出典:PASONA
巨大人材サービス会社パソナは、メタバース事業にて新しい形の人材活用に積極的に取り組んでいます。
しかし
- パソナのメタバース事業ってなに?
- 人材サービスとの関係は?
- それは私たちの生活に関連するの?
このように思っている方も多いのではないでしょうか?
結論から言うと、パソナはアバターを活用して遠隔地からの人材活用などに力を入れています。
今回は、パソナのメタバース事業について詳しく解説。本記事を読めば、パソナの取り組みと具体的な事業内容が理解できるでしょう。
実際に私たちの生活にも関係してくる可能性も。ぜひ最後までご覧ください。
メタバースとは、オンライン上でアバターを使ってコミュニケーションをとれる仮想空間のことです。
ゲームだけでなくビジネス、教育、建築など、さまざまな分野で活用されています。
メタバース内ではアバターやアイテムがNFT化され、仮想通貨を使って取引されるケースも。
Meta(旧Facebook)や、マイクロソフトなどの大手企業がメタバース事業に参入しており、世界的に注目を集めています。
メタバースについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
人材サービス大手パソナがメタバース事業に参入!掲げる4つのビジョン
人材派遣を主業とする大手企業のパソナ。現在は国内外のみならず、バーチャルの世界にも進出しています。
バーチャル上での取り組みは、以下4点によって特徴づけられます。
- 地方創生/本社機能を淡路島へ
- 新ビジネスモデル構築/アバターを利用した人材育成
- 雇用創出/メタバース上に100の街を創出
- DX推進/デジタルを活用した新しいワークライフ・スタイルの提案
順にみていきましょう。
人材派遣を中心に人材に関わるトータルソリューションを提供している総合人材サービス企業。人材紹介・再就職支援・アウトソーシング・教育・研修など幅広く事業展開している。
1.地方創生/本社機能を淡路島へ
パソナグループは「真に豊かな生き方・働き方」を目標に掲げ、2020年9月から、本社機能分散のため、淡路島へのオフィス移転を進めています。2024年5月までに管理部門の社員1,800人中1,200人を淡路島に移す計画です。
これはパソナが2008年から取り組んでいる地方創生事業の一環。淡路島(淡路市)を中心に自治体や地元企業と連携しながら、文化・芸術・食・健康・教育分野の活性化に挑戦しています。
淡路島に観光スポットを建設
本社機能移転以外にも、観光スポットや施設を立て続けにオープン中。
アニメテーマパーク「ニジゲンノモリ」や宿泊施設「グランシャリオ北斗七星」、さらにレストランやワーケーションオフィスまで開設しています。
このように、自治体と協力しながら地方創生のための投資を続けています。
TEDxは、世界的公演イベントであるTEDと、世界各地の企業や大学がコラボしておこなわれるプログラムです。TEDxは、TEDからライセンスの交付を受けた組織が「TEDx組織名」を掲げて、各地でコミュニティを形成。そのコミュニティがイベントを開催し、有力者の公演や参加者のディスカッションなどの機会を提供します。
TEDxにより、世界の様々な場所で講演やディスカッションが実現。淡路島では、2021年・2022年に開催され、3回目は2024年1月に開催予定です。パソナグループは、この事業の後援パートナーとして積極的に支援しています。
2.新ビジネスモデル構築/アバターを利用した人材育成
パソナは、アバターを利用した就業機会の拡大を目指し、AVITA株式会社と提携してアバターを操作するオペレーターの人材育成に取り組んでいます。
物理的な移動が難しい人材の就労を可能にし、それぞれの才能や能力をデジタル空間で生かすことで雇用創出を目指すものです。
遠隔から展示会の案内や店舗の対人接客をするなどの新しい就労のかたちを作り出しています。
淡路島にアバターセンターを開設
本社機能の移転に合わせて「淡路アバターセンター」も開設。センターでは、アバターを操作するオペレーター人材の育成やアバター人材による対人接客業務のBPOサービスを展開しています。
センターから対象の会場や企業にアクセスし、遠隔から受付や接客などの業務を担います。広島で開催されたG7サミットでは、英語が堪能なスタッフが外国人来場客に対応するなどの活躍をしました。
ゲームや仮想空間内での分身。外見・服装・性別などを自由に設定でき、他のアバターと会話したり物を交換したりできる。英語で「化身」の意味。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、自社業務を外部企業に委託するアウトソーシングの一種。対象業務は、人事・総務・経理・受付・コールセンター・ヘルプデスクなど。
3.雇用創出/メタバース上に100の街を創出
メタバース関連の事業に参入を表明した際、社長の南部氏は「メタバース上に100の街を創出する」と明言しました。
例えば、特定のスキルを持つ人がメタバース上で起業したり、地方都市がバーチャルマーケットを開いたりなど、場所に縛られないビジネス世界を実現しようとしています。そ
の結果、メタバース上で新たな交流が生まれ、関係人口創出や地域産業振興などを後押しできるでしょう。
4.DX推進/デジタルを活用した新しいワークライフ・スタイルの提案
パソナグループはDXを推進するために「DX宣言」をしています。真に豊かな生き方・働き方ができる「個人自立社会」を実現させるとし、掲げた目標は次のとおり。
- DX推進人財の育成に貢献する
- DXでキャリアの可能性を広げる
- DXで多様なワークライフ・スタイルを創造する
DX推進のために社内体制を整え、制度や施策、セキュリティなど多方面で全社的に取り組んでいるのがわかります。
デジタルトランスフォーメーションの略。企業がAIやIoTなどのデジタル技術を活用して業務プロセスを改善すること。その結果、革新的な製品やサービスを生み出すことを目的としている。
デジタルアカデミー社員制度
2024年5月までにグループ全体で約3,000人のDX人材育成を宣言。リスキリングによる研修プログラムを拡充し、AIに関する基礎知識やデータ分析手法の習得など専門性の高いスキル習得を目指しています。
制度を利用すると、インフラスペシャリスト・アプリケーションエキスパート・DXアーキテクトなどに転身可能です。
パソナのメタバース事業4選
パソナが手掛けるメタバース事業4つを紹介します。
- アバターコンシュルジュ/アバターを利用した接客や案内
- Pasona Connect/特産品をメタバース上で購入
- メタバース体験ツアー/バーチャルで座禅体験
- メタバース面接・接客/看護師による遠隔健康相談
順にみていきましょう。
1.アバターコンシュルジュ/アバターを利用した接客や案内
アバターコンシェルジュは、アバターによる顧客サービスの一種です。
淡路島の観光案内としてアバターコンシェルジュが質問に答えてくれます。おすすめスポットを聞いたり、レストラン予約をお願いしたりできるので非常に便利。
オペレーターは淡路島アバターセンターから接続しており、利用者はスマホ・PCどちらからの接続も可能。次の手順でアバターと話せます。
- 「アバターと今すぐ話す」をタップ
- デバイス設定をする(カメラとマイクのON/OFFを設定)
- 「接続する」をタップ
- 待機画面で接続するまで待つ
アバターは、質問に臨機応変に対応してくれ、自由な会話を楽しめます。相談は無料。営業時間は平日10:00~19:00・土日祝10:00~17:00です。
アバターのキャリアコンサルタントも
アバターキャリアコンシェルジュでは、アバターがオンラインでキャリア相談に乗ってくれます。
もちろんプロの資格を持つコンサルタントが対応。「今すぐ相談」と「予約して相談する」のふたつの方法があります。
相談は30分程度で無料。匿名・顔出しなし・すきま時間に利用できる手軽さがよいですね。自分の適性やスキルの発見に役立ちます。
2.Pasona Connect/特産品をメタバース上で購入
Pasona Connectは、地方自治体のニーズに合わせて各地域の観光地や特産品などを購入できるプラットフォームです。人・企業・地域をメタバース空間でつなぐ地方創生を目的としたサービスで、遠方にいながら地域観光や文化・特産品などを楽しめます。
写真撮影を楽しんだり地域住民との交流ができたりなど、リアルとメタバースの両面からさまざまな取り組みをおこなっています。
まだ実証段階ではありますが、ビジネスマッチングの機会創出も期待できるでしょう。
3.メタバース体験ツアー/バーチャルで座禅体験
パソナは淡路島の大自然の中に禅体験ができる施設「禅坊 靖寧(ぜんぼうせいねい)」を建設。四季を感じつつ、自分と向き合う時間を提供しています。
建築界・世界最高栄誉といわれる「プリツカー賞」を受賞した坂茂氏による建築物で、全長100mのウッドデッキで木のぬくもりを感じつつ、瞑想やヨガを楽しめるのが特長です。
Webサイトからは3Dメタバースで雰囲気を体験できます。加えて世界中のどこからでもオンライン上でアクティビティを体験できる『ZENメタバース体験ツアー』も開催しています。
4.メタバース面接・接客/看護師による遠隔健康相談
アバターを活用し、遠隔操作で看護師が健康相談をするサービスも展開しています。
この事業のきっかけは、淡路市の高齢化率が全国を上回る38.5%だったこと。移動手段も限られるため、病院へ簡単に行けない方を対象にしています。
高齢者にはタブレット端末を配布したうえで、週に1~2回・1回30分~1時間の相談ができるようにしました。
健康チェックリストに基づいて健康状態の確認をしたり生活の相談をしたりと内容は多岐に渡ります。
このサービスは、移動が必要ないという高齢者側のメリットと同時に、アバターとして働く看護師も多様な働き方ができるといったメリットも。
看護師資格を持ちながら諸事情で病院に勤められない場合も、在宅で仕事を続けられるため、人材の掘り起こしといった側面があるのです。
パソナが他企業と協力して展開するメタバース事業
パソナは、他企業と協力したメタバース事業も展開しています。代表する5つの事業は下記のとおり。
- AVITA/アバター人材雇用創出プロジェクト
- ニジゲンノモリ/二次元コンテンツの世界観を五感で体験
- ゆるバース/ご当地キャラとメタバースのコラボ空間
- 大阪・関西万博/バーチャル世界でSDGsを解決
- ANA NEO/メタバース旅行体験
順にみていきましょう。
1.AVITA/アバター人材雇用創出プロジェクト
AVITA株式会社と協業し、アバター技術と人材ビジネスを組み合わせた「アバターワークサービス」を開始しています。AVITAのアバター技術である「AVACOM」を活用し、専門人材を全国に共有するのが目的。
導入により次のようなメリットがあります。
- 高いスキルを持つ人材を全国で共有できる
- 1人のスタッフが複数個所で対応できる
- 完全非接触対応で感染症対策もできる
パソナは、アバターを担当するスタッフを育成することで、全国で活躍する人材や働く場を創出。アバターが活躍する場は、テーマパークや施設の案内、企業の受付、無人販売での接客・販売促進などを想定しています。
実際、アバター接客で売上が153%アップしたとの報告もあり、今後の活躍が期待できそうです。
2.ニジゲンノモリ/二次元コンテンツの世界観を五感で体験
アニメ・漫画・ゲームなど二次元コンテンツの世界観をリアルで体感できる「純日本産のアニメパーク」がニジゲンノモリです。
兵庫県立淡路島公園のなかに位置し、ハイウェイオアシスとも直結しているためアクセスも抜群。関西国際空港からも60分で到着します。
また、日中(10:00~17:00)と夜(18:00以降)とで演出を変えているのも大きな特徴です。昼間は自然の中で思いっきり体を動かすアトラクションが中心、夜は最新テクノロジーを利用した幻想的な世界観を体験できます。
3.ゆるバース/ご当地キャラとメタバースのコラボ空間
東日本大震災が発生した2011年より開催されていた「ゆるキャラグランプリ」。これまで地方創生の一翼を担っていました。
2020年にいったん幕を閉じたゆるキャラグランプリですが、メタバースと連動させて「ゆるバース」として復活。
株式会社NTT QONOQ(コノキュー)が提供する仮想空間プラットフォーム「DOOR」を利用し、メタバース空間と連動させました。同時にリアル会場(兵庫県淡路市)での決戦投票&表彰式を行います。
パソナはリアル会場での運営を支援。6回目となる「UNDOKAI WORLD CUP 2023」も同時開催しています。メタバース空間との連動は初の取り組みで、オンラインとオフラインのハイブリッド開催に注目が集まっています。
4.大阪・関西万博/バーチャル世界でSDGsを解決
2025年に開催される日本国際博覧会(大阪・関西万博)。パソナグループはパビリオン「PASONA NARYREVERSE」を出展します。
コンセプトは、生命の誕生から現在までつながってきた「いのち」。その中心となる機能・心臓に関する最新医療テクノロジーをテーマに展示を行います。
パビリオンの形は、命の象徴としてアンモナイトの螺旋形状を採用。来場者には「いのち」の歴史と感謝を感じてほしいとのこと。
ほかにも「命輝く未来社会のデザイン」をテーマに、メタバースやWeb3.0の社会実装に貢献すると目標を掲げています。
5.ANA NEO/メタバース旅行体験
2022年9月、ANAと協業してバーチャルトラベルプラットフォーム「ANA GranWhale」におけるジョブ開発を行うと発表しました。
これは、世界的に知名度の高いゲームクリエイター田畑端氏を中心に、メタバースを活用した未来のライフスタイルを企画・提案するサービス。
パソナグループは、メタバースでの人材活用ノウハウを提供し、ユーザーのメタバース上での旅行やショッピングをサポートします。将来的には、メタバースにおける新しい働き方の構築や発展を想定。
まずは2023年6月にアジア(タイ・マレーシア・フィリピン・香港・台湾)から先行ローンチしました。V-TRIPでは、京都や北海道などをメタバース上で訪問できます。
Skyモールでは「ANA GranWhala」内で使えるデジタルアイテムやEC商品を購入可能。
「ANA GranWhala」の利用にはアプリのダウンロードが必要です。
パソナのメタバースに関するQ&A
パソナのメタバースに関する、よくある質問に答えます。
- パソナはなにをする会社?
- パソナはなぜ淡路島に移転したの?
- パソナの業績や株価は?
順に見ていきましょう。
- パソナはなにをする会社?
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パソナグループは、東京港区に本社を置く人材派遣や人材紹介サービスを展開している企業です。
創業は1976年で、2026年に50周年を迎える伝統ある会社です。ほかにも再就職支援、アウトソーシング、教育、研修など幅広く事業展開。人と仕事に関わるソリューションに関わっています。
近年では、地方創生やWell-bingをテーマとした新事業にも挑戦。東北・京丹後・淡路島など地方自治体や地元企業と連携しながら、文化・芸術・食・健康・教育の活性化に取り組んでいます。
- パソナはなぜ淡路島に移転したの?
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社長の南部氏によると、直接のきっかけはコロナによる緊急事態宣言です。新型コロナウイルスの感染者が出た場合のリスク分散など、事業継続計画(BCP)の観点で利点が大きいと判断したとのこと。
テレワークが進み、地方移住のハードルが下がったことも大きいようです。
新事業である地方創生人口も同時に取り組んでおり、アニメパークニジゲンノモリや宿泊施設グランシャリオなど環境産業にも力を入れています。
- パソナの業績や株価は?
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2024年5月期の連結業績予想は売上高続伸としています。人材需要が安定的に推移し、インバウンドの回復で観光産業の売上アップが見込めそうです。
地方創生事業についても施設利用者が増加すると想定され、390,000百万円(4.7%増)を見込んでいます。
2023年10月5日時点での株価は1,555円。1年前に比べると株価は下落基調ですが、メタバースや地方創生といった新しい事業分野に期待できるでしょう。
まとめ
この記事では、パソナのメタバース事業について解説しました。
最後に重要なポイントをおさらいしておきましょう。
- 地方創生の一環として本社機能を淡路島へ移転
- 淡路島にはメタバース事業としてアバターセンターを設立
- アバターを利用した人材を育成し、新しい雇用を創出
- DXに携わる人材育成に積極的
- メタバースを利用した新しいサービスでは他企業と協業
コロナによりリモートワークが加速し、メタバースを利用した雇用創出が現実的かつ実用的になっています。スキルの高い人材が遠隔操作で働けるよう、環境や技術を整えるといった面で、パソナグループは大きく貢献するでしょう。