近年、さまざまなメタバースプラットフォームがリリースされています。需要の高まりを感じ、メタバース開発に携わりたいと考える方もいるでしょう。
しかし、
- メタバース開発に必要な技術を知りたい
- どのような開発ツールがあるか知りたい
- メタバースを開発できるプラットフォームが知りたい
などの悩みをもつ方も多いのではないでしょうか。結論からいうと、メタバース開発にはさまざまな技術が必要です。
しかし近年、個人でも利用できるツールが数多くリリースされています。
そこで今回は、メタバース開発に必要な技術やツール、開発プラットフォームについて解説します。
メタバース開発で新しいコンテンツを生み出したい方はぜひ最後までご覧ください。
メタバースとは、オンライン上でアバターを使ってコミュニケーションをとれる仮想空間のことです。
ゲームだけでなくビジネス、教育、建築など、さまざまな分野で活用されています。
メタバース内ではアバターやアイテムがNFT化され、仮想通貨を使って取引されるケースも。
Meta(旧Facebook)や、マイクロソフトなどの大手企業がメタバース事業に参入しており、世界的に注目を集めています。
メタバースについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
メタバース開発に利用される6つの技術
メタバース開発にはさまざまな技術が存在します。
主に以下の6つが挙げられます。
- VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・MR(複合現実)
- 3Dモデリング|メタバースを構築する要素
- プログラミング言語|C#・C++・JavaScript
- 5G(第5世代移動通信システム)|データの高速通信に必要
- AI(人工知能)|3Dモデリングや翻訳システムに活用
- ハプティクス(触感)技術|没入感の向上
1.VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・MR(複合現実)
VR(仮想現実)・AR(拡張現実)は、メタバース開発に欠かせない技術です。
VRは主にユーザーが単独で利用する仮想空間。制作した3DモデルをVR制作プラットフォームに配置して、仮想空間を作り出します。
ARは、スマホのカメラなどを通して、現実世界に3Dモデルを投影する技術。現実世界と仮想現実が組み合わさった新たなコンテンツを制作できます。
MRは、現実に存在する都市などのデータを仮想空間に再現し、デジタルデータを組み合わせる技術。
現実世界と仮想現実を組み合わせ、相互にリアルタイムでデジタルコンテンツを楽しめます。
上記の技術を使った仮想空間で、ユーザー同士が互いにコミュニケーションが取れるようになればメタバースが完成します。
2.3Dモデリング|メタバースを構築する要素
3Dモデリング技術は、メタバースを構築する要素の開発に必要です。
メタバースに存在する建物やアイテム、キャラクターなどを、3Dモデリングツールを活用して制作します。
代表的なツールとして挙げられるのは、以下の3つです。
- 3ds Max
- Maya
- Blender
メタバースに配置するオブジェクトを1から制作したい方は、上記のツールの使い方を学ぶと良いでしょう。
また、インターネットの通信技術や関連技術が日々向上し、3Dモデリングが可能な技術者の需要が高まっています。
メタバースに関連する雇用が増加しているため、興味のある方は以下の記事も参考にしてください。
3.プログラミング言語|C#・C++・JavaScript
メタバース開発に使われるツールには、プログラミング言語が必要なものもあります。
メタバース開発に必要なプログラミング言語として、主に以下の3つが挙げられます。
- C#
- C++
- JavaScript
どのプログラミング言語を学ぶべきかは、使用するゲームエンジンやプラットフォームに応じて選ぶと良いでしょう。
C#|ゲームエンジンUnityで使用
C#は、Microsoftが開発したプログラミング言語。世界シェアNo.1を誇るゲームエンジンUnity(ユニティ)に使用されます。
プログラムの記述量が少なく扱いやすいため、ゲームやアプリ開発に利用されています。
C++|ゲームエンジンUnreal Engineに使用
C++は、OS開発などに使用されるC言語を拡張した言語。Unityに次いで世界的に人気のあるゲームエンジンUnreal Engine(アンリアルエンジン)に使用されています。
主にロボット制御やIoT製品に利用されますが、アプリ開発にも使用できます。
JavaScript|Webブラウザ構築するメタバース開発に使用
JavaScriptは、Webサイト制作などに使用される言語。近年、Webブラウザから利用するメタバースプラットフォームが増加しているため、メタバース開発にも使用されています。
4.AI(人工知能)|3Dモデリングや翻訳システムに活用
AI(人工知能)技術もメタバース開発に活用され、さまざまな企業が新たなツールを開発しています。
3Dゲーム制作会社EpicGamesは、AIを活用したアバター作成ソフトMetaHuman Creatorを開発。
人の表情の動きをカメラに写せば、リアルな3Dアニメーションを作成できます。
Meta(旧Facebook)は、AIを活用した多言語翻訳システムNLLB-200を導入。200の言語を高い品質で翻訳できます。
NLLB-200はメタバースにも活用される予定です。言語の壁を超えられれば、世界中の人々とコミュニケーションを取れるようになるでしょう。
5.ハプティクス(触感)技術|没入感の向上
ハプティクス(触感)技術も近年注目されています。専用デバイスを利用することで、仮想空間で実際に物に触る感覚を再現する技術です。
下記の動画では、映像として映し出された紙風船に手をかざし、実際にさわった感覚を体験している様子が記録されています。
仮想空間での体験がより現実世界に近づくため、近年さまざまな製品の開発が進められています。
実用化がすすめば、メタバース内のコミュニケーション体験の幅が広がるでしょう。
メタバース開発に必要なツール5選
主なツールとして以下の5つが挙げられます。
- Unity|世界シェアNo.1のゲームエンジン
- Unreal Engine|Epic Gamesが開発したゲームエンジン
- 3ds Max|3DCG作成ツール
- Maya|直感的に操作できる3Dモデリングツール
- Blender|無料で利用可能な3DCG作成ツール
1.Unity|世界シェアNo.1のゲームエンジン
Unity(ユニティ)は、Unity Technologiesが提供するゲームエンジン。世界シェアNo.1を誇り、世界中で利用されています。
- ゲームエンジンとは?
-
ゲーム制作に必要な要素が詰まった開発環境。
過去12か月の売上または資金調達が10万ドル(約1,500万円)以下の個人開発者であれば、無料で利用できます。
Unity公式YouTubeチャンネルで使い方を無料で学べるため、独学でも高品質な3Dゲームを作成できます。
Unityで作られたゲームを紹介している記事があるので、そちらも参考にしてください。
2.Unreal Engine|Epic Gamesが開発したゲームエンジン
Unreal Engine(アンリアル エンジン)は、ゲーム制作会社EpicGamesが提供するゲームエンジン。
高品質なグラフィック描画を得意としており、Unityと並び世界的な人気を誇ります。
映画マトリックスや、マーベルシリーズにも使用されていますよ。
無料で利用できますが、作成したゲームの売上が100万ドル(約1億5,000万円)を超えると、5%のロイヤリティ(手数料)を支払う必要があります。
使い方を日本語で解説しているYouTubeチャンネルも多数存在。興味のある方は初心者向けの動画を参考に学んでみましょう。
ゲームエンジンUnityとUnreal ENGINEを比較
メタバース開発に必要なゲームエンジンUnityとUnreal ENGINEを比較しました。
Unity | Unreal Engine | |
---|---|---|
無料利用 | 可能 | 可能 |
有料プランの価格 | 267,960円〜653,400円/年 | 100万ドル以上の収益が発生した場合5%のロイヤリティ |
プログラミング言語 | C# | C++ |
動作環境(PC) | Windows・macOS | Windows・macOS |
どちらのツールも個人であれば期間の制限なく無料利用が可能です。
参考にする作品がどちらのゲームエンジンを使用しているかを基準に選ぶのも良いでしょう。
3.3ds Max|3DCG作成ツール
3ds Maxは、Autodeskが提供する本格的な3Dモデリング・アニメーションを作成可能なソフトウェア。
建築からアニメーション作品まで、幅広いジャンルの3Dモデルを制作できます。
アニメ鬼滅の刃にも利用されていますよ。
ライセンス価格は以下の通り。
契約期間 | 料金 |
---|---|
1か月 | 36,300円 |
1年 | 286,000円 |
3年 | 858,000円 |
有料ソフトですが、30日間の無料体験期間が設けられています。まずは30日利用してみて、自分に合っているか確認するとよいでしょう。
また、学生や教員であれば、登録してから1年間は無料で利用できます。
2023年8月現在、Windowsにのみ対応しているため、Macユーザーは利用できません。
4.Maya|エンタメ関連のコンテンツ制作に特化したツール
Maya(マヤ)は、3ds Maxと同じAutodeskが提供する3Dモデリングツール。
3ds Maxが幅広いジャンルに対応しているのに対して、Mayaはエンターテインメント関連のコンテンツ制作に特化しています。
映画アベンジャーズ・エンドゲームにも使用されていますよ。
ライセンス価格は以下の通り。
契約期間 | 料金 |
---|---|
1か月 | 36,300円 |
1年 | 286,000円 |
3年 | 858,000円 |
3ds Maxと同様、30日間の無料体験期間が設けられています。まずは30日利用してみて、自分に合ったソフトであるか確認するとよいでしょう。
また、学生や教員であれば、登録してから1年間は無料で利用できます。
Windowsだけでなく、Macにも対応しているため、幅広いユーザーが利用できる点もメリットです。
5.Blender|無料で利用可能な3DCG作成ツール
Blender(ブレンダー)は、Blender Foundationが開発・提供する高性能な3DCG作成ツール。オープンソースのフリーウェアのため、無料で利用できます。
- オープンソースとは?
-
ソフトウェアを構築するソースコードを無料で公開すること。公開されているコードは改良や再配布が可能。
無料で利用できる期間に制限はなく、有料プランも存在しません。
有料ツールに劣らない機能性が特徴で、さまざまなクリエイターが個性あふれる作品を制作しています。
下記の動画はBlenderで制作された3Dアニメーションムービーです。
無料ツールで制作されたとは思えないクオリティです。
これから3Dモデリングを始める方は、まずBlenderから使い始めてはいかがでしょうか。
3つの3DCG作成ツールを比較
3DCG作成ツール3ds Max、Maya、Blenderの価格や動作環境を比較しました。
3ds Max | Maya | Blender | |
---|---|---|---|
特徴 | 3D建築からエンタメ作品まで幅広く制作可能 | エンタメ業界に特化した3Dアニメーションを制作可能 | 頻繁にアップデートされており最新技術が無料で利用可能 |
無料利用 | 可能(30日間) | 可能(30日間) | 可能 |
有料プランの価格 | 36,300円/年 | 36,300円/年 | 無し |
動作環境(PC) | Windows | Windows・macOS | Windows・macOS |
3ds MaxだけmacOSに対応していないため、Macユーザーの方は注意しましょう。
メタバースを開発できるプラットフォーム5選
メタバースを公開するには、開発の土台となるプラットフォームが必要です。
主なプラットフォームとして以下の5つが挙げられます。
- cluster|日本発のメタバース
- xambr|メタバース開発に必要な機能を取り揃えたシステム
- V-ketCloud|ブラウザで利用できるメタバースを開発可能
- Roblox|メタバースゲームを作成可能
- XR CLOUD|10万人の同時接続が可能
1.cluster|日本発のメタバース
cluster(クラスター)は日本発のメタバースプラットフォーム。プラットフォーム内にワールドと呼ばれるメタバースを制作できます。
ワールドに配置するオブジェクトも制作でき、アニメーションをつけることも可能。
制作したメタバースに他のユーザーを招き、交流もできます。
ワールドの作り方はcluster公式YouTubeチャンネルで公開されているので、興味のある方は参考にしてください。
clusterについては以下の記事で詳しく解説しています。
2.xambr|メタバース開発に必要な機能を取り揃えたシステム
xambr(クロスアンバー)は、株式会社ambrが提供する法人向けメタバース構築プラットフォーム。東京ゲームショウ2021オンラインに採用されました。
メタバース構築に必要な開発環境が揃っており、高品質なコンテンツを制作可能。amberがメタバースプラットフォームのコンセプト作成からサポートしてくれます。
xambrでは、構築するメタバースに応じて価格が設定されます。
興味のある方は以下のフォームから問い合わせてみましょう。
3.V-ketCloud|ブラウザで利用できるメタバースを開発可能
V-ketCloud(ヴイケットクラウド)は、株式会社HIKKYが提供するメタバース開発プラットフォーム。Webブラウザから手軽に利用可能なメタバースを構築できます。
アカウントを登録すれば無料で利用でき、個人でもさまざまなコンテンツを制作可能。
また、大規模なメタバースイベントや、自社プラットフォームの制作にも対応しています。
構築するメタバースに応じて価格は変動するため、興味のある方は以下のフォームから問い合わせてみましょう。
クリエイターの制作したメタバースが公開されているので、まずは登録してV-ketCloudを体験してみましょう。
V-ketCloudを提供するHIKKYについて詳しく解説している記事があるので、そちらも参考にしてください。
4.STYLY|VR・AR/MR作品をブラウザで制作可能
STYLYは、Webブラウザから利用可能なメタバース開発プラットフォーム。3Dアセットを組み合わせるだけで、簡単に仮想空間を制作できます。
制作した3Dモデルをアップロードできるほか、Unityにも対応。制作した作品はSTYLY GALLERYに公開でき、だれでも鑑賞できます。
また、日本の7つの都市データがインポートされており、3Dアセットと組み合わせることでAR/MR作品も作成可能。
都市データに組み込んだコンテンツは、現地でスマホカメラを通して鑑賞できます。
STYLYについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
5.XR CLOUD|10万人の同時接続が可能
XR CLOUD(XRクラウド)は、monoAI technology株式会社が提供するメタバース開発プラットフォーム。
10万人以上の同時接続が可能なため、大規模なイベント用メタバースの制作に向いています。
主に法人向けのメタバース開発を提供しているため、事前に問い合わせが必要です。以下のフォームから問い合わせましょう。
資料を請求すればサービス概要や料金体系をダウンロードできます。
XR CLOUDを使ったメタバースが体験できるので、まずは無料でアカウント登録してみましょう。
メタバース開発に関するQ&A
メタバース開発に関するよくある質問と回答を紹介します。
疑問をお持ちの方は参考にしてください。
- メタバース開発に必要な費用は?
- 個人でもメタバースは開発できる?
- メタバースの開発は難しい?
メタバース開発に必要な費用は?
メタバース開発に必要な費用は、規模によって異なります。個人で1から開発するのであれば無料ツールを使ってメタバースを作り出せます。
企業が自社の商品をアピールするために、メタバース開発を委託するのであれば、数十万円から数百万円の費用が必要です。
たとえば、企業向けのメタバース制作会社Nest Visualでは、下記のような料金が設定されています。
個人でもメタバースは開発できる?
近年、さまざまなメタバース開発環境がリリースされているため、個人でもメタバース開発は可能です。
たとえば、日本発のメタバースプラットフォームclusterでは、ユーザーは自由にメタバースを作成可能。
3Dモデリング技術や、プログラミング言語の知識がなくてもメタバースを制作できます。
また、本格的なメタバース開発をしたいのであれば、UnityやUnreal Engineなどのゲームエンジン(開発環境)の使い方を学ぶと良いでしょう。
世界中で使用される本格的なゲームエンジンでありながら、個人なら無料で利用可能です。
メタバースの開発は難しい?
初心者でも開発可能なメタバースプラットフォームを活用すれば、メタバース開発は難しくありません。
3Dモデリング技術やプログラミング言語を必要としない、clusterやV-ketCloudを活用すると良いでしょう。
しかし、本格的なメタバース開発には3Dモデリング技術や専用ツールが必要になるため、決して簡単ではありません。
本格的なメタバース開発に携わるのであれば、専門学校などに通って開発技術を数年間学ぶ必要があるでしょう。
まとめ
この記事では、メタバース開発に関する技術やツール、プラットフォームについて解説しました。
最後に重要な点をおさらいしておきましょう。
- メタバース開発には3DモデリングやVR・AR・MR技術が必要
- ゲームエンジンを使いこなすにはプログラミング言語の習得が必要
- メタバース開発に利用されるゲームエンジンはUnityとUnreal Engine
- 3DCGを作成できる主なツールは3ds Max、Maya、Blender
- プログラミング言語を使用せず手軽にメタバース開発ができるのはclusterとSTYLY
- 企業向けのメタバース開発ならxmaber、V-ketCloud、XR CLOUDがおすすめ
通信技術や関連技術の向上により、メタバース開発に関連する技術の需要が高まっています。
今のうちにメタバース開発の技術を学んでおけば、将来的に高収入を得られるかもしれません。
本記事を参考にして、この機会にぜひメタバース開発技術を学んでみましょう。