近年では、あらゆる分野でAIが台頭しています。日常生活やビジネスで、実際に活用している人も多いでしょう。しかし、
- AIにはどこまでのことができるのか
- できないことは何か
- どのように活用されているのか
といった疑問を持っている人も多いでしょう。AIは、人間にはできないことを簡単にこなします。
一方でどうしても人間には及びそうもないこともあり、AIが今後も台頭しそうな現代で、その違いを理解しておくのは重要でしょう。
そこで本記事ではAIにできること、できないこと、そしてその活用事例に関して解説します。興味がある方はぜひ参考にしてください。
AIにできること
現代のAIでできることは多岐に渡りますが、特に以下を得意としています。
- 自然言語処理
- 画像生成・認識
- ビッグデータ処理・シミュレーション
- 自動制御およびアシスト
- 医療アシスト
高度なコミュニケーションやクリエイティビティが必要でないなら、AIは強みを発揮します。それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
自然言語処理
AIは特に自然言語処理を得意とします。
これは、コードではない人間の話し言葉や書き言葉を理解し、対応する情報をアウトプットする処理のこと。たとえばChatGPTでおこなわれていることが、自然言語処理にあたります。
これまでコンピューターや機械は、C言語やPythonなどのプログラミング用語でしか指示を理解できませんでした。
しかしAIは莫大な情報やデータを事前に学習しています。学習内容を活かして、話し言葉や書き言葉をも理解できるようになりました。
このようにして、ChatGPTではテキストによる、SiriやAlexaでは音声によるコミュニケーションが成立しています。
自然言語処理がさらに高度化したら、AIとさらに当意即妙なコミュニケーションができるようになるでしょう。
画像生成・認識
画像生成や認識も、AIが得意とするところです。画像生成に関しては、そのクオリティの高さから、今では一般的な技術となりました。
たとえばChatGPT上で利用できる画像生成ツールDALL・E3(ダリスリー)では、ほんの数行の指示で、以下のような高品質な画像がアウトプットされます。
上図を出力するにあたって提示した内容は「ジャパニメーション的な絵柄」「制服を着た少女」など簡単なものです。
他にも数多くの画像生成ツールが登場し、誰もが簡単に高品質な画像を生成できるようになりました。
このように画像やイラストに関しては、AIが強みを発揮しています。
DALL-E3ついて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
ビッグデータ処理・シミュレーション
人間では処理できないビッグデータや、考えが及ばないシミュレーションは、AIの得意領域です。
人間が処理、整理したりするのが困難なほどに巨大なデータ群のこと。媒体も画像、音声、テキストなど多岐にわたり、扱うのが困難。
AIは、人間よりも圧倒的に早くデータを処理できます。またビッグデータから傾向を見出すことで、一定の法則を見つけることが可能です。
ビッグデータの処理が活用できれば、ホームページを開いたユーザーをセグメント分けする、どのようなコンテンツを用意すべきか判断するなど容易にできます。
そして人間にはできないシミュレーションも得意です。ビッグデータに基づき、来客数や売上額を予測することができます。
マーケティングの領域では、予測や分析が得意なAIは重宝するでしょう。
自動制御・アシスト
AIは機械類の自動制御やアシストも得意であるため、あらゆる作業を自動的にこなすことが可能です。
AIは米国のベンチャー企業SOMATICが開発した同名のオフィスビル専用ロボットです。AIに清掃方法を理解させれば、人間による補助なしで正確に清掃させることができるわけです。
床をブラッシングする、扉を開閉する、掃除用具を持ち替えるなど、実に器用。AIが進化する最中、今後はこれよりもさらに高度な自動制御が実現するでしょう。
医療アシスト
さらに正確な医療を提供するためのアシスト役としてAIは活躍しています。
例えば、内視鏡や胃カメラなど画像や映像が関係した医療では、AIによる画像認識が活用されています。結果的に、疾患の発見などが容易になりました。
また診療報酬計算(レセプト)では、AIを活用した診断を受けた場合には個別の点数が加算されています。したがってすでにAIは医療の現場で一定の地位を得ていると言えるでしょう。
今後は、医師に代わって治療法を考案したり、処方箋を考えたりすることが期待されています。
ただし医療の現場では、AIを活用して医療過誤に至った場合のリスクが大きいため、導入に関しては慎重な姿勢が取られています。医療面での進化は、やや遅くなるかもしれません。
その他
AIは、上記以外にも以下を得意としています。
- コンテンツ生成/ブログ記事やショートムービーを生成する
- テーブルゲームの高度なプレイ/トッププロ以上に高度な打ち手となる
- 自動応答/チャットボットや電話窓口となり、顧客対応を実施する
- 掃除/物の場所や時間帯などを把握して、掃き掃除などをおこなうetc.
このようにAIは、できることを少しずつ増やしています。今後はビジネスのみならず、日常生活でもAIに助けられるシーンが増えてくるでしょう。
すでに掃除では、AIが活躍していますね。今後は炊事や洗濯なども、さらに楽になるかもしれません。
AIができない・不得意なこと
AIにできることはたくさんあります。一方で、以下の項目は不得意とします。
- 空気を読む・配慮するなどのコミュニケーション
- アーティスティックかつ正確な出力
- サービスのパーソナライズ
全体的に機械的なことは得意ですが、人間的なことは不得手です。それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
空気を読む・配慮するなどのコミュニケーション
もっとも不得意なのは、空気を読む、配慮する、行間を読むなど電子的に表現できないコミュニケーションです。
私たちが簡単にやっている「今は静かにしておいたほうがよいな」「さっきの発言はこういう意味で、こういう気持ちだったんだな」といった微妙な判断や共感をする能力は、まだ再現できていません。
現状AIが取れるコミュニケーションは、テキストや音声による一問一答や、AIロボットにより簡単なやり取りに限定されます。
とはいえ、人間的なコミュニケーションを再現するのは技術的に簡単なことではありません。
AIと気持ちが通じ合うようになるまで、まだ時間がかかるでしょう。
アーティスティックかつ正確な出力
またアーティスティックかつ正確な出力も得意ではありません。先ほどのとおり、AIは画像やイラストを簡単に生成する能力には長けています(下図参照)。
しかしアーティスティックな出力は不得意です。
たとえば漫画やアニメのように、メッセージ性のあるアウトプットはできません。またその出力の正確性に関しても限界があります。
さらにいえば美術もしくは芸術的に価値の高い、たとえばバンクシーやピカソのようなアウトプットもできません。
それらは人間がやっているから価値が生まれる、という性質上、AIがこれまでの著名なアーティストと同水準のレベルまで到達することはないかもしれません。
ただし、AIで生成した画像を使って漫画を制作する人も現れています。以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
サービスのパーソナライズ
またサービスをパーソナライズ、つまり一人ひとりに合ったものに組み替えるのも得意ではありません。
たとえばPerplexity AIというツールでは、質問を入力するだけですばやく情報とそのソースのアウトプットは可能です。
Perplexity AIは常に最新の情報を取得できるため、信ぴょう性もあります。極端な話、最新情報をそのまま自社コンテンツの素体とすることもできるでしょう。
しかしある人が好みそうなデータを参照する、特定分野に関してのリサーチを強化するといったパーソナライズは実行できません。
つまり使い続けていても、ユーザビリティが特別に向上することはないでしょう。
パーソナライズが苦手な弱点はAI全体に共通して見られるもので、どう解消するかがひとつのポイントとされています。
Perplexity AIについては以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
AIの活用事例
できることが増え高度化したAIは、すでにあらゆる場面で活用されています。今回は特に注目を集めた、社会的意義のある3つの事例を解説します。
- テーブルゲーム
- 自動車・運転
- 医療
順番に解説します。
【テーブルゲーム】アルファ碁/AIがプロを圧倒
テーブルゲームの世界では、早い時期からAIが活躍しています。
2016年にAIを搭載した囲碁ソフトのアルファ碁が、当時世界最高の棋士だったイ・セドルと対戦。7番勝負で4勝1敗と圧倒し、囲碁界に衝撃を与えました。
近年中国が開発した「絶芸」は、トッププロにハンディキャップを与えた上で、毎回のように勝利しています。
もちろんただ人間を負かすだけでなく、よりよい打ち筋を考案するうえでも、AIは役立てられるようになりました。
一方で、アマチュアの棋士があえて悪い手を撃ち続ける必勝法を考案するなどしています。
その他チェスや将棋でも、トップクラスのプレイヤーがAIに敗北しています。
【自動車・運転】テスラ|実用レベルまで進化した自動運転
かねてから期待される自動運転はいよいよ実用的なステップに入りました。
テスラによって、AIを活用した自動運転技術の開発が進められ、すでにリリースされています。
上記の動画のように、周囲の状況を自動的に把握し、歩行者や対向車を避ける、信号を認識するなどして目的地に到達することが可能です。
まだ一般的には普及していませんが、さらに進化する余地があるなら近い将来、自動運転が当たり前になるかもしれません。
【医療】富士フィルムなど|AI技術で膵臓がんを発見
医療面でもAIは幅広く活用され、人命の救助に活用されています。
富士フィルムや神戸大学は、AI技術を活用した医療機器により、もっとも発見が困難とされる膵臓がんを的確に見つける技術を確立しています。
AIに膵臓がんのCTスキャン画像などをインプットし、同様の兆候が見られた場合、その疑いを知らせる仕組みです。この仕組みにより、全体の9割ほどの膵臓がんを発見できるようになりました。
膵臓がんは発見が困難であり、進行した場合の予後も絶望的だとされています。そのなかで、AIによる膵臓がん発見の技術が確立されたことには大きな意味があるでしょう。
AIに関するQ&A
本記事ではAIができること、できないことに関して解説しました。ここではよくある質問に回答します。
- AIは人間の仕事を奪うのか
- 人間にしかできないこととは
- AIを活用するメリットは
- シンギュラリティ(技術特異点)とは
- AIに人間の仕事は奪われますか?
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一部の仕事はAIに代替されていくでしょう。たとえば以下は、AIに奪われてしまうといわれています。
- 通関士
- ライター
- 警備員
- レジ担当者
- プログラマー
- 運転手
- コールセンターのオペレーター
- 配送業者
クリエイティブやコミュニケーションが関係しない仕事は、AIに代替されるかもしれません。
一方で起業家の成田修造は「AIに奪える仕事などほとんどない」と主張しています。
ただし歴史を鑑みれば、発明された機械が人々の仕事を奪っていった事例がいくつもあります。そう考えれば「仕事が奪われることはない」と決めつけるのはリスクがあるかもしれません。
AIに仕事が奪われる?理由や無くなる仕事、AI時代を生き抜く対策などを徹底解説 | meta land この記事では、AIについて詳しく解説します。AI時代を生き抜くために、ぜひ最後までご覧ください。 - AIができず人間にしかできないことは?
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現時点では、高度なコミュニケーションやクリエイティブな活動は、人間にしかできません。たとえば精神疾患を抱えた人の話を聞く、感動的な漫画を描くことは、まだAIにはできません。
AIが精神的な問題を抱えている人にできることは、文面によるアドバイスを送る程度です。
クリエイティブに関しては、イラストなどを出力できますが、例えばプロの作家のように、涙を誘うようなストーリーテリングができるわけではありません。
とはいえ、NovelAIのように、物語を作るAIツールなども登場しています。
こういったツールが成長を続ければ、いつしかプロの作家と比較して遜色ないストーリーを考案できるようになるかもしれません。
Novel AI(ノベルエーアイ)とは?特徴や使い方を徹底解説 出典:Novel AI 近年では、AIツールを使ってコンテンツを生成するケースが増えてきました。そのようなツールのひとつに、Novel AI(ノベルエーアイ)があります。 主に… - AIを活用するメリットは何ですか?
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AIを活用するメリットの一例として以下が挙げられます。
- 自然言語でアウトプットを得られる
- 画像やイラスト、動画など、あらゆる成果物を得られる
- 人間ではできない処理やシミュレーションを実施できる
- ミスやアクシデントを減らせる
- 自動化することで生産性を高められる
- 省人化して人件費を下げられるetc.
AIを活用するメリットは多岐に渡りますが、その業界や業種特有の利点もあります。
自社の場合、AIから何が得られるか、個別で考えるのが大切です。
- シンギュラリティ(技術特異点)とは?
-
シンギュラリティとは、人間の脳と同水準のAIが誕生する瞬間を示します。
2024年現在、AIは相当進化しているものの多くの苦手を抱えています。
l頻繁に間違いをアウトプットする、クリエイティブな活動は不得手であるなどの弱点があり、人間の脳と同水準とはとうてい評価できません。
しかしAIの進化により、私たちと大差ない能力を獲得した瞬間がシンギュラリティとなります。
またシンギュラリティに到達した場合、AIの進化は急激に加速するとされています。
そうなれば、従来では考えられなかった技術や知識が、驚くべき速度で確立されていくでしょう。
一方で、AIが人間を超越した結果、映画のマトリックスやターミネーターシリーズで描かれたような「機械がすべてを支配する時代」が到来するかもしれません。
まとめ
本記事ではAIにできること、できないことを解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。
- AIは、自然言語処理や画像生成、ビッグデータ処理などを得意とする
- 自動制御や医療アシストも得意としている
- 一方で空気を読む、配慮するなど、人間的なコミュニケーションは不得意
- サービスのパーソナライズなども得意ではない
- AIはすでにあらゆる業界で活用されている
- たとえばテーブルゲームではAIがプロ棋士を圧倒している
- 生活にかかわりあるところでは、テスラによる自動運転技術が台頭している
AIは、コミュニケーションやクリエイティブなどあいまいなことが苦手です。一方で自然言語処理や数値予測など、答えがある程度明確な分野に関しては、人間を圧倒的に超越しています。
今後はAIの得意不得意を理解し、得意分野でどのように活躍させるかマネジメントするのが重要になっていくといえるでしょう。