出典:gree
グリーは2011年にアメリカのOpenFeintを子会社化したのち、中国や韓国への進出も果たしたゲームに重きを置くインターネット企業です。
2018年にメタバースの1種REALITY(リアリティ)の提供を開始。REALITYはオリジナルアバターで、ライブ配信からゲームまで楽しめるコミュニケーションプラットフォームです。
グリーはメタバース関連の銘柄として注目されたため、興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか
- REALITYってどんなサービス?
- グリーってどんな会社?
- 投資対象としての将来性は?
本記事では、このような疑問にわかりやすく回答します。
今さら他人に聞きにくいグリーのサービスの基本がさくっと理解できますよ。
メタバースとは、オンライン上でアバターを使ってコミュニケーションをとれる仮想空間のことです。
ゲームだけでなくビジネス、教育、建築など、さまざまな分野で活用されています。
メタバース内ではアバターやアイテムがNFT化され、仮想通貨を使って取引されるケースも。
Meta(旧Facebook)や、マイクロソフトなどの大手企業がメタバース事業に参入しており、世界的に注目を集めています。
メタバースについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
グリーが提供するメタバース事業とは?4社体制で多角化を図る
グリー株式会社は2023年3月1日に、メタバース事業を強化するために組織再編をおこないました。同事業に特化しているのは以下の4社です。
- REALITY株式会社:スマートフォン向けメタバースREALITYの運営
- REALITY Studios株式会社:VTuber事務所の運営
- REALITY XR cloud株式会社:法人向けメタバース事業
- BLRD PTE. LTD.:次世代の分散型インターネットBLRDの開発・運営
グリーではこれらの子会社を通じて、今後メタバース事業を多角化・グローバル化していく方針です。
1.REALITY | スマートフォン向けメタバース
REALITYは、オリジナルアバターを作成しライブ配信やゲームを楽しめるプラットフォームです。
スマートフォン向けに、2018年8月からサービスの提供を開始しました。
REALITYの特徴は、以下のとおりです。
- 自分だけのオリジナルアバターを作成
- ゲームやライブ配信でコミュニケーション
- ギフトで収益化も可能
詳しく見ていきましょう。
自分だけのオリジナルアバターを作成
REALITYでは、自分だけのオリジナルアバターを作成し、ゲームやライブ、イベントなどのコンテンツを楽しめます。
3D仮想空間である「ワールド」機能を利用し、アバターの姿で世界中のユーザーと交流可能です。
ユーザー同士でグループを作成して、プライベートなコミュニケーションも楽しめます。
ゲームやライブ配信でコミュニケーション
REALITYでは、ゲームやライブ配信を通したユーザー同士でのコミュニケーションが可能。ユーザー同士で協力すれば、ゲームも盛り上がるでしょう。
ライブ配信では、ダンスや歌、演奏などのオリジナルパフォーマンスを世界中のユーザーに披露できます。
ライブ配信の条件として「13歳以上であること」と規約で決められているので注意しましょう。
LIVEポイントで収益化も可能
REALITYではLIVEポイントをためて収益化できます。
ライブ配信中の「視聴数」「コメント数」「視聴者からのギフト」の結果により、LIVEポイントがためられます。
LIVEポイントは1ポイントを1円で換金可能。ライブが盛り上がれば稼げる仕組みです。
収益化するには、以下のいずれかのSNSとの連携が必要です。
- LINE
- Apple
REALITY XR cloudが実施したユーザーアンケートでは、メタバースユーザーの53.8%がREALITYを毎日利用、38.8%が1年以上の利用と回答。
REALITYのログイン時間は平均で1時間以上、中には毎日10時間アプリを利用し続ける人もいます。
メタバースプラットフォームでのシェアが高くヘビーユーザーが多いことがわかります。
2022年10月には世界中で1,000万ダウンロードを達成し、グローバルなアプリへと成長しています。
2.REALITY Studios | VTuber事務所の運営
REALITY Studiosは、2022年10月に設立されたグリー株式会社の100%子会社です。主にVTuber事務所の運営をおこなっています。
REALITY Studiosに所属するVTuberが出演する、実際のメタバースライブの様子はこちら。
2023年6月現在、次の2つのVTuber事務所を運営し、VTuberの育成やマネジメントをおこなっています。
FIRST STAGE PRODUCTION
FIRST STAGE PRODUCTIONは、魅力的な個性と才能を持つタレントが集まるVTuber事務所です。
2022年8月におこなわれたタレントオーディションでは7名のタレントが選ばれました。
3月3日から、TwitterアカウントおよびYouTubeチャンネルを公開し活動を開始しています。
すぺしゃりて
こちらはゲーム配信を活動の主軸とする女性VTuber事務所です。
2023年5月1日より日本国内、海外同時に第1期生オーディションを開催。2023年6月8日時点で、書類選考通過者までが決定しています。
この後オンラインで2次選考、都内オフィスでの3次選考を経て合格者が決まります。
配信するゲームは、eSports、音楽ゲーム、RPG、麻雀まで何でもOK。ゲームが大好きなタレントが活躍していく予定です。
2023年1月には、Youtuverラファエル氏が顧問を務める事務所「ONECARAT」とも提携しています。
3.REALITY XR cloud | 法人向けバーチャルイベントを実現
REALITY XR cloud株式会社は、法人向けの3DCGやXRテクノロジーを活用したプラットフォームREALITY Worldsを展開。
同社は、法人のユーザー数で日本1位を誇るメタバースプラットフォームです。
REALITY Worldsは、企業の展示会やセミナー、研修など、さまざまなイベントに活用できます。
具体的な事例を2つ紹介します。
- ビームスディレクターズバンク プレゼンツ おふろパラダイス ととのい別天地
- METAVERSE EXPO in REALITY
ビームスディレクターズバンク プレゼンツ おふろパラダイス ととのい別天地
「ビームスディレクターズバンク プレゼンツ おふろパラダイス ととのい別天地」では、来場者数が340万人を超えました。
地域別では日本25%、アジア太平洋35%、北米21%、その他19%と世界中のユーザーが訪れ、世代別でもZ世代を中心に幅広いユーザーが楽しんでいます。
METAVERSE EXPO in REALITY
「METAVERSE EXPO in REALITY」では、REALITY上でクリエイターと企業がタッグを組み展示会を開催できます。
このイベントでは大きなコストをかけることなくメタバース内にブースを構え集客することが可能。想定集客数は、200万人を見込んでいます。
メタバース上に広告を掲載することで、REALITYの主なユーザー層である若い世代への訴求ができると期待されています。
4.BLRD | Web3.0(次世代の分散型インターネット)事業
BLRD PTE. LTD.は、2022年7月1日にグリーの100%子会社として設立されたシンガポールの企業。次世代の分散型インターネットBLRDの開発・運営をおこなっています。
Web3.0事業を推進するため、Avalancheブロックチェーンを提供するAva Labsと日系企業初の戦略的パートナーシップを締結しました。
- Avalancheとは?
-
分散型アプリ(DApps)の開発に特化したブロックチェーンプラットフォーム。
高速な処理速度と取引コストの低さが特徴。
ブロックチェーン技術を活用して新しいインターネットの構築を目指しています。
主な取り組みは以下のとおり。
- ブロックチェーンのバリデータノードの運営
- ブロックチェーンゲームの開発
- バリデータノードとは?
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ブロックチェーンに記録されるデータの正しさを検証するコンピューター端末。
ブロックチェーン技術を活用すれば、ユーザーが自分のデータを自由に管理できます。
プライバシーの侵害やデータの改ざんなどを防げるため、メタバースの安全性を高めることが可能です。
BLRDはまだ開発途上ですが、将来的にはユーザーにとってより安全でより自由度の高いインターネットの実現への貢献が期待されています。
グリーのメタバース事業の沿革と将来性
グリーはメタバース事業は、多くの企業や投資家が注目しています。
事業の沿革と将来性は以下のとおりです。
- メタバース事業に参入し100億円規模の事業投資
- REALITYの機能を法人向けに提供
- グローバルなメタバースへ成長
- REALITYのダウンロード数が1,000万を突破
- Web3.0事業の推進
- 今後はブラウザメタバース領域へ拡大
詳しく見てみましょう。
1.メタバース事業に参入し100億円規模の事業投資
グリーはメタバース事業に参入し、100億円規模の事業投資計画を発表しました(2021年8月)
この投資は、以下の事業に活用される予定です。
- メタバースプラットフォームの開発
- コンテンツの制作
- 人材の育成
グリーはメタバース事業を、ゲーム、エンターテインメント、教育、ビジネスなど、幅広い分野に展開しています。
2.REALITYの機能を法人向けに提供
グリーは2022年6月15日に、メタバースプラットフォームREALITY機能を法人向けに提供するREALITY Worldを開始しました。
REALITY WorldではREALITYユーザーに対し、以下のような訴求が可能です。
- プロモーション
- 展示会
- 交流会等のイベント制作
- バーチャル支店
- デジタルツイン都市等の空間開発
- バーチャル都市を利用したメタバース広告
REALITYは従来のオフラインの研修やイベント、マーケティング活動では実現できなかった新しい体験や価値の提供を目指しています。
3.グローバルなメタバースへ成長
REALITYはリリース4年で63の国と地域で展開し、2022年の時点で8割が海外ユーザーです。
グリー株式会社の執行役員/経営企画部長の杉山綱祐さんは、次のように語っています。
2018年にスタートした時点では、正直、ここまで海外で受け入れられるとは思っていませんでした。なぜここまで受け入れられたか。考察ですが、スマホ1台で「アバター作成」「コミュニケーション」「ライブ配信」ができるサービスが他にほとんどなく、早期に仕掛けることでフィットしたのではないかと考えています。アバターのテイストにしても、全く違和感なく海外で受け入れられていて。Netflixをはじめ、今や全世界に日本発のアニメも配信されており、受け入れられる土壌も出来ていたのかもしれません。
引用:ambi
まとめるとREALITYが海外で成功した訳は以下の3つだと考えられます。
- スマホ1台で「アバター作成」「コミュニケーション」「ライブ配信」をできるサービスが他にほとんどなかった
- 早期に仕掛けたことで海外ユーザーのニーズにフィットした
- 日本アニメが世界中で配信されていたため受け入れられやすかった
今後も世界中のユーザーにメタバース体験を提供し、新しいコミュニケーションやエンターテイメントの形の創造を目指しています。
4.REALITYのダウンロード数が1,000万を突破
REALITYはリリースからわずか1年で1,000万ダウンロードを突破し、国内最大級のメタバースプラットフォームとなりました。
そのユーザーの多さから、企業にとってはよい広告の場となり、今後もコンテンツが磨かれることが予想されます。
強力なマーケティング力とREALITYの成長力を考えると、今後さらに飛躍しそうです。
5.Web3.0事業の推進
2022年7月1日、グリーはブロックチェーンゲームの開発および提供を目的にBLRD PTE. LTD.を設立しました。
同社は、バリデータノード運用やブロックチェーンゲーム開発を行っています。
Web3事業を推進するため、エンジニアやプロジェクトマネージャーなどの採用も強化中とのこと。
2022年10月には、BLRDを通じてAvalancheブロックチェーンを提供するAva Labsと提携。この合意は日系企業初となり注目されました。
Ava Labsからは次のような包括的なサポートが期待できます。
- ブロックチェーンゲーム開発に伴う技術
- マーケティング
- 事業開発
この提携により、今後Web3.0領域の事業はより発展していくでしょう。
6.今後はブラウザメタバース領域へ拡大
グリーは2023年5月に、カカオのグループ会社でメタバース事業を展開するCOLORVERSE Japanと戦略的提携を締結しました。
COLORVERSE Japanは2022年に設立された企業です。ゲームストリーミングサービス業界トップのクオリティを、ブラウザで再現できる技術を保有しています。
この提携により、ブラウザ領域へのメタバース関連の課題や問題を解決できるようになりました。
Webとメタバース領域において、下記のような機能が利用可能です。
- Webのプラットフォームでどのコンテンツでもリンク可能
- Webコンテンツからメタバース空間への入室
- 体験を通じた購買誘導
グリーとCOLORVERSE Japanの提携は、ブラウザメタバース市場の成長を加速させる大きな力となるでしょう。
メタバース銘柄としてのグリーの将来性は?
株式会社グリーはゲームや広告サービスを基盤とする上場企業です。
投資家からは、メタバース銘柄としてグリーの将来性はどのように評価されているのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
- グリーはメタバース銘柄として注目されている
- グリー株価は急騰から急落へ
- 世界進出により今後の株価上昇が期待されている
1.グリーはメタバース銘柄として注目されている
グリー<3632>は、メタバース市場の本命銘柄として投資家の注目を集めています。
株式市場では、メタバースやNFTといったバーチャル経済圏に足を踏み込む企業への注目度が高まっています。
グリー以外でメタバースに関連する主な銘柄は以下のとおり。
- gumi<3903>
- 東京通信 <7359>
- バンク・オブ・イノベーション <4393>
- 円谷フィールズホールディングス <2767>
- Birdman <7063>
グリーは積極的にメタバース領域に進出しています。具体的には以下のとおりです。
- バーチャルライブ配信アプリREALITYの展開
- メタバース制作プラットフォームの開発
- 100億円規模の事業投資を予定
- グローバルなユーザー獲得
グリーの挑戦的な姿勢に投資家からの期待が高まっています。
2.グリー株価は急騰から急落へ
グリーの株価は、2022年2月に配信したスマホゲーム「ヘブンバーンズレッド」の好調を見込んで急騰。4月18日には年初来高値(1,285円)をつけました。
しかし、同年4月21日に5日移動平均を下回ったため、高値警戒感から利益確定売りが加速。売りが売りを呼び急落しています。
グリーが2023年2月に出資しているカバー株式会社が新規上場したことが刺激となり、株価は急反発しましたが、大きく伸びることはなく横ばい傾向です。
3.世界進出により今後の株価上昇が期待されている
以下の図は過去1年間のグリーの株価推移です。
グリーはメタバース領域で業績が伸びているものの、先行投資により収支は均衡。2023年の株価は横ばいです。
しかし、グリーの将来性には投資家から高い期待感があります。また、ほかのゲームコンテンツ会社と比べると買いやすい株価水準ともいえるでしょう。
総務省の「令和四年版情報通信白書」によると、メタバースの世界市場は2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予測されています。
グリーはこの市場拡大の波に乗って、メタバース事業のグローバルな成長を目指しています。
また、グリー株価に関するTwitterの口コミでは以下のようなものがありました。
現金や預金など流動性の高い金融資産を多く保有していることが評価されているようです。
グリーのメタバースに関するQ&A
グリーのメタバースに関連するよくある質問についてまとめました。
- Avalancheとは?
- REALITYのWeb版はどこからダウンロードできますか?
- REALITYのアバターは変更できますか?
気になる項目をチェックしてみましょう。
- Avalancheとは?
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Avalanche(アバランチ)は、高速かつ安全で多様なブロックチェーンアプリケーションに対応可能な分散型プラットフォームです。
基軸通貨としてAVAXを採用しており、国内ではDMM Bitcoinなどで取引可能。独自の合意形成アルゴリズムを用いており低コストで取引可能です。
さらに、Avalancheはイーサリアムやビットコインとの相互運用性を有し、これらの既存のブロックチェーンとも連携できます。
新しいデジタルエコノミーを実現するプラットフォームとして、次のような可能性が期待されています。
- DeFi(分散型金融)の普及を支えるインフラ
- NFT(非代替性トークン)やゲーム
- REALITYのWeb版はどこからダウンロードできますか?
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RealityのWeb版は以下のサイトからダウンロードできます。
PCやスマホのWeb版では、公式配信、視聴、コメント、LIVEポイントの交換などが可能です。
- REALITYのアバターは変更できますか?
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以下の手順で変更できます。
- REALITYアプリを開き人型マークをタップ
- 自分のページの画像の右下にあるTシャツのマークをタップ
- アバターの着せ替えページで項目を選ぶ
- 保存する
まとめ
本記事では、グリーのメタバース事業についてくわしく解説しました。
最後に重要な点をおさらいしておきましょう。
- REALITYは、オリジナルアバターでゲームやライブの配信ができる
- LIVEポイントで収益化できる
- 法人向けのメタバースプラットフォームも提供している
- Web3.0事業にも注力している
- 投資家からはグリーの株価上昇が期待されている
グリーはメタバース市場拡大の波に乗り、Web3.0領域の事業でグローバルな拡大を目指しています。
今後の株価の動向も気になる注目のメタバース関連企業です。