出典:PLATEAU
国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデルの整備・オープンソース化プロジェクトPLATEAU(プラトー)。
無料で精度の高い3D都市モデルを利用できることから、注目が集まっています。
しかし、
- PLATEAUがどのようなサービスか知りたい
- 具体的にどのようなことができるか知りたい
- 実際の活用事例が知りたい
という疑問をお持ちの方もいるでしょう。
結論からいうと、PLATEAUの3D都市モデルはすでにさまざまな分野で活用されており、成功事例も存在します。うまく活用すれば自社のビジネスにおいても活用できるかもしれません。
そこで本記事ではPLATEAUの概要や特徴、活用事例について解説します。
本記事を読めば、PLATEAUのことはほとんど理解できるはず。自社への導入を検討している人はぜひ参考にしてください。
PLATEAUの概要と特徴
まずはPLATEAUについての理解を深めるため、以下の点を解説します。
- PLATEAUの概要と特徴
- 利用料金
- 基本的な使い方
PLATEAUの概要
PLATEAUは国土交通省が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンソース化プロジェクト。わかりやすくいえば、現実にある日本の地形や建物の形を、3D情報として完全再現したものです。
2023年に法務局経由で公開され、誰でも閲覧できるようになりました。
これはいわゆるデジタルツインに該当するものです。
現実世界の情報を仮想空間で忠実に再現する技術。
またPLATEAUには地名や建物名称、さらにはその用途や使用された部材、さらには建築年度なども記載されています。
つまりPLATEAUがあれば、日本の地理を3Dで理解するとともに、建物に関する情報を一斉に取得することが可能。
たとえばある建物をクリックすると、下図のように、詳細が表示されます。
これにより、後述する複雑なシミュレーションやマッピングなどが、ある程度容易に実践できるようになりました。
PLATEAUは、後述するように多くの大企業や行政によって活用されており、実際にさまざまな成果を挙げています。
PLATEAUの特徴
PLATEAUの特徴として以下が挙げられます。
- GISを導入
- Level of Detailを導入
- 無償で商用利用可能
GISの導入
まずGISがフル活用されている点があります。
GISとは、その位置に関する情報を統合し、地図上に視覚的に表現することを示します。わかりやすくいえば地図に何らかの条件を重ね合わせて見えるようにしているわけですね。
たとえば、Googleマップは地形や建物が表示されるとともに、市町村や都道府県の境目などが表示されます。
これは、行政区分という情報を地図上に視覚的に表現しているので、GISとなるわけです。
PLATEAUではこのGISが徹底的に活用されています。地名や行政区分のみならず、標高なども重ね合わせて視覚化することが可能。
実際に東京近郊の標高を示すと上図のように表示されます。東京湾に面する平野であるため、標高が低いことを示す青色がマッピングされました。
その他「建物の高さ」や「用途」によって色分けして表示させることも可能です。これほど細かくGISが徹底されたツールは他に類を見ず、PLATEAUは非常に優秀な存在といえます。
Level of Detailの導入
3D情報では欠かせないLevel of Detailも導入されており、高いレベルで活用されています。
Level of Detailtとは、建築物をデータにした場合の、その詳細さの度合いを示すもの。下図のように段階分けされています。
PLATEAUでは、3D情報である以上、最低でもLOD1「建物+高さ情報」の水準が用いられています。さらに一部エリアではLOD2「+屋根形状」まで詳細に記述。
Leve of Detailの活用によって、ユーザーはより活用価値の高い情報を取得できます。
無償で商用利用可能
PLATEAUは法人・個人を問わず無料で利用できます。
ビジネス向けの地理情報は有料化されるケースが多いなか、詳細な3D情報がまとめられたサービスを無料で使えるのは非常に大きなメリット。
これまで地理情報の取得に費用をかけていたなら、PLATEAUに乗り越えることで、相当なコストカットが望めるでしょう。
また、3D情報がないがゆえに止まっていたプロジェクトも、これで再起動できるかもしれません。
注意したいのは、PLATEAUはやや動作が重くなりがちである点です。求められる動作環境のレベルが高く、たとえばメモリ16GBのデスクトップ型パソコンでも、動作が緩慢になりがち。
本格的に利用するなら、ハイスペックなデバイスを用意しておいたほうがよいで
PLATEAUの基本的な使い方
PLATEAUは、公式サイトからWebブラウザを通して手軽に利用できます。専用のアプリをインストールする必要はありません。
サイト上部の「PLATEAU VIEW App」にアクセスして、下図の箇所をクリックするとPLATEAUが立ち上がります。
まずは実際にさわってみて、PLATEAUを体験してみましょう。
PLATEAUを利用してできるようになること
莫大かつ詳細な地理情報を有するPLATEAUがあれば、これまで不可能だったことができるようになります。
過去の事例などを参照する限り、以下のようなことが実現できます。
- 建物の状態の詳細を確認できる
- 各種データに基づいて色分けしてマップ化できる
- 衛星写真や色付き地図も利用できる
- 時間軸上のシミュレーションを実施できる
もちろんこれはPLATEAUができることのうち、ごく一部でしかありません。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
建物の状態の詳細を確認できる
まずセマンティクスにより、各地の建物の状態を詳細に確認できる点が挙げられます。
用途、構造、築年数などの、建物に関する多角度的な情報。
現実世界を3D上に再現したデジタルツインは多々ありますが、このようなセマンティクスも同時に参照できるサービスはそう多くありません。
セマンティクスを参照すれば、より詳細なシミュレーションやマッピングを実施可能です。
データによっては、建物のどの部分が外壁であり、床であり、屋根であるかまで記載しています。
各種データに基づいて色分けしてマップ化できる
さらに、各種データに基づいて色分けしてマッピングができるのも魅力です。
建物の高さや材質、用途はもちろん、浸水想定区域や空路、徒歩道だけをカラーリングでピックアップすることも可能。
たとえば東京都中央奥(東京駅近辺)で浸水想定区域を色付けすると、以下のようなマップになります。
浸水想定区域の例でいうなら、PLATEAUを利用することで、浸水リスクをあらかじめ回避できる、ということになります。
また地図上をドラッグすると、浸水の深さを示すスケールを表示させる、といったことも可能。
そのほかにもさまざまなデータに基づいて色付けし、マッピングすることが可能。重要な判断を下す際、大きな手助けとなるでしょう。
衛星写真や色付き地図も利用できる
PLATEAUでは、3Dモデルのみならず、衛生写真や色付き地図なども利用できます。
たとえば色付き地図なら、水域や緑地などに色がつきます。
衛星写真でも、実際の建築デザインなどがどのようになっているのか示されます。また、その場所を歩行者視点で見た場合のビジョンなどを表示することも可能です。
このようにPLATEAUではさまざまなモードを用い、デジタル上で現実世界を俯瞰できます。
時間軸上のシミュレーションを実施できる
PLATEAUは3D情報を提供するサービスではありますが、さらに時間軸上のシミュレーションも実施可能。つまり、本質的には4Dに該当する情報を提供しています。
左上のタブで時間を指定すると、現実世界で起こりうる人の流れや天体の動きが再現されます。
この場合だと、日没に合わせてビルの影の形が変化しています。
この時間軸上の動きを再現する機能により「現実世界である事象が起こったとき、どのような変化が起こるか」をより詳細かつ長期にわたって予測できるようになります。
PLATEAUのビジネス上での活用事例
PLATEAUに関しては、すでに数多くの活用事例が残されています。ここでは特に注目すべき事例を3つ解説します。
- 災害規模を予測し保険金支払いの査定を合理化/東京海上日動火災保険
- VR空間上で歩行者の動きをシミュレーション/パナソニック
- PLATEAUを活用してXR観光ツアーを提供/横浜市
PLATEAUの活用方法は、想像以上に広がっています。事例を見ることで、新しいアイデアが得られるかもしれません。それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
災害規模を予測し保険金支払いの査定を合理化/東京海上日動火災保険
災害保険を商材とする東京海上日動火災保険は、保険金支払いの査定に関してPLATEAUを活用しています。
PLATEAUのモデルを参考に、起こりうる災害の頻度や程度をシミュレーション。
そうすることで、どの程度の人員を配置するか、保険金の支払いはいくら必要か、査定はどうすべきか予想できるようになりました。
これによって、より正確な判断に基づく保険金の支払い、あるいは迅速な振り込み手続きが実施できるようになりました。
PLATEAUは、このように災害を予測し、何らかの対策を講じるうえでも幅広く活用されます。
VR空間上で歩行者の動きをシミュレーション/パナソニック
パナソニックでは、PLATEAUを使った歩行者の動きのシミュレーションを実施しています。
これは将来的に開発が期待されているリニア中央新幹線の、ベストな運用方針を定めるのが目的です。
シミュレーションでは、リニア中央新幹線発着駅となる新大阪駅をバーチャルで再現。ここにPLATEAUから逆算した歩行者の移動予測を組み合わせ、実際に人の動きを想定します。
事前に想定することで、歩行者はどの程度スムーズに流れるのか、どこに人が滞留しやすいのか、といったことが予測されました。
またPLATEAUを活用することで、VRデータなどを構築するステップやそれにかかるリソースがカットされることも明らかになっています。
セマティクス情報が充実しているPLATEAUは、このような大規模なシミュレーションで幅広く活用されています。
PLATEAUを活用してXR観光ツアーを提供/横浜市
神奈川県横浜市では、XR技術を活用した、観光バスツアーを実施しました。
観光客にXR用のゴーグルを装着させ、バスを運行。そのゴーグルに、地点に応じたXR情報を視覚的に表示させ、横浜市の魅力を伝えて楽しませることに主眼が置かれています。
そしてゴーグルから見える視界に、XR情報を重ね合わせるうえでPLATEAUが用いられました。
PLATEAUを利用したことで、現実世界と仮想情報がぴたりと重なり合い、高品質なXR体験が提供できたのです。
神奈川県横浜市らは、このようなスタンスの観光施策を継続的に実施するビジョンがあり、PLATEAUの存在によってそれが実現に近づいたといえるでしょう
PLATEAUに関するよくある質問
本記事ではPLATEAUの概要や活用事例などに関して解説しました。ここではよくある質問に回答します。
- PLATEAUの代替となるサービスはありますか?
- PLATEAUはデジタルツインかメタバースのどちらに該当しますか?
- より多くの活用事例はどこで確認できますか?
- PLATEAUの活用方法を学習するセミナーやウェビナーは開催されていますか?
- PLATEAUの代替となるサービスはありますか?
-
PLATEAUの代替となるサービスとして、たとえばZENRINの3D地図データなどが挙げられます。
PLATEAU同様に現実世界の地形や建物の位置情報を3D情報としてまとめています。
さらにZENRIN独自の「建物ポイントデータ」を組み合わせており、エリアごとのより詳細なデータを取得することが可能です。
ただしこのようなツールは、PLATEAUと異なり、有料である点に注意してください。
- PLATEAUはデジタルツインかメタバースのどちらに該当しますか?
-
考え方にもよりますが、PLATEAUはデジタルツインに該当すると考えられます。
デジタルツインの一般的な認識は、現実世界の構造や現象を、デジタル上に緻密に表現すること。だとすればPLATEAUはデジタルツインのひとつと捉えられます。
そのため、PLATEAUはメタバースには該当しないと考えられます。
メタバースはかならずしも現実世界に忠実に構成されるわけではありません。
また、ユーザー間のコミュニケーションや、サービス・データの売買といった文化もないため、PLATEAUをメタバースのひとつと考えるのは不自然でしょう。
デジタルツインについて詳しく解説している記事があるので参考にしてください。
デジタルツインとは?メタバースやミラーワールドとの違い・事例まで完全解説 | meta land デジタルツインは今後の産業を大きく変えるすぐれた技術です。混同されがちなデジタルツインとメタバースの違いを理解できます。ぜひ参考にしてください。 - より多くの活用事例はどこで確認できますか?
-
PLATEAUの活用事例は、公式サイトのUse Caseにて確認できます。
カテゴリや地域を指定して検索、抽出することも可能です。より多くの活用事例を参考にしたい場合は、こちらを閲覧するのをおすすめします。
- PLATEAUの活用方法を学習するセミナーやウェビナーは開催されていますか?
-
年間を通して、PLATEAUに関するさまざまなセミナーやウェビナーが開催されています。
これらに参加することで、PLATEAUに関する理解度を高め、新しいアイデアを得られる可能性があります。
ただし、PLATEAUのセミナーやウェビナーでは、特定の使用方法や、応用的な活用を解説するものが多い傾向です。
一般的な使い方に関しては、PLATEAU公式サイトをガイドラインとしながら、実際に使いながら身につけていくのがよいでしょう。
まとめ
本記事ではPLATEAUに関して解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。
- PLATEAUは国土交通省が主導する3D都市モデルサービス
- 現実の地図を極めて精密に再現し、さらには各種セマンティクスも搭載
- 色付けによるマッピングなども実施可能
- 無償で商用利用可能なのもメリット
- 衛星写真での表示や時間軸上のシミュレーションなども実施できる
- すでに災害予測や歩行者予測などで活用されている
3D情報を扱うサービスは多々ありますが、充実した情報を無料で活用できるPLATEAUは特に強力な存在です。
ビジネス上では、さまざまな問題を解決するうえで役立つでしょう。