メタバース上での建築・設計・デザインとは?VR建築が作り出す新しいビジネス

  • メタバースで建築するって、どういうこと?
  • 実際の建築物を見ていたい
  • どこのメタバースで建築できるんだろう?

このように考えている人は多いのではないでしょうか?

近年メタバースでの建築が徐々に普及し、ビジネスシーンでの活用例も増えてきました。

今回はメタバースでの建築がどういうものか、実際の事例なども交えて解説します。

また専用のプラットフォームなども紹介しているので、ぜひご参考にしてください。

そもそもメタバースとは?

メタバースとは、オンライン上でアバターを使ってコミュニケーションをとれる仮想空間のことです。

ゲームだけでなくビジネス、教育、建築など、さまざまな分野で活用されています。

メタバース内ではアバターやアイテムがNFT化され、仮想通貨を使って取引されるケースも。

Meta(旧Facebook)や、マイクロソフトなどの大手企業がメタバース事業に参入しており、世界的に注目を集めています。

メタバースについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。

目次

メタバースでの建築とは?

まずはメタバースの建築に関して以下の点を理解しましょう。

  • メタバースでの建築とは、どういうことか?
  • 建築の基本的な流れ
  • メタバース建築のメリット

メタバースの建築は現実と比べて、やり方やメリットが異なります。

それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。

メタバースでの建築とはどういうことか?

メタバースでの建築とは、主に建築特化型のメタバースプラットフォーム上で、仮想の建物を建てることを意味します。
あくまでメタバース内にとどまる建築物を建てることも、現実世界に建設予定の建物をメタバース内で再現し、リアルな建築に活かすことも可能です。

実例として、特化型メタバースプラットフォーム、「comony」が挙げられるでしょう。

仮想空間に、建物が表現されています。自分自身の分身となるアバターを作成し、建築物の内外を見て回ることも可能です。

建築業の分野では、どのような外観になるのか確認したり、物理的に建築できるかチェックしたりして、設計やデザインの補助に役立てられます。

一般のユーザーやクリエイターにとっては、建築のアイデアを形にする貴重な場であり、NFTアートとして売り出すこともできるようになりました。

メタバースでの建築は、企業個人問わず広く活用されています。

メタバース建築家や登場

メタバース建築家も登場しており、代表人物としてMOSHITA氏が挙げられます。

同氏はメタバース建築を主業とする株式会社tenshabiを立ち上げ、数々の建築物を手掛けてきました。

プラットフォームのひとつであるDecentraland(ディセントラランド)には仮想の自社オフィスビルを設計、建築しています。

スケルトンの円柱に、ミントブルーの鱗を持った竜がとぐろを巻いた斬新なデザインですね。

そのほか番匠カンナ氏やHazime氏など、現実での建築を手がけていた専門家が、メタバース建築でも活躍しています。

メタバース建築の基本的な流れ

メタバースでの建築は以下3段階に分けられます。

  1. モデリングソフトで建築する
  2. 建築データをメタバースにアップし、再現された建築物を分析する
  3. 現実に建築予定であれば分析して得られた情報を現実の建築に活かす

メタバース建築では、下図の「Autodesk 3ds Max」に代表されるモデリングソフトを利用し、建築物を作り上げます。

Autodesk 3ds Max
(引用:AUTODESK

完成したら、comonyのような建築特化型メタバースプラットフォームにデータをアップロードします。

その後以下動画のようにアバターで仮想空間に入り、建物内外を出入りするなどして状況を確認。

メタバースで建物を表現するのが目的であれば、ここで建築は完了です。

現実で建物を建てる必要があるなら、メタバース建築で得られた情報を設計やデザイン、建設作業に反映します。

一般的なプラットフォームで建築することもある

一般ユーザー向けプラットフォームで建築するケースもあります。

代表的なのがcluster(クラスター)というメタバースで、ここではユーザーは「ワールド」を作成することが可能です。

ワールドではユーザーが自由に建物を作ったり、あるいはその周辺の設備を整備したりできます。

clusterのような一般ユーザー向けのプラットフォームでの建築は、設計やデザインの補助ではなく、自社ブランドをアピールしたり、メタバース内でのバーチャルショップを開いたりするために活用されます。

資産価値のある土地もある

一部のメタバースには資産価値のある土地が存在し、売買されたり、建築用地として使われたりしています。

The Sandbox
(引用:The Sandbox

上図はメタバースのひとつ、The Sandbox(サンドボックス)のマップです。

四角形の一つひとつがLAND=土地として売り出されており、ユーザーは仮想通貨でこれを購入できます。

すでにアイコンが表示されている四角形はすでに買い手がついた区画です。

このようにメタバースでは資産としての仮想の土地が存在し、そこに建築物を建てたうえで売却するというビジネスも実現可能になりました。

メタバース建築に興味があるなら土地を購入してみてもよいでしょう。

メタバース建築4つのメリット

メタバース建築のメリットは大きく分けて4つあります。

  1. より正確な建築物の設計やデザインに役立てられる
  2. 建築作業のやり直しを防げる
  3. 共同作業者や顧客に正確な情報を提供できる
  4. 一般ユーザー向けメタバースの場合は売買やレンタルで収益化できる

建築物を仮想空間に再現してアバターを通して観察することで、設計やデザインの精度が高まります。

事前に多くのことを検証し、建築作業のやり直しを防げるようになりました。

メタバース上の建築物は、図面や文字のやりとりよりもはるかに情報量が多く、共同作業者や顧客に対してより正確な情報を提供できます。

The SandboxやDecentralandのような一般ユーザー向けメタバース上の建築では、売却やレンタルを収益源とすることが可能です。

というようにメタバース建築には、現実の建築にはないさまざまなメリットがあります。

デメリットも多い

メタバース建築には、以下のようなデメリットもあります。

  • 今までにないセンスや知識が求められる
  • データの乗っ取りなどのリスクもある

今までにないセンスや知識を求められるのはデメリットであり、同時に大きなハードルと言えるでしょう。

メタバースごとの世界観に合わせたり、現実ではありえないアイデアを作り出したりする必要があります。

Web上にある以上、データの乗っ取りなどが懸念されるのもデメリットです。

たとえばログイン情報を盗まれて建築物を破壊されるなどのトラブルに巻き込まれるかもしれません。

メタバースを活用した建築の取り組み事例3つ

メタバース建築はすでに多くの組織や団体で活用されています。下記では主な具体例を3つ紹介します。

  1. 清水建設/メタバースで「リモート施工管理」を実現する
  2. 奥村組/メタバース技術研究所で工数削減を目指す
  3. 大成建設・ワントゥーテン/石見銀山の文化をメタバース上に建築

いずれも実際の業務に活用され、一部ではすでに効果が認められています。それぞれ詳しく解説するのでご参考にしてください。

清水建設/メタバースで「リモート施工管理」を実現する

大手総合建設会社の清水建設は、クラウド型施工管理ソフト「BIM 360Docs」を導入し、現場へ行かないリモート施工管理を実現しました。

ソフト上に現場のモデルやデータが再現され、VRデバイスを通してリモートで点検できるようになっています。

BIM 360Docsによるリモート施工管理
(引用:清水建設

リモートでの施工管理が実現し、現場を往復する無駄な時間がなくなりました。

清水建設の佐竹省胤氏によれば、4時間かかっていた現場巡回が30分で終わるようになったとのことです。

同じようにソフトやVRを組み合わせれば、さらに多くの作業がリモート化され、業務を効率的に進められるようになるかもしれません。

(参考:AUTODESK

奥村組/メタバース技術研究所で工数削減を目指す

奥村組は仮想の模型を制作できる「メタバース技術研究所」を構築し、改築工事などの検討に活用しています。

メタバース技術研究所
(引用:PRTIMES

予定している改築を再現し、実際に工事を実施したらどうなるのかシミュレーションできるしくみです。

関係者がメタバース内でシミュレーション情報を共有することで、手違いや作業のやり直しを防げると見られています。

この事例を参考にすれば、余計なリソースやコストの発生を防止できるかもしれません。

(参考:デジタルクロス

大成建設・ワントゥーテン/石見銀山をメタバースで建築

大成建設とワントゥーテンは、「石見銀山メタバースプロジェクト」を推進しています。

石見銀山群言堂が所有する茅葺きの住居「鄙舎(ひなや)」をメタバース上に建築しました。

石見銀山メタバースプロジェクト
(引用:BuildApp News

メタバース上の鄙舎(ひなや)は、一般ユーザーに開放し、仮想の観光を体験として提供する予定です。

今後は2027年の石見銀山世界遺産登録20周年に合わせ、石見銀山周辺の街並みや街道をメタバースで建築するとしています。

観光地をメタバースで建築することで、これまでとは違った形で地域の魅力を伝えられるようになりつつあります。

建築で利用されるメタバースのプラットフォーム例

メタバース建築では、以下のような建築に特化したプラットフォームが使われます。

  • comony
  • Creak and River
  • mona

これらのメタバースを利用すれば、高度な建築を実現できます。

それぞれ詳しく解説するのでご参考にしてください。

comony/建築・不動産業向けメタバース

comony
(引用:comony

comonyは、ラストマイルワークス株式会社が提供するメタバースです。

建築メタバースとしては有名な存在であり、多くの建築業者やクリエイターに利用されています。

空間ギャラリー
(引用:comony

建築物は「空間ギャラリー」にアップロードされ、多くのユーザーに見てもらえます。

メタバース内にはチャットや音声通話も完備されており、関係者と建築物を見ながら打ち合わせできます。

超建築メタバース/一級建築士が設計した建築用メタバース

建築プロデュースを手がけるCreak and Riverは、バーチャル展示場サービス「超建築メタバース」を公開しています。

超建築メタバース
(引用:Creak and River

同サービスと連携すれば、「超建築メタバース」内部に、自社の建築データを反映しメタバース上に再現できます。

「ランドスケープ」と「ミュージアム」ふたつのモデルが用意されており、建築物のデザインやテーマ、目的に応じて使い分けられます。

<ランドスケープモデル:モデルハウス展示場をイメージ>

ランドスケープモデル
(引用:Creak and River

<ミュージアムモデル:美術館と展示場をイメージ>

ミュージアムモデル
(引用:Creak and River

プレゼンテーション機能やARシミュレーションなど、ビジネスをサポートするツールも多彩。

サービス提供からわずか半年で8万人が来場しており、仮想の展示場としての役割を果たしている様子がうかがえます。

MONA/個人のNFT販売に向いたプラットフォーム

MONA
(引用:MONA

MONAは個人クリエイター向けの建築メタバースです。

自身が制作した建築物をアップロードし、マーケットプレイスで販売でき、仮想通貨「イーサリアム(ETH)」で取引できます。

MONAのマーケットプレイス
(引用:MONA

個人クリエイターが建築物を売り買いできるサービスはほとんどありません。


MONAはそういった人にビジネスチャンスを提供する場所として、重要な役割を果たしています。

メタバース上の建築や設計に関するよくある質問

本記事では、メタバースの建築に関して解説しました。最後によくある質問に回答します。

  • Facebookがメタバースに1兆円を投資したのは本当?
  • 建築家としての求人はある?
  • 建築した建物はいくらで販売できる?

それぞれ詳しく解説するのでご参考にしてください。

Facebookがメタバースに1兆円を投資したのは本当?

Facebookは、2021年にメタバースに1.5兆円を投資すると発表しています。

メタバースやVRの関連会社に次々と投資し、自社製のメタバース「Horizon Worlds」もオープンしました。

HOrizon Worlds
(引用:Meta

世界的な大企業が積極的に投資していることからも、メタバースの市場には可能性があるといえそうです。

建築家としての求人はある?

クラウドワークス

業務の一部にメタバースやVRの技術を利用する職種の求人は複数存在します。

建築・デザイン会社の東京オデッセイは以下の要項でスタッフを募集していました。

東京オデッセイ
(引用:TECTURE MAG

そのほかBIMサポートやDX事業を手がけるSTUDIO55でも求人が出ています。

今後メタバースやVRが普及すれば、上記のような募集も増えてくるでしょう。

クラウドソーシングでメタバース建築を依頼する人も

クラウドソーシングサイトでも、メタバースの建築に関連した依頼が出ることがあります。

クラウドワークス
(引用:CrowdWorks

報酬は依頼者によりますが、上図のように500万円以上を提示しているケースもあります。

メタバース建築のスキルを持っているなら、クラウドソーシングサイトで副業ができるかもしれません。

建築した建物は販売できる?

一般ユーザー向けのメタバースで建築した建物は販売でき、実際に売買が成立した事例もあります。

売却されたのは、デジタルアーティストのクリスタ・キムによる仮想住宅、「マーズ・ハウス」です。同住宅はメタバースDecentraland上に存在します。

この住宅は米国トロント在住の人物が50万ドル以上に相当する仮想通貨量で購入しました。

上記のとおりメタバース上の建築物は、その価値によっては高値で販売できる可能性があります。

(参考:BUSINESS INSIDER

まとめ

本記事ではメタバースの建築に関して解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。

  • メタバースの建築とは、主に特化型プラットフォームで仮想の建築物を表現すること
  • 実際に建築する前段階で、完成系を確認したり、問題点を探したりできる
  • すでに存在する建築物を再現して、コンテンツとすることもある
  • 清水建設のようにメタバースを実際の業務に取り入れ、大幅なコスト削減を実現した例もある
  • メタバース建築ができるプラットフォームとしては、comonyや超建築メタバースなどが挙げられる
  • 今後もメタバースやVRが普及すれば、建築業界にも大きな変化が起こりそう

メタバースは、主に一般ユーザーによるゲームやコミュニケーションの場として使われていますが、最近は建築業界にも応用されるようになりました。

活用事例は増えつつあり、建築に特化したプラットフォームも次々に登場しています。

今後はメタバースをどのように建築業で活用できるかが、一つのポイントとなりそうです。

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この記事を書いた人

「Metaland編集部」は、Web3.0、メタバース、AIといった最新のトピックを皆様にお届けします。専門知識がない方でもご心配は不要です。情報を深くかつ分かりやすく解説することを重視し、新しいデジタル時代への案内役となることを目指しています。一緒に新たなステップを踏み出しましょう!

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