大手企業がメタバースに進出する機会も増えてきました。ソニーも例外ではありません。
しかし、
- ソニーのメタバース事業の中身は?
- ゲームや音楽との関連は?
- メタバースをビジネスにどう生かすの?
このように思っている方は多いのではないでしょうか?
結論から言うと、ソニーはメタバースに関連する8つのコンテンツを展開し、世界10億人とつながる構想を打ち出しています。
今回は、ソニーグループが注力する事業分野を詳しく解説。本記事を読めばソニーが関心を寄せるメタバース事業の大部分を理解できます。
今後、私たちの生活にも深くかかわる可能性が高いので、ぜひ最後までご覧ください。
メタバースとは、オンライン上でアバターを使ってコミュニケーションをとれる仮想空間のことです。
ゲームだけでなくビジネス、教育、建築など、さまざまな分野で活用されています。
メタバース内ではアバターやアイテムがNFT化され、仮想通貨を使って取引されるケースも。
Meta(旧Facebook)や、マイクロソフトなどの大手企業がメタバース事業に参入しており、世界的に注目を集めています。
メタバースについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
ソニーがメタバースで目指すのは3つの価値創出
ソニーはメタバース事業で多方面に展開しています。その根底にあるのがミッションとして掲げる「価値の創出」。
ソニーが提唱する3つの価値とは次のとおりです。
- 感動体験で人の心を豊かにする
- クリエイターの夢の実現を支える
- 世の中に安全・健康・安心を提供する
順にみていきましょう。
1.感動体験で人の心を豊かにする
ソニーは、リアルとバーチャルの融合で、新しい感動体験を生み出そうとしています。イメージセンサーやアプリケーションの開発によって、VTuberの細部の動きをデジタル上に再現。
下記の動画ではセンサーを利用して、コントローラーがなくてもアバターを動かせる機能が紹介されています。
技術開発での貢献に加え、プラットフォームや撮影機器の開発など多方面から感動体験の実現を目指しています。
2.クリエイターの夢の実現を支える
2022年の経営方針説明会で、ソニーCEO吉田は「クリエイターに選ばれるブランドでありたい」と発信しました。
従来のゲーム、音楽、映画、アニメなどのエンターテイメント事業とメタバースを融合させ、技術的にサポートしていく方針です。
PS4用ソフトウエアDreams Universeでは、ゲーム・キャラクター・音楽などのコンテンツを自由に作れるプラットフォームを提供。「だれでもクリエイターになれる」環境を実現させています。
また、クリエイターの夢を実現させるための撮影スタジオ・クリエーション技術・インターフェースデバイスなど、技術面の提供がクリエイター活動を支えています。
3.世の中に安全・健康・安心を提供する
医療×デジタルの領域でソリューションを提供するために、エムスリーと新会社サプリムを設立。人々が病の予防や治療をおこないつつ生活を楽しみ、心を豊かにするソリューションを提供しています。
また、ホンダとモビリティ分野において事業提携し、2025年のEV車発売のために共同出資会社を設立しました。
メタバースでも利用されているイメージセンサーなどの技術を、人々の生活を幸せにするために、積極的に開発・提供しています。
ソニーが生み出す8つのメタバースコンテンツ
ソニーの技術は、さまざまな分野に活用されていますが、代表的なメタバースコンテンツに下記の8つがあります。
- マンチェスターとバーチャルファンエンゲージメント・パートナーシップ契約を締結
- mocopi|ボリュメトリックキャプチャー技術
- フォートナイトなどe-スポーツ事業
- Dreams Universe|コンテンツプラットフォーム
- STAR SPHERE|宇宙での体験を開放する
- KENDRIX|ブロックチェーン技術でクリエイターをサポート
- ToF AR|ARツールキット
- VIRTUAL KOOV|教育コンテンツ
順にみていきましょう。
1.マンチェスターとバーチャルファンエンゲージメント・パートナーシップ契約を締結
2023年1月、ソニーはプロ・サッカークラブのマンチェスター・シティと協業し、次世代のオンラインファンコミュニティ実現に向けた実証実験を開始すると発表しました。
実世界と仮想空間を融合し、世界中のファンチームが身近に感じられるコンテンツの開発をメタバースでおこないます。
具体的には、マンチェスター・シティのホームスタジアムであるエティハド・スタジアムを仮想空間上に再現。
メタバースでの体験向上のために、ソニーの画像解析技術やセンシング技術(計測・数値化)が利用されています。
さらに、トラッキングシステム「ホークアイ」を活用してボールの位置や軌道を分析。VAR(ビデオアシスタントレフェリー)によって、映像をさまざまな角度からリプレイできる機能でファンの満足度を上げています。
またファンは自分のアバターを作成し、交流やカスタマイズを楽しめます。
2.mocopi|ボリュメトリックキャプチャー技術
mocopi(モコピ)は、小型軽量のモーションキャプチャーデバイスです。6つのセンサーを頭・手足・腰に取り付けることで、全身の動きをVRに取り込んでフルトラッキングが可能。
一般的にモーションキャプチャーを用いた映像制作には、専用の設備やオペレーターが必要です。
しかし、mocopiを活用すれば大がかりな施設は不要。VRチャットと連携させてリアルタイムでアバター操作もできます。
mocopiの使用方法は、アプリをダウンロードし、センサーをペアリング、接続されたセンサーを体に装着したのち、キャリブレーションするだけというシンプルなもの。
ソニーの技術は、時間や場所の制約からクリエイターを解放する助けとなるでしょう。
3.フォートナイトなどe-スポーツ事業
ソニーは2021年10月に、プラットフォームを限定しないeスポーツ事業としてSony Esports Projectを始動。2021年にバトルロイヤルゲームフォートナイトで大会を開きました。
2022年には映画スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームと、映画ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジの世界観を再現したオリジナルの渋谷マップを解放。
2023年も同様にSHIBUYA MULTIVERSEでプレイ目標タイムを競うなど、定期的にイベントを開催しています。
またPlayStationシリーズの開発・販売を行うソニー・インタラクティブエンターテイメントは、仮想通貨を利用してeスポーツで賭けができるプラットフォームの特許を申請中です。
4.Dreams Universe|コンテンツプラットフォーム
Dreams Universe(ドリームユニヴァース)は、イギリスのメディア「モレキュール」が開発したPlayStation 4用のゲームです。
ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、クリエイティブプラットフォームとしてサポート。VRヘッドセットを利用すれば、Dreams Universeのバーチャル世界を楽しめます。
ゲームの枠だけに留まらず、アート・アニメーション・動画などあらゆるオリジナルコンテンツをゲーム内で制作可能。世界中のプレイヤーと共有できる点が特徴です。
※2023年9月にライブサポート終了予定
5.STAR SPHERE|宇宙での体験を開放する
ソニーは東京大学、JAXAとともに、ソニー製カメラを搭載した超小型人工衛星を開発。2023年1月に打ち上げた人工衛星・EYEを利用したプロジェクト、STAR SPHERE(スタースフィア)を展開しました。
「宇宙の視点」を人々に解放することがコンセプト。スマートフォンやパソコンのブラウザからアクセス可能で、宇宙空間をエンターテイメントとして楽しむのが目的です。
具体的な利用方法は、操作シミュレータを使い、ユーザーが意図したカメラワークで地球や星々を撮影するというもの。
宇宙を感じられるメタバース空間で、アバターを操作してコミュニケーションやアクティビティも体験できます。
エンターテイメントの力で宇宙感動体験を世界に広める挑戦ともいえるでしょう。
6.KENDRIX|ブロックチェーン技術でクリエイターをサポート
KENDRIX(ケンドリックス)は、音楽の権利に関するDXツールです。KENDRIXは、ソニーグループが開発する権利管理ブロックチェーンシステムを採用。
「すべての音楽クリエイターが Creation Ecosystem に参画できる世界へ」というコンセプトのもと、音楽クリエイターが安心して楽曲発表できる環境を整えています。
適正な対価還元を受けるために必要な各種手続きを簡略化してくれるのが大きな特徴です。
7.ToF AR|ARツールキット
ToF AR(トフ AR)は、手や指の動きまでスムーズな描写を実現できるソフトウェア開発キットです。
- AR(拡張現実)とは?
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物体や建造物の深度情報を利用して、画面上の現実世界にバーチャルの視覚情報を重ねて表示する技術。おもにスマートフォンなどのエンタテインメント用アプリケーションなどに使用される。
指の関節の認識により、細かなジェスチャートラッキングができ、正確なアバターコントロールも可能。ToFセンサーとUnity(ユニティ)と組み合わせれば、モバイルARアプリも簡単に開発できます。
- Unity(ユニティ)とは?
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世界シェアNo.1を誇るゲームエンジン(開発環境)。3Dゲームやメタバース開発に利用される。
ホロライブプロダクションの配信システムにもToF ARが利用されており、VTuberのリアルタイム配信時に役立っています。
8.VIRTUAL KOOV|教育コンテンツ
KOOV(クーブ)は、ソニー・グローバルエデュケーション(SGED)が提供するロボット・プログラミング学習キットです。
KOOVの学びをバーチャル空間で体験できる「VIRTUAL KOOV」は、一般社団法人 オンライン教育産業協会(JOTEA)主催の「第19回 日本e-Learning大賞」にて総務大臣賞を受賞。
スクリーン完結型教材であるVIRTUAL KOOVは、直感的な操作性かつ、ゲーム性の高さが特徴です。大手学習塾や通信教育で展開されるだけでなく、公立・私立中学校への導入も予定されています。
ソニーは「メタバース事業で10億人とつながる」を目標に掲げる
2022年度経営方針説明会で、会長兼社長CEO吉田憲一郎氏は「メタバースとモビリティ」での成長をアピール。
人を軸とした事業領域として次の3つで「10億人とつながる」としています。
- ゲーム・音楽・映画
- テクノロジーサービス・イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)
- メディカル・金融
順に紹介していきます。
1.ゲーム・音楽・映画
「人の心を動かす」事業として、ゲーム&ネットワークサービス・音楽・映画の3事業を掲げているソニー。
これらのエンターテイメント事業の売上高は、連結全体の50%を超えており、その中でも最も規模が大きいのがゲーム事業です。
PlayStation5も2023年4月の時点で3,800万台売れており、海外での売れ行きも好調。PlayStationを通じて長期的成長を担うのが、PlayStationNetworkなどのサービスです。
ネットワークサービスの売り上げは増収を続けており、世界的な人気ゲームFortnite(フォートナイト)を運営するEpicGamesに、10億ドル(約1,500億円)の追加出資もしています。
Fortnite日本一を決めるイベントも2021年に開催。2023年6月にはFortnite上にソニーオリジナルマップも公開するなど精力的に展開しています。(参照:PRTimes|『フォートナイト』上でプレイ可能なオリジナルマップ「SHIBUYA MULTIVERSE」をSony Esports Project が公開)
2.テクノロジーサービス・イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)
「人と人をつなぐ」事業は、テレビなどのエレクトロニクス製品やCMOSイメージセンサーを中心に進められています。成長するCMOSイメージセンサーには、過去4年間で1兆円の投資を行い、トップシェアを獲得。
- CMOS(シーモス)とは?
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complementary metal oxide semiconductor(相補型金属参加膜半導体)の頭文字を取った略称。半導体の構造のひとつ。
オリジナルの次世代VRシステムPlayStation VR2は、内蔵カメラを用いて装着者の視線の動きを検出する機能を備えています。
人工衛星を使ったDTCサービスSTAR SPHEREやセンシングやエンターテイメントの最先端技術を搭載したEV(電気自動車)・VISION-Sにもソニーの技術が生きています。(VISION-Sの一般発売は2025年を予定)
3.メディカル・金融
「人を支える」事業として、医療と金融にもメタバースを絡めています。ソニー銀行は、投資用マンションの提携住宅ローン利用者向けに、Creepy Nuts(クリーピーナッツ)のオンラインライブに抽選で2万名を招待。
ソニー銀行と提携している千葉銀行では、内々定者に対しメタバース空間を利用したイベントを開催するなど積極的に利用しています。
医療に関しては、エムスリーとの提携で、入院中の患者が病室からバーチャル旅行や家族と面会できる体験をサポートするなど、ソニーのAR技術が、医療での手術補助にも活用されています。
ソニーのメタバースに関するQ&A
ソニーのメタバース事業に関する、よくある質問を集めました。
- 日本のメタバース企業は?
- 日本最大のメタバースは?
- メタバースの今後はどうなる?
順にみていきましょう。
- 日本のメタバース企業は?
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日本国内の代表的なメタバース関連企業は次のとおりです。
- Cluster(クラスター)
- HIKKY(ヒッキー)
- 株式会社Gugenka
- 株式会社REALITY
- 凸版印刷
- VARK(ヴァーク)
- ネストビジュアル株式会社
- ASOBISYSTEM(MetaTokyo)
- Synamon(シナモン)
- NTTドコモ(NTTコノキュー)
- リプロネクスト
- AVR Japan
メタバースプラットフォームを構築する会社から、メタバースに関するコンテンツ制作会社までさまざまな日本企業が存在します。
NFTやブロックチェーンを利用したサービスも増えており、私たちの生活にも浸透しつつあります。ニーズが増えることにより、日本のメタバース関連企業も増えていくでしょう。
凸版印刷やHIKKYについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
凸版印刷がメタバースの最先端!?ミラバース・メタパ・生体認証など事業内容を解説 | meta land 世界最大規模の印刷会社である凸版印刷とメタバースが結びつくイメージを持つ人は、どれくらいいるでしょうか。結論からいうと、凸版印刷のメタバース事業は業界の最先端を…話題沸騰!メタバースベンチャーHIKKY|事業内容を詳しく解説 | meta land メタバース関連の情報に触れていると「HIKKY」の名前を聞く機会は多いはず。結論からいえば、HIKKYは世界最大級のメタバースイベントを手掛ける会社です。そこで、今回は初…メタバース参入日本企業7選!事業例や市場の展望まで網羅 | meta land 日本企業が実際にこのメタバースにどのように参入しているか、またどのようなサービスやプロダクトを提供しているのかを中心にご紹介します。 - 日本最大のメタバースは?
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日本最大のメタバースプラットフォームは、cluster(クラスター)といわれています。スマートフォンやPC、VR機器などさまざまな環境からアクセスできるバーチャル空間を開発しています。
音楽ライブやイベントなどを随時開催しており、ユーザーはバーチャル空間で遊ぶだけでなく、コンテンツ提供側として稼ぐことも可能です。
clusterについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
【徹底図解】cluster(クラスター)の使い方|登録から操作まで完全ガイド | meta land 上記のように考えている人は多いのではないでしょうか? clusterは数あるメタバースプラットフォームのなかでも、かなり人気の高い存在。一方で登録方法や使い方、そして収… - メタバースの今後はどうなる?
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総務省の予想によると、メタバースの市場規模は2021年に4兆2,640億円だったものが、2030年には78兆8,705億円に拡大するとされています。
メタバースはもはや、ゲーム好きが集まる場のような限られたものではなくなってきました。企業ビジネスや地方自治体にも利用されており、メタバースへ出勤といった企業事例もあります。
メタバースはこれからのビジネスに欠かせない?活用事例とメリットを解説! | meta land メタバースとビジネスの相性は非常によく、総務省も2030年までの大幅な市場規模拡大を予測しています。この記事では、メタバースをビジネスに活かしているメリット・デメリ…
まとめ
この記事では、ソニーのメタバース事業について解説しました。
最後に重要なポイントをおさらいしておきましょう。
- メタバースを通じた新しい価値提供を目標としている
- メタバース事業で10億人とつながろうとしている
- 感動体験や夢の実現にソニーの技術を生かそうとしている
- e-スポーツ・宇宙・ブロックチェーン・EV・医療・教育など新しい分野に進出している
さまざまな分野へ進出するソニーは、その技術力によって新しい価値を創造しようとしています。
その対象は、必ずしもメタバースに限定されていません。技術革新の過程にメタバースがあり、ソニーの今後の発展は、無限の可能性を秘めているといえます。