「ディズニーがメタバース事業から撤退」
このニュースで、ディズニーがメタバース事業に参入していたことを初めて知った方も多いかもしれません。
そんな方の中には、
- メタバース事業に参入した理由
- 実際にディズニーが行ったメタバース事業
- メタバース事業から撤退した理由
などが気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事ではディズニーのメタバース事業の背景や、具体的な取り組みについて紹介します。
メタバース撤退理由も解説しているので、ディズニーのメタバース事業に関心を持っている方は、ぜひ読み進めてみてください。
メタバースとは、オンライン上でアバターを使ってコミュニケーションをとれる仮想空間のことです。
ゲームだけでなくビジネス、教育、建築など、さまざまな分野で活用されています。
メタバース内ではアバターやアイテムがNFT化され、仮想通貨を使って取引されるケースも。
Meta(旧Facebook)や、マイクロソフトなどの大手企業がメタバース事業に参入しており、世界的に注目を集めています。
メタバースについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
ディズニーがメタバース事業に進出した理由3つ
ディズニーがメタバース事業に参入した主な理由は以下の3つです。
- メタバース市場は成長が期待できる
- ディズニーのコンテンツとメタバースは相性が良い
- メタバースを通じて、ファンと双方向性を深められる
順番に解説していきます。
メタバース市場は成長が期待できる
総務省の発表によると、メタバースの世界市場は2021年に4兆2,640億円でしたが、2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予想されています。
実際に、2021年にはMicrosoftがメタバースに参入、旧Facebookも社名をMetaに変更するなど、大手企業がメタバースへの参入を始めました。
メタバース市場の将来性を見込み、ディズニーも同様に参入したと考えられます。
ディズニーのコンテンツとメタバースは相性が良い
ディズニーのようにコンテンツを持つ企業は、メタバースとの相性が良いといわれています。
2021年10月には日本発のメタバースプラットフォーム「cluster」で、ディズニーコラボのハロウィーンイベントが開催されました。
イベントでは、スタンプラリーや限定アバターなどを無料で楽しめました。
ディズニーのコンテンツとメタバースは相乗効果が見込めると踏んだのでしょう。
メタバースを通じて、ファンと双方向性を深められる
メタバース上ではこのようなことが可能になります
- コンサートや映画上映などのエンターテイメント体験
- 商品の閲覧・販売
- 共通の趣味や興味を持つ人々との交流
従来はディズニー側から一方的にコンテンツを配信するしかなかったものも、ファン参加型の体験に作り変えることが可能です。
ファンにとっては、新たなディズニーの世界に没頭できる楽しい場所となるでしょう。
ディズニーのメタバース事業の具体的な取り組み
ディズニーは、どのようなメタバース事業に取り組んできたのでしょうか?
実際に行ったメタバース事業を5つまとめました。
- VR上に「バーチャルディズニーストア」をオープン
- 「仮想世界シミュレーター」の特許を取得
- テーマパーク内でARイベントを開催
- VR技術を搭載したオンラインゲームを発売
- ディズニーのNFTを発売
具体的な内容を、順番に紹介していきます。
VR上に「バーチャルディズニーストア」をオープン
2020年12月19日〜2021年1月10日に開催されたバーチャルマーケットで、VRで来店できるディズニーストアがオープンしました。
実際の店舗で販売されている商品の3D展示や、写真撮影を楽しめました。
さらに、ディズニー公式オンラインストア「shop Disney」と連携しており、スムーズに商品の購入が可能に。
VRを通じて、ディズニーグッズを楽しむ新しい体験ができたのです。
「仮想世界シミュレーター」の特許を取得
ディズニーは2021年12月、米国特許商標庁から「バーチャルワールドシミュレーター」という特許の承認を取得しました。
この特許はヘッドセットなどの機器を使用せず、バーチャル世界が楽しめる技術です。
具体的には、ディズニーテーマパーク内の空間や壁に3D効果を投影するなどの活用が想定されています。
特許取得の流れから、メタバース事業に積極的であることがうかがえますね。
テーマパーク内でARイベントを開催
2023年1月、ディズニーはAR体験ができる新しいイベント「ディズニーストーリービヨンド」を開催しました。
イベントでは、謎解きやARを使用したフォト体験などを実施。
イベントの一環で、ホーンテッドマンションの周辺でカメラを起動させると、キャラクターが現れ、一緒に写真撮影ができました。
ホーンテッドマンションは「ディズニーストーリービヨンド」の第一弾とのこと。
シリーズ化が期待されるため、次回のイベントも楽しみですね。
ディズニー公式の求人サイトでは、ディズニーランドで働くキャストの仕事風景をVR動画で紹介しています。
ディズニーファンにとって、VRを通じてキャストの仕事風景を覗くことは非常に貴重な体験でしょう。
普段は見ることのできないキャストの裏側を垣間見ることで、ディズニーパークの魔法の隠された一面に触れられますよ。
VR技術を搭載したオンラインゲームを発売
ディズニーは2020年11月に、VRアクションアドベンチャーゲーム「Star Wars: Tales from the Galaxy’s Edge」を発売しました。
プレイヤーは宇宙船の乗組員となり、スターウォーズのキャラクター達とストーリーを進めていきます。
VR技術によって没入感が高まり、まるで自分がスターウォーズの世界にいるかのような感覚を味わえます。
無料体験版も配信されているので、気になる方はプレイしてみてはいかがでしょうか。
Star Wars: Tales from the Galaxy’s Edge以外に、スターウォーズのVRゲームは2種類発売されています。
まず、ピンボールで銀河を探検する「Star Wars Pinball VR」。
全8種類のピンボール台が用意されており、スコアを競い合います。
そして、映画のような没入感の高いストーリーが魅力の「Vader Immortal A Star Wars VR Series」。
全3部作となっており、ライトセーバーの技を磨きながら、ダース・ベイダーの世界を駆けめぐります。
これらのVRゲームはMeta Questから購入できるので、ぜひチェックしてみてください。
ディズニーのNFTを発売
定額動画配信サービス「Disney+」のリリースを記念して、NFTが発行されました。
このコレクションは「GOLDEN MOMENTS」と呼ばれ、ディズニーキャラクターが黄金の彫刻になっています。
4,333点のNFTが発売され、即日完売するほど人気だったようです。
VeVeのアプリからNFTを購入できるので、お気に入りキャラクターのNFTを見つけてみてはいかがでしょうか。
「Disney+」未加入のユーザーがNFTを購入した場合、サブスクリプションが3カ月間無料になるチケットが配布されました。
3か月間無料チケットの対象は、以下の9カ国です。
- アメリカ
- カナダ
- イギリス
- ドイツ
- オーストリア
- オランダ
- スペイン
- メキシコ
- シンガポール
なお、現時点では日本は対象外。
しかし、キャンペーンによっては日本も対象になる可能性があるので、今後の展開に期待しましょう。
GOLDEN MOMENTSの価値が急騰
なんと発売から数日で、NFTの価格が2倍以上に跳ね上がったそうです。
特にエルサのNFTが人気を集めました。
ファンの関心が非常に高いことを示していますね。
ディズニーがメタバース事業を閉鎖した理由
なぜディズニーは、メタバース事業から撤退したのでしょうか?
撤退理由は、主に次の3つです。
- 短期的な成果が見えづらかった
- 事業のコスト削減
- ストリーミング領域での競争が激化した
ひとつずつ解説していきます。
短期的な成果が見えづらかった
将来性が期待されているメタバース市場は、以下の要因で市場が冷え込んできています。
- 参入企業の増加による、市場の飽和
- メタバース参入に必要な高額な投資
- イーサリアムのガス代の高騰
また、AI業界の短期的な成果が注目を集めていることも、要因のひとつといえるでしょう。
さまざまな要因が重なった結果、メタバースへの期待が低下した可能性があります。
米国モーニングコンサルタントの調査によると、2,000人のうち68%が「メタバースに興味がない」と回答したそうです。
需要が少なければ、市場の成長が遅くなる可能性も。
しかし、メタバース市場はまだ発展途上の段階です。
現時点では興味のある方は少ないかもしれませんが、今後、需要が変化する可能性も考えられます。
事業のコスト削減
2023年2月に、ディズニーは会社全体で55億ドル(約7,200億円)の経費削減をすると表明しました。
経済状況の悪化やストーリミング事業の不況などが、コスト削減の理由とされています。
その結果、短期的な成果が期待できないメタバース部門も、経費削減の対象に含まれました。
ただし、メタバース部門が経費削減の対象になったからといって、完全に撤退するわけではありません。
市場が回復し、需要が増えれば、メタバース部門を再構築する可能性も考えられます。
今後の動向に期待し、メタバース部門の再構築を待ちましょう。
2023年1月、Microsoftは産業用メタバース部門を廃止し、約100人の従業員をレイオフすることを発表しました。
今後、MicrosoftはAI部門に注力すると表明しています。
Microsoftは23日、AI研究所OpenAIに対する追加投資で合意したと発表した。両者は投資内容について「複数年、数十億ドルの投資」と表現している。
引用:AXION
メタバース部門の撤退は残念ですが、MicrosoftがAI部門に注力することで生まれる新たな革新に注目です。
ストリーミング領域での競争が激化した
動画配信サービスの競争激化も、メタバース部門廃止につながった要因のひとつです。
コロナ禍における巣ごもり需要の影響もあり、2022年7〜9月にかけてDisney+の会員数が1210万人増加。
しかし、制作コストやマーケティング費用の増加により、動画配信部門は14億7400万ドルの営業損失を計上しました。
さらに、北米市場などで会員数の天井が近づいたことなどが課題となり、早期の回復は難しいと言われています。
結果として、メタバース部門を含めた大規模レイオフにつながったのです。
ディズニーのメタバース事業に関するQ&A
ディズニーのメタバース事業に関するよくある質問をまとめました。
- メタバース事業を再開する可能性はありますか?
- 他の企業と共同でメタバース開発をする可能性はありますか?
- ディズニーは仮想通貨分野にも参入していますか?
気になる項目をチェックしてみましょう。
- メタバース事業を再開する可能性はありますか?
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残念ながら、2023年6月現時点で再開する情報は出ていません。
しかし、レイオフはあくまで一時的な解雇のため、事業再編の可能性はゼロではありません。
- 他の企業と共同でメタバース開発をする可能性はありますか?
-
メタバースではありませんが、ディズニーがAppleのMR(Mixed Reality)ヘッドセット向けのコンテンツを提供することが発表されました。
- MR(Mixed Reality)とは?
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MR(Mixed Reality)とは、複合現実のこと。
CGなどで作った仮想物体を、現実空間で目の前にあるかのように映し出す技術です。
MRヘッドセットは2025年に発売予定で、価格は約3,000ドル(約42万円)とのこと。
エンターテイメントの領域が広がることで、楽しい体験が期待できます。
メタバースとは異なる形態ですが、ディズニーの新たな取り組みに注目です。
- ディズニーは仮想通貨分野にも参入していますか?
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2022 Disney Acceleratorという事業開発プログラムに、仮想通貨「ポリゴン(MATIC)」が参加しました。
- ポリゴン(MATIC)とは?
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ポリゴン(MATIC)は、イーサリアムチェーンの処理速度の遅さと、取引コストの高さを解決する目的で作成されたチェーン。
イーサリアムよりも手数料が安く、処理の速さが特徴。
ディズニーは独自の仮想通貨を発行していませんが、事業支援やNFT(非代替トークン)などの形で関与しています。
仮想通貨ポリゴン(MATIC)とは?特徴や購入方法、将来性を解説 出典:CoinGecko 近年、多くのNFTゲームがリリースされ、Polygonチェーンが利用されています。 Polygonチェーンで構築されたNFTゲームには仮想通貨MATICが必要なため、…
まとめ
この記事では、ディズニーのメタバース事業の具体的な取り組みと、撤退理由について解説しました。
最後に重要な点をおさらいしておきましょう。
- ディズニーのコンテンツがメタバースに適しており、相乗効果が期待された
- ディズニーが仮想世界のシミュレーター技術に関する特許を取得
- 動画配信サービス「Disney+」のリリース記念NFTを発売
- ストリーミング事業の不況などが理由で、事業コストの削減が必要に
- メタバース部門は短期的な成果が見込みにくく、経費削減の対象となった
ディズニーはメタバース部門を廃止しましたが、新しいテクノロジーの発展に対して積極的な姿勢を見せています。
メタバース需要が高まれば、事業再編の可能性もあるので、今後もディズニーから目が離せません。