NFTとAIの融合:Web3.0起業家小池隆太氏が語る、誰もがクリエイターとなる新時代

出典:SNAFTY

近年、ブロックチェーン技術によりデジタルデータの扱いが大きく変わりました。ただし新しい技術には矛盾や問題点も。NFT(代替不可能なトークン)の弱点に注目してスタートアップを立ち上げたSNAFTY株式会社の代表、小池隆太さん。

株式会社SNAFTYが開発したのは、NFT化データの価値を保証するサービス「SNAFTY」。NFTの弱点となる要素を排除する設計で特許を取得済みです。加えて、AIを組み込むことで、業界のゲームチェンジの可能性も見えてきました。

今回は、NFTの弱点を克服したサービス「SNAFTY」とAIを活用した新しいプロジェクトについてインタビュー!小池さんが考えるWeb3.0の現在と未来について詳しくお聞きしました。

目次

特許技術を用した「SNAFTY」はNFTの価値を保証するサービス!その仕組みとは?

snaftyのトップ画像
出典:SNAFTY

NFTは、デジタルデータに唯一性を与え、制作者や保有者を証明できる技術。ブロックチェーン技術によってデータの改ざんや複製を防ぎ、アートや音楽、ゲームアイテム、コレクションなどの希少性を高める目的で使用されています。

しかしNFTの技術も万能ではありません。「意味がない」と揶揄されがちですが、その矛盾点に着目した新規サービス「SNAFTY」について詳しくお聞きしました。

小池さん、本日はお時間をいただき、ありがとうございます。まず初めに、株式会社SNAFTYを立ち上げた経緯や、NFTの問題点について具体的に教えていただけますか。

小池隆太さん(以下、小池):はい、こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。もともと私は受託でシステム開発やWebメディアの運用に従事していました。

2020年頃からブロックチェーン技術がもてはやされ、NFTアートなどがニュースでも盛んに取り上げられるようになりましたよね。私自身も仮想通貨ウォレットや、NFTマーケットプレイス開発などの仕事を受ける機会が増えました。同時にNFTが持つ矛盾点に気づいたんです。

というのもNFTのなかにメタデータ(元になった画像の保存先、発行者、所有者、制作日など)というものがあります。メタデータはオーナーじゃなくても閲覧可能なうえ、誰でもJPEGのコピーを作成できます。

多くのNFTマーケットプレイスでは、その点を悪用して偽物が出品されていることが問題となっていますね。

小池:そうなんです。もちろんオーナーとしての所有証明はできるけど、現状NFTには法的な所有権は存在せず、誰でもスクリーンショットしてコピーできるため本質的に価値があるのか?……そんな疑問を抱きました。

この問題に対するソリューションはないものか……。解決できる仕組みを考え、その設計を特許申請したところ、なんとすぐに特許取得できちゃったんですよね。これは新しい事業を始めるチャンスだ。そう考えて株式会社SNAFTYを立ち上げたといった流れです。

NFTの弱点を解決できれば、より希少性が高まってNFTを所有する楽しみが増えそうですね!特許取得した技術の詳細をぜひ教えていただきたいです。

小池:はい。問題点は、NFTで本物だと証明したところで、誰でも見えるうえ、コピーもできるといった点ですよね。その解決策として、ある海外アーティストのニュースがヒントになりました。

その人は、作品をNFTで暗号化したあと、オーナーしか見られないようにして、現物のアートを燃やしちゃうといったパフォーマンスをしていたんです。

NFT化した後に現物のアートを燃やすアーティスト
出典:https://www.reuters.com/ © Damien Hirst and Science Ltd. All rights reserved, DACS 2022.

そこで元データがないのが一番大事だと気づきました。あとはスクリーンショットを撮れないようにして、オーナー限定で閲覧可能とする…つまりコピーできないようにするってことです。

特許の内容を簡単に説明すると、元データを消去して、スクリーンショットを防止する仕組みというわけです。

ありがとうございます。アプリケーション上では自分で購入した写真や動画を見るだけで、オーナーがスクリーンショットを取るのも不可能ですか?

小池:できません。購入者本人もスクリーンショットできないので、誰もコピーNFTを発行できないのです。

アプリケーションからNFTを仮想通貨ウォレットに移動したり、他のNFTマーケットプレイスで取引できますか?

小池:別ウォレットに移動できますが、そこでは透かしが入った状態です。他のNFTマーケットプレイスで売買も自由にできますが、弊社のアプリケーション上以外では、何枚発行したかの情報と透かしが入った状態でしか見えないようになっています。

ありがとうございます。その特許技術がSNAFTYアプリに活用されているんですね。アプリのサービス内容について教えていただけますか。

小池:はい。SNAFTYは弊社が開発したカメラアプリケーションです。タレントやインフルエンサーがSNAFTYで写真や映像を撮影し、直ちにNFT化されます。

SNAFTYは撮影専用のアプリのため、NFTは弊社が開発するfandao(ファンダオ)というマーケットプレイスで取引される仕組みです。

fandaoとは?

SNAFTYで撮影されたNFTを取引するマーケットプレイス。NFTを購入することで、出品者とのコミュニケーションや推し活が可能。

snaftyで制作したNFTを販売できるfandao
出典:PR TIMES

タレントやインフルエンサーが使うアプリがSNAFTYで、ファンがNFTを購入できるのがfandaoというわけですね。

小池:その通りです。SNAFTYでは先ほど説明したように元データを保存させないため、fandaoで購入したユーザーだけが世界でたった1つの「ピュアNFT」を保有できるのです。

snaftyとfandaoの全体イメージ
出典:PR TIMES

応援しているタレントの世界で1枚しか存在しない写真ですから、かなり希少性は高いはず。ウェブサイトとアプリの両方で購入可能であり、仮想通貨は必要ありません。クレジットカード登録により、日本円での決済が可能です。ウォレットの登録などの複雑な作業はありません。

ブロックチェーン技術に詳しくない方でも気軽に売買できそうですね!出品された作品はただ売買されるだけですか?

小池:購入者はfandao内で、応援しているアーティストのコミュニティで推し活ができます。アーティスト側も購入してくれたファンへメッセージを送れるため、継続的な関係づくりを構築できる仕組みです。

fandaoでのNFTコミュニティ
出典:fandao

作品販売期間は最初に設定しておくため、販売後48時間後に自動で削除されます。削除された作品は二度と手に入れることはできません。このシステムにより希少性を確保できるうえ、アーティスト側も売れ残りを気にせず販売できます。

fandaoで販売されるNFTは48時間で自動的に消去される
出典:fandao 

芸能事務所に所属するタレントさんが出品する際には、出品する前に承認・不承認でコントロールできる管理者用アプリもあるため安心です。

生成AIをタレント化!?みんなで育てるAIアイドルとは

snaftyのイメージ画像
出典:PR TIMES

ファンマーケットfandao(ファンダオ)に所属するタレントは、生身の人間だけではありません。今、力を注いでいるのは、生成されたAIタレント。なぜAIタレントなのかについて深掘りします。

fandaoに所属しているアーティストのラインナップを見ると、AIアイドルの比率が高いですよね。

小池:そうですね。現在はAIタレントに力を入れています。このサービスは実のところ、NFTに対する疑問から派生して生まれたんですよね。NFTって希少価値の証明みたいなものですが、そもそもエンターテイメントにおいて希少価値って必要でしょうか。

それはどういうことでしょうか?

小池:例えば、アパレルやアートなど、昔は限られたお金持ちしか手に入れられませんでした。それがイノベーションにより大量生産できるようになった結果、多くの人が手に入れられるようになった。しかし、NFTによって再びコンテンツの有限性を強調することは、時代と逆行しているのではないか、そんな気付きがありました。

ファンのニーズとしては希少性の価値は確実にありますが、事業側のメリットが少ないのが課題です。加えて、歴史的に大衆に広げていくのが正解だったりゴールだったりするのに、あえて希少性のみに注目するのは時代にフィットしていないなと。

この結論に至るまでに、めちゃくちゃ人に会って話を聞き、リサーチもしました。そこでマーケットやカルチャーにフィットするのは何か……と考えた結果、AIタレントというアイディアにたどり着きました。

AIタレントに至るまでに長いストーリーがあったわけですね。この文脈から登場したAIタレントの仕組みについて教えてください。

小池:AIタレントに、人間のインフルエンサーの投稿傾向データを大量に学習させます。さらに職業と年齢、趣味趣向などのプロフィールを設定すると、その子が投稿しそうな内容をAIが考えて写真を勝手に作り出す。そういったシステムが完成したところです。

AIタレントが運用するInstagramアカウントもあり、何千人もフォロワーがいてコメントも何十件も来るようなアカウントも育ってきています。

ただ、AIタレントってビジュアルがきれいってだけですよね。それだけではつまらないのが正直なところ。AIなので、1日何十件もの投稿も可能ですが、やればやるほど同じような写真になっちゃうんですよね。

たしかに、現在でもSNSでAIが生成した画像がアップされていますが、どれも同じように見えてしまいます。

小池:そうですよね。そこで、人間味のある面白いAIタレントが作れないかと考えたのです。

「ただきれいな写真だけではつまらない」AIタレントに人間味をプラス

snaftyのAIモデル
出典:PR TIMES

小池:AIが生成した絵や写真は、きれいなだけで面白味がないと小池さんは気づきます。そこにアイデアをプラスして、魅力的なキャラクターに育てる仕組みを作り上げたそうです。

AIタレントに人間味を加えるにはどのようなことをされているのですか?

小池:現在テストしているのが、AIタレントA子ちゃんのストーリーをドラマ化するというものです。例えば、A子ちゃんが火星に行ってダンスを覚えたあとにアイドルデビューするというアウトラインを与えます。

それをChatGPTが小説化して、日にち単位で分割した後1日の描写を5ショットに分ける。その5ショットに対して文章を添えることで、まるで小説やドラマのような物語が日々更新されるわけです。

それは面白そうですね!AIタレントに人格や人生を与えるってことでしょうか?

小池:その通りです。AIって会話もできるしコミュニケーションもとれますよね。でも、ただきれいな女性が話しているだけだと、全然面白くないんですよ。

そこに彼女のバックボーンやこれまでのストーリーとか日常があって、初めてその人との交流が面白くなるんじゃないか。そんな仮説を元に実験中です。実際、この仕組み自体は11月には実装できる予定です。

AIタレントの成長していく姿を見守る面白さに加え、推し活のようなものもできると。

小池:推し活もできます。人間のアイドルだと人格や人権があるから、こちら側がコントロールできませんよね。勝手に引退するってこともあるし。

でもAIタレントなら、Web3.0のDAOっぽくガバナンス(組織活動を制御するための統治行動・支配行動)を通じて選択されるようなIPを作れそうだと思ったんです。それって今までにない体験だから、面白いんじゃないかな。

snaftyのAIモデルは成長する
出典:PR TIMES

自分の応援でAIアイドルが実際に育って行くのは楽しそうですね。AIタレントの成長過程はfandaoだけで見られるのですか?

小池:うちのアプリケーションからInstagramやX(旧Twitter)などのSNSにも写真を直接投稿できるようにしています。予約投稿もできますよ。もちろん投稿しちゃうとコピーできるようになるので、NFTとしては販売できなくなりますが。

DAOとは?

DAO(Decentralized Autonomous Organization)はブロックチェーン技術を活用し、中央集権的な管理機構を持たず、参加者による自律的な運営を目指す組織形態。

IPとは?

IP(Intellectual Property)とは、クリエイティブな活動によって生み出されたアイデア・創作物など。知的財産として価値を持つもの。

複数のSNSを活用することで多くのファン層を獲得できそうですね。育てたAIアイドルはどのように活用していく予定ですか?

小池:AIアイドルとリアルな商品や場所とを合成できるので、人間モデルとの代替が可能です。例えば、マネキンに服を着せておいて、ワンクリックでAIのタレントに着せられるなんてことも。アパレルブランドがオリジナルAIモデルを持ちつつ、リアルな商品プロモーションができるんですよ。

ベースとなる写真とAIタレントを組み合わせる
出典:PR TIMES

AIアイドルの生成について質問があるのですが、毎回同じ顔のAIアイドルを作るのは難しくありませんか?
実際に私もAIでキャラクターを作成したことがあるのですが、毎回違う顔が生成されてしまいます。その点、小池さんはどのように工夫されているのでしょうか。

小池:たしかに、AIで同じ顔を生成するのが一番難しいポイントです。AIの学習には一般的にクラウドサーバーをレンタルするのですが、弊社では4台の高性能GPUを用意しています。

ここは弊社がかなり力を入れている部分で、毎回同じ顔のAIアイドルを出力できますし、顔の向きや表情も自由に変えられますよ。

それはすごいですね!AIアイドルが活躍する幅が広がりそうです。

小池:ありがとうございます。同じ顔が生成できることで、その子が生きているかのようにSNSで発信も可能だし、fandao内では推し活の対象にもなるみたいな。そんな3点セットを始めており、ちょうど11月からタレント事務所に運用してもらう予定になっています。

今まで女優さんやタレントさんと契約していたものを、企業内で育てたAIモデルに置き換えられるわけですね。

小池:その通りです。アパレル業界でも生産性を高める意識が高くなっているうえ、レギュラー商品の比率が増えてきているんです。でもモデルには契約期間があり、レギュラー商品なのに撮影し直さなければいけない。その業務の手間や時間をカットできるというわけです。

そうなると、将来的にタレントさん達の仕事はAIに置き換わっていくのでしょうか?

小池:AIが人間の代わりになるという考え方については、世間では賛否両論があるうえ、ハリウッドでは反対運動が起きるなど世界的にフォーカスされている話題です。ですから公平な仕組みを構築するのが重要かと思います。

誰もがクリエイターになれるフラットで自由な世界を目指す

新しい技術で、未来的なアイデアを次々に実現してきた小池さん。最後に、描く未来や実現したい世界についてお聞きしました。

これから展開するAI事業について、現時点で感じている課題や問題点はありますか?

小池:課題は大体解決しているので、あとはどうアクションを取っていくかといった段階です。リアルのタレントさんをAI化してモデル活用する検証を始めるとか、新曲プロモーションで歌わせてみるとか。運用インフラが整ってきたので、実際に企画や検証をやっていくような感じです。

すごいスピード感ですね!

小池:ユーザーサイドが追いつかない可能性もあるので、タイミングの見極めは大事でしょうね。どこでアクセルをかけていくのかについては、検証しながらです。まだ、AIに抵抗がある人も少なくないですから。

AIがまだ一般的に受け入れられておらず、使い方がわからない方も多いでしょうね。将来的なAIのあり方について、小池さんはどのような考えをお持ちでしょうか?

小池:AIの回答を誰が作ったかわからないとか、運営母体がない分散型になるってことも大切な要素かもしれません。最終意思決定を人間が改ざんできないってことが重要だと思います。

Web3.0において、完全に中央管理者のいない分散型といえるのはビットコインくらいです。ビットコインも登場したころは物議をかもしましたけど、今では法規制も整いつつあり認められてきました。実際には10年くらいかかっていますが。

ChatGPTは、OpenAIが管理する中央集権的な構造ですよね。最終的なAIの回答はOpenAIが管理できてしまう。管理者のいない分散型のAIはどのような仕組みになるでしょうか?

小池:AIはGPU(画像処理装置)で動いていますから、そのコストを投げ銭なんかで負担してもらう。人気がない、もしくは社会的にダメなAIであれば、投げ銭がないから維持できず消滅や自然淘汰されます。

みんなが投票した意思決定をAIの基準値で判断してアクションを取る、そんな世界を作れるのではないかと考えています。それが本物のWeb3.0になるんじゃないかな。

最終的な意思決定はAIが行うけれど、人にとって必要のないAIは無くなってしまう。結局のところ、人の存在は必要なくなることはないということですね。

小池:そうですね、人が便利だと感じるAIだけが普及していくはずです。そしてみんなが新しい技術を使っていけば、アイドルをプロデュースできるし、誰でも曲を作れるし、画家にもなれる。

誰もがクリエイターとして力を発揮できるような社会になります。そうなると、3D空間に入らなくたって現実世界でメタバースを実現できる、そんな風に思っています。

まとめ

小池さんが描く未来は、誰でもクリエイターになれるフラットな世界。最初はNFTの弱点を克服するアイデアからスタートした「SNAFTY」と「fandao」ですが、AIと結びつけることで、効率的で平等な世界が再構築されるかもしれません。

今後も、株式会社SNAFTYと小池隆太さんの動向が気になります!

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この記事を書いた人

「Metaland編集部」は、Web3.0、メタバース、AIといった最新のトピックを皆様にお届けします。専門知識がない方でもご心配は不要です。情報を深くかつ分かりやすく解説することを重視し、新しいデジタル時代への案内役となることを目指しています。一緒に新たなステップを踏み出しましょう!

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