成できる「onCyber」などは、VR機器なしでも十分に楽しめます。
メタバースは、ネットサーフィンやスマホゲームと同じくらい手軽な存在になりつつあるのです。
スマホでプレイできるメタバースを紹介している記事があるので、参考にしてください。
5.セカンドライフと同じように失敗しそう
セカンドライフは2003年にリリースされた初期のメタバースプラットフォームです。当初は大きな期待を集めたものの、利用者の減少とともに影響力を失ってしまいました。
セカンドライフの失敗がメタバース全体に対する否定的なイメージを形成したことも、メタバースが普及しないと主張する人が多い原因の一つでしょう。
セカンドライフが失敗した大きな原因は、当時のパソコンとネット環境が低スペックであったことです。そのため、リアルタイムでの大人数参加型のメタバースを維持できませんでした。
しかし、現在はPC性能の向上と5G回線の普及により、メタバースでの問題点は大幅に改善しています。
セカンドライフは現在も開発を続けており、将来的にスマホアプリ版がリリースされる予定です。
メタバースとセカンドライフの違いについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
メタバースが普及しない本当の理由を解説
日本でメタバースが普及しない要因として考えられるのは、上記の誤解だけではありません。
メタバースが普及しない本当の理由として次の3点が挙げられます。
- 自由すぎて何をしていいかわからない
- リモートワークの普及率の低さから利用しない
- 日本での仮想通貨普及率が低い
1.自由すぎて何をしていいかわからない
メタバースにおいて、ユーザーは自由に行動をしたり、他のユーザーと交流したりできます。
しかし、メタバースは自由度が高すぎる傾向があり、何が目的であるのかが不明瞭なため利用しないというケースも見られます。さらに法整備やセキュリティ対策が不十分なのも現実です。
今後メタバースが普及するためには、イベント案内のスタッフ配置や、よりわかりやすい環境設計が必要になるでしょう。
2.リモートワークの普及率の低さから利用しない
日本では、リモートワークの普及率が下がっており、メタバースの普及に影響していると考えられています。
メタバースは対面に近い感覚を生み出すことができ、遠隔地にいても同じ空間に集まれます。しかし、リモートワークが少なくなり対面する機会が増えると、メタバースが不要になるケースも少なくありません。
総務省がまとめた「企業のテレワーク実施率」によると、2020年3月から2020年5月にかけて日本のテレワークの普及率は17.6%から56.4%と大幅に上がりました。
しかし、2020年5月以降は テレワークの普及率は下落傾向にあり、2021年3月の時点では38.4%となっています。
2023年に入り新型コロナウイルスの対策緩和が進行中です。さらに、日本は他国と比較して対面でのコミュニケーションを重要視する傾向にあり、、メタバースの向かい風となっています。
3.日本での仮想通貨普及率が低い
日本での仮想通貨普及率は決して高くなく、メタバースの普及に大きな影響を与えていると考えられます。仮想通貨の意味や特徴を正確に理解している人は決して多いとはいえません。
2023年5月現在、仮想通貨情報調査会社tripleAの調査によると、アメリカの普及率13.22%に対して、日本の普及率は1.74%です。
さらに、仮想通貨は価格の変動が激しいだけでなく、取引所のハッキング事件なども起こっており、危険性を感じる人も少なくありません。
一部のメタバースにおいて仮想通貨が共通通貨として活用されています。仮想通貨を使わないメタバースもありますが、仮想通貨へのイメージがメタバースの普及に影響している可能性も考えられます。
仮想通貨の安全性と理解が高まれば、将来的にメタバースの普及にも影響を与えるでしょう。
メタバースが今後普及するには?将来性について解説
メタバースが将来的に普及するためには、以下のポイントが必要でしょう。
- VR機器の技術進化
- 自治体のメタバース利用促進
- スマホで気軽に楽しめるメタバースの発展
- メタバースでの雇用の増加
1.VR機器の技術進化
メタバースを普及させるためにはVR機器の技術進化が必要です。2016年にはVRヘッドセットが各社から販売されましたが、価格が高価なことからブームは長く続かず、予想以上の成長は見られませんでした。
2016年に販売された代表的なVRヘッドセット「Oculus Rift」の販売価格は約10万円。
しかし、2019年に登場したVRヘッドセットは4万円台まで価格が下がり、ライトユーザーの需要に応える結果となりました。
さらに、2020年以降新型コロナウイルスの影響により、バーチャルイベントの開催やバーチャル出社を導入する企業が増えるなどVR市場の成長が加速したのです。
技術面においても、VR機器の軽量化やパソコンやテレビに接続しないスタンドアローン型の登場など年々進化しています。
VR機器の進化が、メタバースの普及につながる可能性が十分にあるのです。
2.自治体のメタバース利用促進
企業だけでなく自治体においてもメタバース利用促進が進んでいます。それぞれの地方自治体がメタバースを活用することで社会課題の解決を目指しているのです。
たとえば静岡県焼津市は、メタバース上で開催されている世界最大級のVRイベントである「バーチャルマーケット2022Summer」に参加しています。ふるさと納税返礼品の紹介や焼津市のPR動画で市の様子を伝えるなど、焼津市の魅力を発信することが目的です。
イベントの来場者がふるさと納税返礼品を紹介しているデジタルポスターに触れることで、自動的に焼津市が運営しているふるさと納税サイトに飛ぶ仕組みとなっています。
今後、地方自治体がより活発にメタバースを利用することが、ライトユーザーに普及する要因となるでしょう。
3.スマホで気軽に楽しめるメタバースの発展
メタバースを本格的に体験するには、VRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)が必要ですが、VR機器がなくてもスマートフォンを使用して手軽にメタバースを始められます。
2023年5月現在、簡単に3Dアバターを作成して遊べるZEPETOや、スマホアプリがリリースされているClusterなど、スマホだけで楽しめるメタバースプラットフォームが存在します。
たとえばClusterは、スマホアプリをインストールしたあとアバターを作成するだけで、仮想空間を探索できます。
音楽ライブやビジネス会議などさまざまな用途で利用できるほか、ほかのユーザーと交流できる点も大きな特徴です。
また、将来的にスマホと連動できる安価で高機能なVR機器がリリースされれば、よりメタバースの普及が進むでしょう。
4.メタバースでの雇用の増加
近年、人手不足を解消するためにメタバースを活用した雇用をおこなっている企業が増えています。
メタジョブ!では、バーチャルショップにて接客業務をしたりVRイベントで案内をする人材を募集しています。
1,000人以上のワーカーが登録しており、あたらしい働き方に注目が集まっていると言えるでしょう。
プログラマーや3Dデザイナーだけでなく、接客アルバイトの求人などもあるため、専門知識がなくてもメタバースで働くことができるのです。
メタバースでのイベントスタッフに参加した方のツイートも見られます。
ほかにも、人材派遣を手がけるパーソルマーケティングや求職者の悩み相談を提供しているポートの就活メタバースなど、現実世界の雇用を目的としたメタバース活用の事例も増えています。
参考:メタバースが浸透すると「求人」と「雇用」はどう変わる?(@DIME)
日本では少子高齢化が進み、人手不足が大きな課題です。メタバースでの雇用が増えれば、メタバース自体の需要が高まる可能性があります。
メタバースが普及しない理由に関するQ&A
メタバースが普及しない理由に関するよくある質問と回答を紹介します。
疑問をお持ちの方は参考にしてください。
- メタバースが今後普及するための課題は?
- メタバースの問題点は?
- メタバースは失敗する?
- メタバースは意味がないと言われる理由は?
- メタバースが今後普及するための課題は?
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メタバース普及の課題は、まず技術的な障壁の克服です。VR機器の軽量化やスマホ対応、そしてメタバース内での安全な取引環境構築が必要です。
また、他国と比較して日本での仮想通貨の普及率が低いことも課題の一つとして挙げられます。
- メタバースの問題点は?
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現実世界から逃避し、メタバース内でしか生活できなくなる依存リスクがあります。また、個人情報の管理やオンラインでの犯罪対策も課題です。
メタバースの危険性については以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
メタバースの危険性とは?廃人化・情報流出リスクなどを防ぐ安全策 メタバースってなんだか危ない気がする VRで廃人になってしまいそうで怖い 個人情報が流出したりしないだろうか 上記のように感じている人は多いのではないでしょうか?… - メタバースは失敗する?
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メタバースはまだ始まったばかりで、失敗するとは言えないでしょう。VR機器の技術向上やメタバースでの雇用増加などと共に、今後ますます普及していくと考えられます。
- メタバースは意味がないと言われる理由は?
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一部の人々はメタバースをただのゲームだと捉え、現実世界の問題を解決するよりも、逃避する場所だと捉えていることが理由として考えられます。
しかし、メタバースはゲームだけではなく、会議などのビジネス領域や、ライブイベントなどのエンタメ領域でも活用されています。
メタバースは単なる現実逃避の場所ではなく、経済活動の場として機能しているのです。
まとめ
この記事では、メタバースが普及しない理由と将来性について解説しました。
最後に重要な点をおさらいしておきましょう。
- メタバース普及の障害は、誤解や先入観によるものが多い
- リモートワークの普及と仮想通貨への理解が普及を促す
- VR技術の進化はメタバース体験をより身近にする
- 自治体の積極的なメタバース利用が普及を加速させる
- メタバース内での雇用が増加しつつある
メタバースはまだ発展途上の技術であり、VR技術の発展やビジネス利用の拡大などが進むことで、さらなる進化が期待できます。
メタバースが普及すれば、新たな雇用の場や、リモートワーク、ソーシャルコミュニケーションの場としての可能性も広がるでしょう。