近年、急速に人気が高まっているVTuber(バーチャルユーチューバー)。
歌やゲーム実況、雑談などのコンテンツ配信で活躍しているのを見る機会が増えました。そのVTuberがメタバースにも進出して、活動範囲を広げています。
しかし、以下のような疑問を持っている方もいらっしゃるでしょう。
- VTuberってなに?
- VTuberは何で稼いでいるの?
- VTuberがメタバースを利用する理由は?
結論からいうと、メタバースを活用すれば、これまでYouTube中心だった活動の場をメタバースに広げられ、マネタイズのチャンスがさらに大きく広げられます。
この記事では、VTuberがメタバースに進出する意味や事例について詳しく紹介します。
今後の動向や可能性を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
メタバースとは、オンライン上でアバターを使ってコミュニケーションをとれる仮想空間のことです。
ゲームだけでなくビジネス、教育、建築など、さまざまな分野で活用されています。
メタバース内ではアバターやアイテムがNFT化され、仮想通貨を使って取引されるケースも。
Meta(旧Facebook)や、マイクロソフトなどの大手企業がメタバース事業に参入しており、世界的に注目を集めています。
メタバースについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
VTuberとは?メタバースのアバターとの違いを解説
VTuberの特徴について、以下の4点にまとめました。
- VTuber=アバターを使って配信活動するクリエイター
- VTuberの収入源|投げ銭とグッズ販売
- VTuberになる方法|オーディションや個人活動
- リアルとの融合|ARホログラム技術を使った新しいパフォーマンス
メタバースのアバターとの違いも詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
VTuber=アバターを使って配信活動するクリエイター
VTuberとは「バーチャル」と「YouTuber」を組み合わせた造語です。2Dや3Dのキャラクターモデルを用いて動画配信やライブ活動するエンターテイナーを指します。
VTtuberは、ほかにも以下のような役割も担っています。
- エンターテイナー:視聴者を楽しませるコンテンツを配信する
- インフルエンサー:商品やサービスを紹介する
- タレント:テレビやラジオなどのメディアに出演する
矢野経済研究所の調査によると、VTuberの市場規模は、右肩上がりに増えています。
2021年から2022年では前年比の167%となっており、2023年の市場規模は800億円(見込み)でした。
なお、2022年の売上内訳のうち、51%を占めていたのはグッズ販売です。
VTuber事務所「ホロライブプロダクション」社長のCEO谷郷元昭氏は、2022年ForbesJAPANで発表された「日本の起業家ランキング2023」で第3位。
VTuber市場は2030年までに1兆円に拡大するともいわれています。
最初のVTuberはキズナアイ
世界で最初のVTuberはキズナアイといわれています。VTuberの先駆け的な存在で、2016年に誕生しました。自称人工知能で音楽活動を中心に活躍。
YouTubeチャンネルの登録者数は、最も多いときで400万人以上です。総視聴回数も4.5億回以上を記録しています。
テレビ番組への出演、アニメ主題歌を担当するなど大活躍が続いたにも関わらず、2022年の「Kizuna AI The Last Live “hello, world 2022”」を最後に無期限の活動休止となりました。
バ美肉(ばびにく)とは、バーチャルの世界で美少女の姿を手に入れたことを指します。
ネット上で美少女のアバターを手に入れる「バーチャル美少女受肉」が略されて「バ美肉」となりました。
中身はおじさんのことも多く、理想の女性を自分の手で作り上げ「かわいい」といってもらうことで自己肯定感が満たされるとのことです。
現実世界での容姿に悩む人でも、理想の自分になりきって活動できます。
VTuberの収入源|投げ銭とグッズ販売
矢野経済研究所の調査によると、VTuberの収入源の内訳は、グッズ販売(51%)投げ銭(26%)BtoB(15%)イベント(7.7%)となっています。
売上の半分を占めるグッズ販売では、缶バッヂ・ブロマイド・アクリルスタンドなどファンに推し活として購入してもらいます。
大人気YouTuberにじさんじも、シーズンごとにグッズ販売を企画。6月はジューンブライドをテーマにオリジナル練り香水やシチュエーションボイスコンテンツなどを販売中です。
BtoBの収益は、企業や自治体とのタイアップなどです。多くのVTuberタレントを抱えるホロライブは、東京都と提携し、3名のVTuberが観光大使に就任しています。
人気VTuberになれば、広告塔としての活躍も期待できるでしょう。
VTuber収入ランキング
2024年6月時点でのVTtuber年収ランキングは、以下のとおりです。ちなみに、1位ホロライブ(8,104万円)、2位あおぎり高校(6,767万円)は企業や団体なので除いています。
順位 | チャンネル名 | 年収(万円) | 登録者数(万人) |
---|---|---|---|
1 | ビートまりお | 6,500 | 35 |
2 | しぐれうい | 4,047 | 186 |
3 | Miko Ch.さくらみこ | 3,849 | 206 |
4 | Kuzuha Channel | 3,831 | 174 |
5 | 伊東ライフ | 3,753 | 46 |
トップのビートまりおの6,500万円から35位のリゼ・ヘルエスタ約1,000万円まで、高額収入者がたくさん輩出されています。
ただ、大きく稼いでいるのは上位数%のようです。
VTuberになる方法|オーディションや個人活動
VTuberになる方法は、大きく分けて2つです。
- オーディションを受けてVTuber事務所に所属する
- 個人でキャラクターを作り、機材をそろえ動画を投稿する
VTuberのオーディションは、大手の事務所であれば基本的に随時受け付けています。基本的に、18歳以上であれば誰でも応募可能です。
最近では、海外配信のニーズも高まっているため、英語などの外国語スキルがある人も求められており、ハードルは上がっています。
一方、個人で発信するには、費用と手間がかかりますが、誰でも始められ年齢や居住国の制限がありません。得た収入はすべて自分のものとなり、頑張りがダイレクトに跳ね返ってきます。
しかし、組織のバックアップがないため、すべてを一人でこなす必要があるでしょう。
オーディションを受けてVTuberになるのがタレントだとしたら、個人でVTuberになるのは個人事業主といえます。
簡単にVTuberになれるアプリ
アプリを利用すれば、すぐにバーチャル配信者になれます。代表的なアプリは以下のとおりです。
YouTubeで活躍するのがVTuberという定義なので、正確には「2Dもしくは3Dライバー」です。
手軽に始められるのがメリットですが、配信プラットフォームがアプリ内に限定されてしまいます。
リアルとの融合|ARホログラム技術を使った新しいパフォーマンス
スマートフォンやPCの中だけで活躍しているはずのVTuberが、今やリアルの会場でもコンサートを開くようになっています。
AR(拡張現実)ホログラム技術により、あたかもVTuberが実在するかのようなライブイベントを実際のコンサートホールで開催できるようになったためです。
現実世界にデジタル情報を付加する技術。
楽曲『ビビデバ』が5,000万回再生を突破したVTuber星街すいせいは、ホログラムで野外コンサートも実現させています。
VAPOLLO JAPAN株式会社は、ホログラムライブ専用シアターを池袋に新設し、上海会場とつないで複数の都市で同時ライブを実現させました。
今後は、VTuberによるコンサート会場での全世界同時ライブが可能となるでしょう。
VTuberがメタバースで活動するメリット3つ
リアルの場でも活躍を広げるVTuberが、さらにメタバースで活動するメリットを以下の3つにまとめました。
- ファンとの交流・一体感のある体験
- 市場規模の拡大による新規ユーザーの獲得
- マネタイズの機会獲得
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.ファンとの交流・一体感のある体験
メタバースは、VTuberとファンがよりリアルな交流を可能にし、従来の配信では実現できなかった「一体感」を生み出せます。
メタバース空間であれば、ファンもアバターとして同じ空間に存在でき、VTuberとの交流も可能です。
コメントやスーパーチャットだけでなく、ジェスチャーや表情、ダンスなどを通して、より豊かに自己表現できるでしょう。
またメタバースでは、ライブ以外にも、トーク会やファンミーティングなど、多彩なイベントを開催できます。
ファン同士が交流できる場を提供することで、推しVTuberへの愛着や帰属意識を高める効果も期待できそうです。
具体的な例として、株式会社バーチャルキャスト所属VTuberミライアカリは、メタバース空間で1対1のトークが楽しめるイベントを開催。
アバター同士が握手したりハグしたりすることで、まるで本物の握手会のような臨場感と一体感を演出できました。
2.市場規模の拡大による新規ユーザーの獲得
メタバース市場は、今後さらに拡大していくと予測されています。それに伴い、メタバース上で活動するユーザーも増加するでしょう。
さらにVTuberがメタバースに進出することで、これまでVTuberコンテンツに触れたことがなかった層から新規ユーザーを獲得できる可能性が高まります。
新たなファンを獲得することで、収益化の機会も広がり、VTuber活動の可能性を大きく広げられるでしょう。
また、メタバースは国境を超えて交流できるため、世界中でファンを獲得するチャンスが増えます。
具体的な例として、2024年4月にTBSテレビが音楽性に優れたVTuberを集め、メタバース空間「VRChat」上でライブを開催。
ライブ当日はVRChatへの同時接続数約3,000人、YouTubeでも配信されました。YouTubeの再生回数は、2024年6月時点で3.6万回再生となっています。
テレビ、メタバース、YouTubeとメディアを横断して人気が広がっているのが伝わってきますね。
3.マネタイズの機会獲得
メタバースには、VTuberが収益化できる仕組みも用意されています。YouTubeだけだと、投げ銭が主な収入源となりますが、メタバースでは次のようなマネタイズが可能です。
- アバターアイテムの販売
- イベントのチケット販売
- メタバース広告への出演
メタバースだとファンも自身のアバターで参加します。そのアバターアイテムをイベントグッズとして販売。
ファンは推しVTuberとおそろいのアイテムで装飾したり、応援の気持ちを込めてグッズを購入したりできます。
さらにメタバース上であれば、握手会やトークイベントも可能です。より身近に推しVTuberを感じられ、ファンにとってはお金を払ってでも参加したい機会となるはずです。
さらにメタバース空間内に設置される広告へ出演することで、プラスの収益を得られます。もちろん、出演するには知名度や影響力が必要です。
VTuber×メタバース活用の事例4選
VTuberとメタバースをかけ合わせた活用事例を4つ紹介します。
- REALITY|VTuberに特化した新会社を設立
- サンリオV-fes|独自メタバース&VTuberや他企業とコラボ
- ホロアース|所属VTuberのライブをサポート
- cluster|Virtual Edo-Tokyoプロジェクトを開催
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.REALITY|VTuberに特化した新会社を設立
グリー株式会社は、全世界63の国と地域において1000万DLを突破したアプリREALITYを活用して、メタバース事業に参入しました。
新会社XR cloudでは、多種多様なイベントに対応できるメタバースプラットフォームを提供。大企業と提携してさまざまなイベントを展開しています。
そのなかで新会社RIALITY Stusiosは、VTuberのプロデュース事業も手掛けており、プラットフォーム提供とタレントの育成の両方からビジネスに取り組んでいます。
2.サンリオV-fes|独自メタバース&VTuberや他企業とコラボ
VRChatにサンリオは特設ワールド「バーチャルサンリオピューロランド」を開設。2024年2月3月に世界最大級のメタバースイベントを開催しました。
イベントでは、ロート製薬のVTuber根羽清ココロがシナモロールとライブパフォーマンスを展開しています。
またファッションブランド「.st」とも特設ショップでコラボしており、メタバース×サンリオ×VTuberと、新たなビジネスを生み出しています。
シナモロールとのコラボイベントが開催されました。
3.ホロアース|所属VTuberのライブをサポート
カバー株式会社が開発中のメタバースプロジェクト「ホロアース」。
女性VTuberグループ「ホロライブ」に所属するタレントとそのファンが、メタバース空間でさまざまな体験を一緒に楽しめます。
ホロアースでメインとなる遊び方は、VTuberやユーザーとの共同サバイバルです。仮想世界ホロアースにて、狩猟やアイテム集めを楽しめます。
また、ホロライブ所属のVTuberのライブにも参加可能です。デバイスがあれば、3Dで視聴でき、ライブ会場にいるような臨場感も味わえます。
プロトライブとしてAZKi と Mori CalliopeのライブがYouTubeと同時中継されました。
ホロアース内でライブに参加することで、よりアーティストとライブの熱狂を共有できるでしょう。
4.cluster|Virtual Edo-Tokyoプロジェクトを開催
国内最大級のメタバースプラットフォームcluster(クラスター)を運営するクラスター株式会社は、東京都に協力し「Virtual Edo-Tokyoプロジェクト」のワールド制作と運営に協力しました。
ワールドでは、東京都のルーツ・江戸の歴史や文化、産業、多彩な魅力など、7つのエリアで楽しめます。
イベントでは、芸能人やVTuberがコラボ。VTuber・朝ノ瑠璃とMaiRによる音楽ライブやクイズ番組が開催されました。
clusterでは、最大500名まで収容でき、マルチ言語対応で世界へ配信可能、YouTubeとの同時配信OK、投げ銭機能で収益化が簡単など、個人のVTuberにとってマネタイズできる環境が整っています。
メタバースのVTuberに関するよくある質問
メタバースのVTuberに関する、よくある質問についてまとめました。
- VTuberはどうやって稼いでいるの?
- VTuberの平均月収はいくらですか?
- VTuberとメタバースの関係は?
- メタバースが注目される理由は何ですか?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
- VTuberはどうやって稼いでいるの?
-
VTuberの収益源は主に以下の5つです。
- スーパーチャット・投げ銭
- 広告収入
- グッズ販売
- スポンサーシップ
- イベント出演
人気が出るまでのおもな収入源は、ライブ中のスーパーチャットや投げ銭です。2024年6月17日時点の累計スパチャランキング1位は潤羽るしあの3億7700万円となっています。
次に、再生回数に応じた広告収入。一般的に1動画再生あたり0.05円〜0.7円が相場です。
もし1億回再生されたら、広告収入は500万円〜7,000万円となり、人気が出れば投稿するだけで収入につながります。
しかし、実際のところVTuberの収入の半数を占めているのがグッズ販売です。
缶バッチ、ブロマイド、アクリルスタンド、ステーショナリーなど、シーズンやイベントごとにオリジナルグッズを企画販売します。
有名になれば、CM出演や〇〇大使、〇〇アンバサダーなど、スポンサーシップやイベント出演による収益も期待できるでしょう。
- VTuberの平均月収はいくらですか?
-
今や2万人以上いるといわれるVTuberの中で、月20万円以上稼いでいるVTuberは上位3%といわれています。
副業としてVTuberをしている人も多いので、比較は非常に難しいでしょう。とはいえ上位10位以内であれば、数百万から数千万を稼ぐといわれています。
- VTuberとメタバースの関係は?
-
VTuberの活動の場は、今までYouTubeやツイキャスなど2Dでした。それが、活躍の場を3Dのメタバースにまで広げられています。メタバースに進出するメリットは以下のとおりです。
- ライブやイベントの開催
- 世界中のファンへの配信
- ファンとの直接交流
- オリジナルショップの開設
アプローチできる手段が増えることで、マネタイズのチャンネルも広がります。
- メタバースが注目される理由は何ですか?
-
メタバースが注目される理由には以下のものがあります。
- 時間や場所の制約を超えて世界中の人と交流できる
- 仮想空間で新しい経済圏を創出できる
- 没入感のある体験が可能である
VTuberの新しい活動の場として、メタバースは非常に相性がよいため、チャンネルのひとつとして注目されています。
まとめ
本記事では、メタバースに進出するVTuberについて解説しました。
最後に重要なポイントをおさらいしておきましょう。
- YouTubeを中心に活動していたVTuberがメタバースに進出
- メタバースを利用することで収益のチャンスが拡大
- メタバース上なら全世界へライブ配信が可能
- 自治体や企業とのコラボも増加
数年前は1,000人程度だったVTuberも、今や2万人以上存在します。タレントとして芸能活動を展開しており、VTuber専門の芸能事務所も増えています。
そんなVTuberの活動の場としてメタバースは最適です。
投げ銭や広告収入だけのYouTubeとは違い、イベント開催やチケット販売、グッズ販売など収入の幅が大きく広がります。
また、メタバースの臨場感あふれるライブ映像は、今までの2Dの世界とはまったく違う体験となるでしょう。
推しVTuberがメタバースに進出したときは、ぜひメタバース内でその迫力や臨場感を楽しんでください。