Omniverseとは、NVIDIAが開発した3D構築のためのプラットフォームです。メタバース空間を製作するのに必要な機能を備えています。
しかし、
- どのような機能か詳しく知りたい
- 使うことでどれくらいのメリットがあるの?
- 導入企業は?
などの疑問も出てきますよね。
そこで、この記事ではOmniverseの特徴を解説し、使用のメリットを紹介します。導入事例も紹介するので、3D構築に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
アメリカの大手半導体メーカー。パソコンに搭載するGPU(グラフィックボード)を製造。AIで必須となるGPUの需要が急増していることから、近年とくに売上が伸びている。
メタバースとは、オンライン上でアバターを使ってコミュニケーションをとれる仮想空間のことです。
ゲームだけでなくビジネス、教育、建築など、さまざまな分野で活用されています。
メタバース内ではアバターやアイテムがNFT化され、仮想通貨を使って取引されるケースも。
Meta(旧Facebook)や、マイクロソフトなどの大手企業がメタバース事業に参入しており、世界的に注目を集めています。
メタバースについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
NVIDIAが開発したOmniverseの特徴4つ
NVIDIAが開発したOmniverseの特徴を4つご紹介します。
- 3D空間を構築するためのプラットフォーム
- メタバース上でリアルタイムコラボレーションが可能
- 多様なDCCツールと連携
- 高度なレンダリングでデジタルツインを構築
それぞれ見ていきましょう。
ユニバースは、この宇宙=ひとつの世界といった意味。オムニバースとは、すべての宇宙(ユニバース)の集合体。マルチバースとは、複数の宇宙の集合。そしてゼノバースは未知の集合体を指します。
1.3D空間を構築するためのプラットフォーム
Omniverseは、アメリカの半導体メーカーNVIDIAが開発した3D空間を構築するためのプラットフォーム。
すでに30万回以上ダウンロードされ、世界最大級のツールエコシステムをつなぐ仕組みとなっています。Omniverse上でできることは次のとおりです。
- デジタルツイン構築
- デザイン&エンジニアリング
- センサーモデル制作
- システム製造
- コンテンツ制作&レンダリング
- ロボティックス
- 合成データ作成
Omniverseでは、エンジニアやクリエイターがバーチャル空間で共同作業でき、さらには高性能なグラフィックシミュレーションなども可能です。
日本でも導入支援を行っており、オートデスク、伊藤忠、日本ヒューレット・パッカードなど複数の企業と提携しています。
2.メタバース上でリアルタイムコラボレーションが可能
NVIDIAは、メタバースをインターネットの3D進化版と考えています。
最初は、NVIDIA独自のメタバースアプリケーションを連携するためにOmniverseを構築したとのこと。
Omniverseでは、製品やCG制作過程をデジタルで一元化。メタバース上で、ほかのクリエイターとリアルタイムで共同作業ができるようになりました。
複数のソフトウエアを連携でき、ツール間でデータを転送する必要がありません。 Universal Scene Description (OpenUSD) を利用すれば、大規模シミュレーションも可能。
3.多様なDCCツールと連携
Omniverseは、さまざまなDCCツールと連携できます。
DCCツールとは、3DCG作成には欠かせないモデリング、シェーディング、ライティング、リギング、モーション作成などの機能を提供するソフトのこと。
DCCツールの種類は多く、共同作業をしたいときにツールの連携ができないと非常に不便です。その点、Omniverseは多様なDCCツールと連携しているため、作業時間や効率を大幅に短縮してくれます。
Omniverseと連携している代表的なツールには、次のようなものがあります。
- Maya
- 3ds Max
- Unreal Engine
- Blender
連携できるDCCツールは30種類以上。
作成したものをUSD(基盤となる3Dのファイルフレームワーク)で簡単に確認できたり、リアルタイムで編集できたりします。
DCCツールとは、Digital Content Creation(デジタルコンテンツクリエーション)の略称。3DCG制作に必要な機能を持つ。代表的なDCCツールに、MAYA・blender・3DS MAXなどがある。
4.高度なレンダリングでデジタルツインを構築
コラボレーションを簡単にするOmniverseのおかげで、高度で正確なデジタルツインを短期間で構築できるようになりました。
メタバース上に構築されたデジタルツインでは、生産プロセスの高度なシミュレーションができ、工程の効率化に大きく貢献しています。
現実の情報をコンピュータ上で忠実に再現する技術。もしくは、同技術で再現されたデータのこと。
Omniverse使用のメリット3つ
Omniverseを利用すれば、次のようなメリットがあります。
- 作業の効率化
- シミュレーション機能でトラブル防止効果
- コスト削減効果
順にみていきましょう。
1.作業の効率化
Omniverseでは、複数のメンバーがメタバース上で共同作業できます。同じデータを同時に編集できるので、作業効率が高まり、時間の節約にもつながります。
さらに、シミュレーションやAIによる最適化によって、今まで実際に行っていた検証や実験をデジタル上で再現。そのため多くの業務プロセスを短縮できます。
3CG作成作業はもちろんのこと、医療や物流、製造業に至るまで、分野に関わらず活用可能です。
2.シミュレーション機能でトラブル防止効果
高度なシミュレーション機能により、さまざまなシナリオをテストでき、いち早く最適なルートを選べます。Omniverseを利用すれば、現実世界で必要なテストが半減するため非常に効率的です。
AIがこれから起こる問題も予測するため、事前に対策を講じられます。トラブル発生後に対応するのと、発生前に準備しているのとでは、復帰までのダウンタイムに大きな差が出るでしょう。
3.コスト削減効果
実装実験や検証に入る前に、正確なシミュレートができるため、コスト削減にもつながります。トラブルなどが予測でき、事前に失敗を防げるためです。
別ツールの3Dデータを取り込んだり、形式の異なる3DデータをUSD形式に変換したりすることも可能です。これにより、ひとつのデータを複数名で共有しつつ作業することが可能。
さらにシミュレータ初心者でも操作が簡単なうえ、サポート環境が整っているため、導入から使用開始までに時間がかからず、人件費の削減にも効果的です。
Omniverseを導入した企業例4つ
実際にOmniverseを導入して成功した企業の例を4つ紹介します。
- BMW|デジタルツインを利用して効率化に成功
- Amazon|物流倉庫の効率化と最適化
- PepsiCo(ペプシコ)|流通センターのシミュレーション
- 英国現施行者(UKAEA)|核融合をシミュレーションで検証
順にみていきましょう。
1.BMW|デジタルツインを利用して効率化に成功
BMWグループは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環としてOmniverseを導入しました。
デジタルツイン工場を操業させ、設計からテストまでの工程を仮想空間内でシミュレーションするのを目的にしています。実際に製造に入る前に、バーチャルの世界でレイアウトやロボティックス、物流システムなどの検証ができます。
2023年3月のNVIDIA基調講演では、DXの一環として生産ネットワーク全体でAIを活用していくと紹介。2025年の新工場立ち上げの前に、構築したデジタルツイン工場で、問題のシミュレーションをしています。
この仮想工場のデモで、ロボットの配置、照明の明るさや色、奥行きなど、あらゆる最適化ができるようになりました。
2.Amazon|物流倉庫の効率化と最適化
顧客注文の2/3以上がロボットによって処理されているAmazon。倉庫の中には膨大な製品があり、その管理とロボットシステムを倉庫建設前からシミュレーションしておく必要があります。そこでOmniverseを利用して、デジタルツインを構築し、倉庫内の最適化を検証したわけです。
デジタルツイン上の巨大な倉庫内は現実と全く同じと思えるほどに忠実。
デジタル上でテストしたうえで現実の倉庫にリリースするため、問題を事前に察知でき、不具合への対応も最小限に抑えられるのです。
3.PepsiCo(ペプシコ)|流通センターのシミュレーション
1日に200の地域市場に10億個の製品を流通させるPepsiCo(ペプシコ)は、600以上の配送センターを抱えています。その配送がスムーズに行われるよう、Omniverseと、NVDIA社のAI制御ソフトウェアMetropolisを使用して、デジタルツイン工場を構築し、シミュレーションを行っています。
Metropolisは、ベルトコンベアの速度を調整し、渋滞が起こらないよう監視。加えてFleet Commandを活用することで、全国への配送もスムーズに行っているとのことです。新しい商品が導入された場合もフォトリアルな合成データを作成し、AIのリアルタイムトレーニングに役立てています。
NVIDIAのAIライフサイクル管理ソリューションツール。リアルタイムAI監視、AIアプリケーションの自動デプロイ、AIアプリケーションの自動助ペアリングなどを実施できる。
4.英国原子力公社(UKAEA)|核融合をシミュレーションで検証
UKAEAとは、イギリスの原子力発電開発計画のために設立された政府機関で、核融合エネルギーの研究開発を行っています。
大規模な核融合炉の設計と開発を加速させるため、Omniverseのデジタルツインシミュレーションを利用。
多くの部品や可動部分を含めたシミュレーションであるうえ、科学、エンジニアリング、設計などの専門家が関わっています。複雑になりがちな共同作業も、Omniverseによってかなり円滑になっています。
Omniverseに関するQ&A
NVIDIAのOmniverseに関する、よくある質問を集めました。
- Omniverseを導入するために必要なスペックは?
- Omniverseの契約価格は?
- Omniverseを導入する手順は?
順にみていきましょう。
- Omniverseを導入するために必要なスペックは?
-
Omniverseを導入するために必要なスペックは下記のとおりです。
グラフィックカード NVIDIA RTX 2080、Quadro RTX 5000、またはそれ以上 OSサポート 64ビット版Windows 10 CPU Intel Core i7、AMD Ryzen RAM 16GB以上 ストレージ領域 500GB以上 GPU 10GB以上 VRAM 6GB以上 以上の表からもわかるように、高度な3DCG構築を行うため、比較的ハイスペックなPCが必要です。
- Omniverseの契約価格は?
-
Omniverseのダウンロードは無料です。
ただし、NVIDIA Omniverse Enterprise の場合は1人年間5,000ドル(約750万円)から。
Omniverse Cloud の利用料は年間9,000ドル(約1350万円)からとなっています。
- Omniverseを導入する手順は?
-
Omniverseを導入する前に、パソコンのスペックが要件を満たしているかを確認しましょう。スペックについてはQ1を参考にしてください。
そのうえで次の手順で導入していきましょう。
- NVIDIAの公式サイトからOmniverse Launcherをダウンロード
- Omniverse Launcherをインストール
- Omniverse Launcherを起動し、必要なアプリケーションをインストール
- NVIDIAのアカウントを作成
- Omniverseにログイン
- Omniverseを使用するためのハードウェア要件を満たしていることを確認
- Omniverseを使用するためのソフトウエア要件を満たしていることを確認
ダウンロードサイトは以下です。
ダウンロードは個人なら無料ですが、氏名やメールアドレスの登録が必要です。
またインストールの際にはNVIDIAのアカウントが必要になるため、先に作っておきましょう。
Chromeではダウンロードできなくても、Edgeでならできたという例もありますので、何度か試してみましょう。
まとめ
本記事では、NVIDIAのOmniverseについて特長と事例を詳しく解説しました。
最後にもう一度、それぞれ確認してみましょう。
- Omniverseは3DCGをメタバース上で構築するためのプラットフォーム
- さまざまなDCCツールと連携可能
- 精巧なデジタルツインを構築
- リアルタイムでシミュレーションが可能
- トラブルの予測と対応をAIがサジェスト
- さまざまな企業で導入されている
- ダウンロードは無料
NVIDIAのOmniverseは、単なる3DCGで構築された世界ではなく、現実と同じ精度でシミュレーションを行う場でもあります。現に、核融合のシミュレートなど国家施策にも必要とされるなど重要な役割を担っています。
今後、NVIDIAのOmniverseによって、3DCGの構築速度はさらに早まることでしょう。個人でも使用できるので、3DCG作成に関わっている方は、ぜひお試しください。