近年、AI技術の進歩により、画像認識は飛躍的に進化し、さまざまな分野で活用されています。
無料で使えるアプリでもAIによる画像認識が導入されるようになり、身近な技術になったと言えるでしょう。
しかし、
- そもそも画像認識がなんなのか分からない
- どういったアプリが画像認識を利用しているのか知りたい
- ビジネスなどで画像解析を活用している事例が気になる
上記のような悩みを持っている方は多いでしょう。
結論から言うと、AI画像認識とは、人工知能(AI)が画像の中に写っている物体を認識する技術。すでにさまざまなアプリに活用されています。
本記事では、AI画像認識の概要や特徴、フリーのサービスやツールなどを紹介します。
画像認識の導入事例なども紹介しているので、気になる方はぜひ本記事を最後まで読んでみてください。
AI画像認識とは?できることや特徴
AIを使った画像認識について、概要や特徴などを以下4つのポイントにまとめて解説します。
- 学習した対象を識別するパターン認識技術
- 注目を集めたきっかけは2012年のILSVRC
- 非構造化データを処理できる
- デジタルカメラやスマートフォンで手軽に利用できる
1.学習した対象を識別するパターン認識技術
AI画像認識とは、人工知能(AI)が画像の中に写っている物体を認識する技術です。
パターンをAIに学習させれば、入力された画像に特定の物体が含まれているかどうか識別できます。
AI画像認識を利用した機能の例は以下のとおり。
- 特定のものを見つける物体検出
- 状態をチェックする物体認識
- 捕捉・追跡する物体トラッキング
画像認識の精度は年々向上しており、今後の発展も期待されています。
人間とAIによる違い
画像に何が写っているかを認識するとき、人間とAIでは以下の違いがあります。
- 人間:過去の経験に基づいて判断する
- AI:学習したデータのパターンから判別する
人間が画像認識する場合、正しく判断するには経験を重ねる必要があり、人によって違いが生じます。
一方AIは、画像認識に必要なデータを共有すれば、誰でも同じレベルで精度の高い判別が可能です。
2.注目を集めたきっかけは2012年のILSVRC
AIによる画像認識は、2012年に開催されたILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge)で注目を集めました。
ILSVRCとは画像認識の精度を競う大会で、2010年から2017年の間に開催されました。
2012年のILSVRCで優勝したSuperVisionチームが使用したのは、ディープラーニングを利用したモデルAlexNetです。
人工知能(AI)の一種で、大量のデータから自動的に特徴を学習する技術。
それまでのILSVRCでは上位のモデルでもエラー率が25%を超えており、1%単位で競いあっていました。
ところがAlexNetは2位と比べて10%以上もの差をつけ、エラー率15.3%という結果を出しています。
このような結果を出したAlexNetがきっかけとなって、ディープラーニングを利用した高精度な画像認識モデルが続々と登場しています。
その後のILSVRCでエラー率は3%以下に
AlexNetは驚くべき結果を出しましたが、ILSVRCが回を重ねるごとにエラー率はさらに改善されていきます。
最後に実施された2017年のILSVRCでは、いくつものモデルがエラー率を3%以下に抑えました。
人間が判別したときのエラー率がおよそ4%とされているため、AIによる画像認識は人を超えたとの声も。
3.非構造化データを処理できる
AIによる画像認識を利用して非構造化データを処理することも可能です。
非構造化データとは、表のように決まった形式で表現できない情報のことで、画像や動画、音声のようなデータを指します。
昔の画像認識では、特定の形式に沿ったデータしか認識できず、学習したフォーマットと少し違うだけでエラー扱いされていました。
しかしディープラーニングを利用することで、学習していない形式や特徴にも柔軟に対応し、正しく判別できます。
具体的には、機械の画像から故障している箇所を特定したり、色調を変えた画像から花を正しく判別したりすることが可能です。
非構造化データを効率的に処理する技術は、ビジネスにおいて特に重要だとされています。
なぜなら、企業が保有するデータの8割が非構造化データだと言われているからです。
プレゼン資料や議事録、出退勤表など、日々の業務で作られる資料や記録のほとんどが非構造化データに分類されます。
ビジネスを効果的に展開していくためには、非構造化データを活用できる技術を導入する必要があるでしょう。
4.デジタルカメラやスマートフォンで手軽に利用できる
画像認識と聞くと難しいイメージがあるかもしれませんが、実際は誰でも手軽に利用できます。
なぜなら、デジタルカメラやスマートフォンで使える機能に画像認識の技術が組み込まれているからです。
最近では、スマートフォンに標準搭載されているカメラ機能でQRコードを読み取れるなど、より身近な技術となっています。
無料で使えるサービスも多いので、知らないうちに画像認識を利用しているかもしれません。
フリーのAI画像解析サービス・ツール10選
画像認識を無料で実際に試せる、AI画像解析サービスおよびツールを10つ紹介します。
- Googleレンズ|カメラに写したものを検索する
- Zoom|バーチャル背景などで装飾する
- WEAR|画像からコーディネートを検索する
- 麻雀.AI 得点君v3|あがり牌から得点を計算する
- Vivino|飲んだワインのデータベースを作る
- CoinSnap|全世界のcoinを識別する
- PlantSnap|植物の名前を判別する
- Picture Insect|昆虫の種類や名前を判別する
- マイAI|魚を判別して詳しい情報を提供する
- Piascore|表情ジェスチャーで楽譜をめくる
1.Googleレンズ|カメラに写したものを検索する
目の前にあるものを手軽に調べられる、Google製のアプリです。
Googleレンズで写真を撮ると、写った対象をGoogleで検索して情報を表示します。
また、カメラに映している文字をリアルタイムで翻訳したりコピーしたりできるなど、数々の機能が備わっています。
Googleレンズはスマートフォンのアプリのほか、Googleサイトの検索窓の右にあるアイコンからも利用可能です。
あらゆる物体を対象としているため汎用性が高く、利用できる場面も多いでしょう。
2.Zoom|バーチャル背景などで装飾する
オンライン会議やミーティング、Webセミナーなどを開催するために利用されるビデオチャットアプリです。
Zoomでは、バーチャル背景やフィルターの機能に画像認識の技術が使われています。
バーチャル背景を利用すると、人物以外の背景をAIによって判別し、好きな背景に差し替えられます。
フィルターは、人物の顔を認識して動物の顔などに変形させる機能です。
オンラインでのミーティングやオンラインなど、さまざまな場面で活用できるでしょう。
3.WEAR|画像からコーディネートを検索する
有名なファッションECサイトZOZOTOWNなどを運営しているZOZOが提供しているファッションコーディネートアプリです。
WEARは画像検索の機能が搭載されており、写真に写っているファッションを検索できます。
検索対象には、トップスやパンツなどの服装からバッグなどの小物まで対応。
似た商品も検出でき、そのまま購入できるので、雑誌などでファッションをチェックしている人におすすめです。
4.麻雀.AI 得点君v3|あがり牌から得点を計算する
麻雀であがったときの牌をカメラで撮ると得点を計算してくれるアプリです。
牌の置き方は画面に表示されるので、ガイドに従って配置すればOK。
アプリ外にデータを送受信しないため、高速で計算できるのも評価すべきポイントです。
麻雀ができても点数計算は苦手という人も、得点君を使えば卓をスムーズに進行できるでしょう。
なお、得点計算にはMリーグのルールが採用されています。
5.Vivino|飲んだワインのデータベースを作る
世界中のワイン愛好家が利用している情報アプリです。
ワインボトルのラベルを写真に撮ると、いままで飲んだワインの情報を記録した自分だけのデータベースに登録できます。
さらに、ワインの詳細情報や評価などを閲覧したり、購入したりすることも可能。
レストランなどのワインリストから情報を入手することもできるので、ワインを飲む人にとってVivinoは欠かせません。
6.CoinSnap|全世界のcoinを識別する
写真に撮った通貨や記念コインに関する情報を調べられる辞典アプリです。
コインの種類だけでなく、デザイナーや含有成分、重さといった詳細まで表示してくれます。
また、コインの摩耗具合や光沢などの状態を評価したうえで参考価格を判定する機能も。
所有していないコインについても検索機能で調べられるため、コレクター必携のアプリです。
7.PlantSnap|植物の名前を判別する
カメラで撮った植物の名前を調べられる識別アプリです。
PlantSnapで検索できる植物の種類は65万を超えており、花や樹木だけでなく、サボテンやキノコのように特殊な形状でも識別できます。
撮影した写真はアプリを通して匿名で共有でき、世界中で撮られた写真を閲覧することも可能です。
また、共有されたデータは学習データとしても利用されるため、アプリの利用者が増えるほどAIによる識別の精度が向上するのもポイント。
37カ国もの翻訳に対応しているので、世界中の植物を調べるのに役立つでしょう。
8.Picture Insect|昆虫の種類や名前を判別する
昆虫に特化した、AI画像認識による識別アプリです。
1000種類以上の昆虫を記録したデータベースを用いて、よく似た種類の生き物も95%以上の精度で識別できます。
蛹や幼虫からでも判別できるので、気になる昆虫を見つけたら使ってみるとよいでしょう。
9.マイAI|魚を判別して詳しい情報を提供する
魚の情報に特化した画像認識AI図鑑です。
マイAIで魚の写真を撮ると図鑑が開き、名前や特徴などを詳細に調べられます。
毒の有無や性質・部位まで確認できるため、釣りや料理のシーンで役立つでしょう。
ちなみに、刺身の状態でも魚の種類を判別できます。
10.Piascore|表情ジェスチャーで楽譜をめくる
iPadやiPhone用の電子楽譜ビューアアプリです。
カメラで奏者の顔を認識し、表情によるジェスチャー(動き)で楽譜のページをめくる機能が付いています。
対応するジェスチャーはウィンクや眉毛アップ、舌を出すなど豊富にあり、好きな動きで設定できます。
両手が塞がる楽器演奏者でもスムーズに楽譜をめくれるでしょう。
AI画像認識の導入および活用の事例6つ
AI画像認識はビジネスにも導入されており、あらゆる現場で活用されています。
ここでは、以下の6つの業界における具体的な活用事例を紹介します。
- 製造業|不良品を仕分ける検品作業の効率化
- 小売業|セキュリティ性の高い無人店舗
- 医療|視認できない異常を早期発見
- 警備|監視ロボットによる不審者の特定
- 調査|AIカメラによる交通量調査
- 農業|農薬を効率的に散布
1.製造業|不良品を仕分ける検品作業の効率化
製造業では検品作業にAIを導入し、不良品を仕分ける精度を高めたり作業コストを軽減させたりしています。
人力での検品は人によって差が出てしまうため、経験の浅い従業員だと不良品を見つけられない確率が高いのです。
しかしAIで検品すれば、不良品を見逃す確率を一定水準に抑えられ、従業員にかかる負担を減らせます。
また、人件費を削減することで人手不足の問題を解消できるメリットも。
2.小売業|セキュリティ性の高い無人店舗
小売業の事例として、AI技術を活用した無人店舗が挙げられます。
店舗のいたるところにカメラを設置し、入店する顧客やかごに入れた商品などを特定。
顧客情報はあらかじめ登録しておき、お店を出ると会計処理が自動的に済みます。
顧客の動きを捉えるカメラの数が多いため、有人の店舗よりセキュリティ性が高い点も特徴です。
こうした形態の無人店舗は国内でも実現しており、CATCH&GOやSECURE AI STORE LABなどで体験できます。
3.医療|視認できない異常を早期発見
医療の現場では、早期胃がんや眼底疾患のような病状を早期発見するために画像認識技術が導入されています。
高精度な自動検出法を確立しているため、人間の目でも確認できなかった異常も発見できるようになりました。
さらには、手術画像をもとに最適な施術方法を提案するといった支援も。
こうしたAIの貢献は早期治療に繋がり、多くの患者を救う一因となるでしょう。
4.警備|監視ロボットによる不審者の特定
2017年に、ドバイ警察がロボット警官を採用したことが話題になりました。
スペインのPAL Roboticsで開発された人型ロボットREEMがベースとなっており、人と対話したり罰金を受け取ったりできます。
画像認識によって不審物や不審者を見つけ出せるため、人間の代わりにパトロールすることも可能です。
ドバイでは2030年までに警官全体の25%をロボットにする計画もあり、新たなタイプの機体も開発されています。
5.調査|AIカメラによる交通量調査
歩行者や車両の交通量を調査するときも、AIによる画像認識が活用されています。
交通量調査といえば、人がカウンターを使って数えるイメージがあるかもしれません。
しかし国土交通省による全国道路・街頭交通情勢調査では、2021年に人力での観測が廃止されており、AIカメラを使った計測に切り替わりました。
AIカメラは写った対象を検出し、歩行者や車両をいくつかの属性に分けて判別することが可能。
さまざまなタイプのAIカメラで計測を実施できるため、イベント会場や商店街、踏切などあらゆる場所で調査できます。
6.農業|農薬を効率的に散布
農業で利用する農薬散布ドローンにも、画像認識の技術が導入されています。
ドローンに搭載されたカメラで作物の状態をチェックし、農薬を散布する箇所や量を自動的に調整します。
人の手で実施するように葉っぱの裏までムラなく散布できるので、自動運転ですべて任せても問題ありません。
農薬の撒きすぎによる環境破壊を防ぐ意味でも、ピンポイントで散布できるドローンを利用するメリットは大きいでしょう。
AI画像認識に関するQ&A
AI画像認識に関する、よくある質問と回答を紹介します。
- 画像認識と画像解析の違いは何ですか?
- AI画像認識アプリを自作する方法は?
- AI画像認識を導入するメリットは?
- AI画像認識のデメリットは?
- 画像認識と画像解析の違いは何ですか?
-
画像解析のカテゴリに含まれている以下3つの分野のうちの1つが画像認識です。
- 画像認識:画像に写っている物体や人物を識別する
- 画像分析:画像からより詳細な情報や意味を抽出する
- 画像処理:画像自体を加工したり変換したりする
これらの技術は組み合わせて利用されることが多く、境界線が曖昧になりやすい点に注意してください。
- AI画像認識アプリを自作する方法は?
-
自分でAIに学習させて画像認識アプリを作るなら、MicrosoftのLobeを利用するのがおすすめです。
Lobeは素材となる画像があればマウス操作だけでAIに学習させられ、プログラミングなどの専門知識が必要ありません。
無料で使えるので、画像認識の入門に使ってみるとよいでしょう。
以下のようなサービスを利用して、APIを自社のプログラムに組み込む方法もあります。
- Google Cloud Vision API
- Clarifai
- computer vision API
- Open CV
- AI画像認識を導入するメリットは?
-
AI画像認識の主なメリットは以下のとおり。
- 膨大なデータを処理できる
- 人によるブレを防げる
- 自動化で人員不足を解消できる
- DXに関する補助金を受け取れる可能性がある
関連する補助金には、IT導入補助金や事業再構築補助金、ものづくり補助金などが考えられるでしょう。
【無料相談可!】メタバース関連の主な補助金を解説|活用事例・申請手順例も紹介 | meta land メタバースの導入・開発には補助金がおりることをご存じでしょうか。本記事ではメタバース事業で活用できる補助金や、申請手順などを詳しく解説します。コストを抑えてメタ… - AI画像認識のデメリットは?
-
AI画像認識の主なデメリットは以下のとおり。
- 大量の学習データが必要
- システムを導入するのに費用がかかる
- 精度が完璧ではないため人の手は必要
精度を高めるには大量の学習データが必須なので、将来的にデータ量が増加する可能性がある点にも注意しましょう。
費用に関しては、メリットの1つである補助金である程度カバーできる可能性があります。
まとめ
本記事では、AIによる画像認識について解説しました。
最後に、記事の内容をおさらいしておきましょう。
- 画像認識とは画像に写った物体や人物を識別する技術
- ディープラーニングが発展したことで精度が向上している
- スマートフォンのアプリなど身近なところで活用されている
- 小売業や医療等あらゆる業界で導入されている
画像認識はAI技術の中でも実用性が高い技術であり、活用される場面はこれからも増えていくでしょう。
無料で使えるサービスもどんどん登場しているので、今後のさらなる発展に期待です。