メタバースを教育分野で活用する方法やメリットは?活用事例を紹介

スタンフォード大学や角川ドワンゴ学園など、世界中の教育分野でメタバースが活用されるようになりました。

メタバースが教育分野で活用されていると聞いて以下の疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

  • 教育分野でメタバースはどのように使われているか知りたい
  • 学校での導入事例を知りたい
  • 企業での導入事例を知りたい

結論からお伝えすると、メタバースと教育は相性がよく、企業や学校法人が導入しています。

本記事では、メタバースを教育分野で活用する方法やメリット、活用事例などを解説します。

それぞれわかりやすく解説していますので、興味のある方は最後までご覧ください。

そもそもメタバースとは?

メタバースとは、オンライン上でアバターを使ってコミュニケーションをとれる仮想空間のことです。

ゲームだけでなくビジネス、教育、建築など、さまざまな分野で活用されています。

メタバース内ではアバターやアイテムがNFT化され、仮想通貨を使って取引されるケースも。

Meta(旧Facebook)や、マイクロソフトなどの大手企業がメタバース事業に参入しており、世界的に注目を集めています。

メタバースについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。

目次

教育現場でメタバースを活用する理由とメリット

大学の講義を受けている人形

近年注目が集まっているメタバースですが、ゲームや仮想空間でのコミュニケーション、ビジネスなどさまざまな分野で利用されています。

学校や企業の教育分野でもメタバースを導入することが増えています。

メタバースを活用すれば、地理的や経済的、そのほかの問題で学校へ通えない人にも教育の場を提供することが可能です。

さらに仮想空間を活用することで、現実で再現できないような状況下でのリアルな体験ができることもメタバースの大きな特徴です。

ここからは、教育現場でメタバースを活用する理由やメリットについて解説します。

  1. 教育目的でメタバースで注目される理由とは
  2. 現実世界では体験できないことを学べる
  3. バーチャル空間において不登校対策ができる
  4. 離れた場所でも新人社員研修ができる

1.教育目的でメタバースで注目される理由とは

教育目的でメタバースが注目される理由には、メタバースの将来性の高さと、教育分野との相性の良さが挙げられます。

メタバースは、FacebokがMetaに社名変更し、年間約1兆円の投資計画を発表したことをきっかけに、大きく注目を集めました。

国内ではKDDIやNTTドコモなどの大手企業もメタバースに参入しており、世界的に注目されています。

また、メタバースを使えば3Dの仮想空間でテキストでは表現できないようなコンテンツをわかりやすく表示可能です。

もちろん危険な環境をはじめとした通常ではむずかしい状況の再現も可能。これらの理由から、教育や研修に多く使われています。

2.現実世界では体験できないことを学べる

メタバースを活用することによって、現実世界では体験できないことを学べます。

たとえば、現実の世界では扱えないような危険物質の実験を行い、どのように危ないかを生徒に体験させることが可能です。

また、近くにいない人とコミュニケーションをとれることもメタバースの大きな特徴です。

メタバースで世界をつなぐことによって、世界との交流を深める機会が増えています。

2022年11月には、「大学等におけるオンライン教育とデジタル変革に関するサイバーシンポジウム」において、林 雅子氏のオンライン講義が行われました。

動画内ではメタバースで講義を行うことにより、世界中の生徒とディスカッションなどができると解説されています。

3.バーチャル空間において不登校対策ができる

メタバースを使えばバーチャル空間で授業を受けられることから、不登校対策が可能です。

小、中学校での不登校児童生徒数は2021年に244,940人となり前年の196,127人と比較して大幅に増えています。

児童生徒1,000人あたりの不登校児童生徒数は25.7人。9年連続で増加中です。

不登校児童生徒数の推移
出典:令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(文部科学省)

近年の日本は不登校対策を急務としていますが、十分な対応ができていないのが現状です。

そこで、メタバースを活用することで、不登校児童でも教育を受けられる場を提供するケースが増えています。

例えばNPO法人カタリバは、メタバースを使った不登校支援プログラムである「room-K」を運営して、不登校の子供たちに学ぶ場を提供。

メタバースを使った不登校支援プログラムである「room-K」
出典:オンラインで不登校児を支援。メタバース空間が子どものもう1つの「居場所」に(日本財団ジャーナル)

room-Kのプログラムは以下の4種類です。

  • 5教科を学べる強化ワークショップ
  • クラブ活動
  • 学習支援プログラム
  • 居場所型プログラム

NPO法人カタリバではメタバースを通して学ぶだけでなく、ほかの生徒やメンターなどとコミュニケーションをとる機会を提供中。

生徒同士での意見交換や共同作業、コミュニティへの参加もできます。

メタバースを活用することによって、場所にとらわれず豊かな学習体験をできるほか、人間関係の構築もできるのです。

4.離れた場所でも新人社員研修ができる

メタバースを導入することで、離れた場所でも新人社員研修ができます。

従来は離れた支店から社員を集めるための、交通費や時間がかかっていました。

しかし、仮想空間を活用することで簡単に同じ場所に社員を集めて研修を進めることが可能です。

現実世界と同じく、ほかの参加者との交流やグループ作業を通して新入社員の成長促進が期待できます。

また、メタバースを導入することで特定のスキルを持った人を集められます。

パソナグループでは、仮想空間をつくることで特定のスキルを持った人を集め、雇用創出を目的とした事業を進めようとしているのです。

学校法人でのメタバース活用事例3選

メタバースは世界中のさまざまな学校で導入されています。

スタンフォード大学や角川ドワンゴ学園、長岡工業高等専門学校など世界の学校がメタバースを活用中。

ここでは、メタバースを活用している3校の取り組みを詳しく紹介します。

  • スタンフォード大学
  • 角川ドワンゴ学園N中東部・N/S高等学校
  • 長岡工業高等専門学校

1.スタンフォード大学|Virtual People

スタンフォード大学|Virtual People
出典:Stanford course allows students to learn about virtual reality while fully immersed in VR environments(スタンフォード大学)

スタンフォード大学は、Oculus Quest 2とVR環境を使った学習コースであるVirtual Peopleを開始しました。

従来のテキストでの学習と比較して直感的に学習できるため、よりリアルな学びが可能になりました。

たとえば、歴史の授業では歴史的なイベントにアバターを使って立ち会うことで、歴史的な偉人とコミュニケーションをとれます。

メタバース上でさまざまな体験をすることでより深い理解を得られ、効果的な学習ができるのです。

2.角川ドワンゴ学園N中東部・N/S高等学校|メタバース空間での授業

角川ドワンゴ学園N中東部・N/S高等学校
出典:角川ドワンゴ学園N中東部・N/S高等学校

角川ドワンゴ学園ではVR教育が進んでおり、生徒全員がVRヘッドセットであるMeta Quest 2を使ってメタバース空間での授業を受けられます。

バーチャル空間で授業を受けられるほか、世界地図やグラフなどに触れて能動的に学べることが特徴です。

バーチャル空間でのシミュレーションや実験などを通して、授業への積極的な参加や深い理解を促します。

また、仮想空間でリアルな体験をすることから、生徒たちの興味や関心を高める効果もあります。

Meta(旧Facebook)と提携

角川ドワンゴ学園はMeta(旧Facebook)と提携
出典:角川ドワンゴ学園N中東部・N/S高等学校

2022年9月に角川ドワンゴ学園N高等学校、S高等学校はMeta(旧Facebook)と提携しました。

ARやVRにおけるクリエイター育成が目的で、角川ドワンゴ学園では学習プログラムを提供。

さらに、両者はプロジェクト型学習やオンラインワークショップなどを予定するなど、今後人材育成に力をいれていくと発表しています。

参考:角川ドワンゴ学園N中東部・N/S高等学校

3.長岡工業高等専門学校|WHITE LAB

長岡工業高等専門学校|WHITE LAB
出典:WHITE LAB(長岡工業高等専門学校)

長岡工業高等専門学校では、高等専門学校では初めてとなる3Dメタバース空間であるWHITE LABを展開中。

WHITE LABには次の4つの部屋があります。

  • 学生同士で話し合いをできるグループワーク室
  • 打ち合わせをできるミーティングルール
  • 授業を受けられるセミナールーム
  • 学生同士で対話できるラウンジ

また、イベントによっては生徒だけでなく誰でも参加できるものも。

学校での教育を通して、誰でもメタバースに触れられるような環境を提供しています。

参考:WHITE LAB(長岡工業高等専門学校)

地方自治体や企業教育でのメタバースを活用事例3選

メタバースは学校だけでなく、地方自治体や企業教育にも導入されています。

地方自治体では、メタバースを活用して不登校対策をはじめとする社会の課題解決につなげています。

また企業では、仮想空間でのシミュレーションや実践的な学びを研修に導入することで、効率的な教育効果を得ているケースも。

ここでは、地方自治体や企業教育にメタバースを導入している具体例を3つ紹介します。

  • 北海道帯広市|ひろびろチョイス
  • 凸版印刷|新人社員研修
  • JR東日本|事故現場をシュミレーションした研修

1.北海道帯広市|ひろびろチョイス

北海道帯広市|ひろびろチョイス
出典:アバター動かし勉強、出席扱いに帯広市、不登校の児童生徒向けに仮想教室(北海道新聞)

北海道帯広市のひろびろチョイスは、仮想空間で不登校の小中学生が学べる特別な場所です。

ひろびろチョイスでは、生徒たちは自身のアバターを動かして授業に参加でき、在籍している学校が出席扱いとなります。

つまりオンラインからでも学校のカリキュラムに沿った進捗の維持が可能というわけです。。

ひろびろチョイスの様子
出典:「仮想空間」が不登校の子どもの居場所に(NHK)

参加する学生はタブレット端末を使って、授業を受けたりほかの参加者と交流できたりします。

このように、ひろびろチョイスは不登校児童にとって大きな壁となる、物理的に学校に通うことや、授業についていけなくなる事態をメタバースで解消しています。

2.凸版印刷|新人社員研修

凸版印刷|新人社員研修
出典:凸版印刷、VRなどを活用し新入社員研修を完全オンラインで実施(iotnews)

凸版印刷は、2023年より新入社員研修を4年連続でオンラインでおこなうと発表しました。

研修は従来から必要とされてきた知識以外にも、VRコンテンツに関するスキルの習得も目的としています。

新入社員一人ひとりがVRゴーグルを使って、メタバース上でのコミュニケーションを体感。

実際の製造工程を機械オペレーターの目線で確認できるほか、危険な箇所の把握も可能です。

3.JR東日本|事故現場をシュミレーションした研修

JR東日本|事故現場をシュミレーションした研修
出典:VR技術を活用した安全教育ソリューションをJR東日本へ納入(SoftBank)

JR東日本では、鉄道の3大労災である「接車」「感電」「墜落」に関連する事故をメタバースで再現して研修に活用しています。

ソフトバンクが開発した安全教育ソリューションを活用して、車両センターにおいて転落や接触などの事故をVR映像で疑似体験します。

見聞きするだけでなく、メタバースを使ったリアルな疑似体験をすることで、事故防止意識の醸成や安全な作業環境への理解を深めることが可能です。

教育現場でのメタバースに関するQ&A

教育現場でのメタバースに関するよくある質問についてまとめました。

  • なぜ教育目的でメタバースが注目されるのですか?
  • 実際に学校でもメタバースは導入されていますか?
  • 企業でもメタバースは導入されていますか?
  • 他に教育現場でメタバースに期待できることはありますか?
  • メタバースを使ったSTEAM教室はありますか?

気になる項目をチェックしてみましょう。

なぜ教育目的でメタバースが注目されるのですか?

教育目的でメタバースが注目される理由には次の2点が挙げられます。

  • メタバースそのものの将来性が高い
  • 仮想空間を活用するメタバースと教育の相性が良い

2021年10月Facebookが社名をMeta Platformsに変更しました。コーポレートビジョンとしてメタバースを打ち出したわけです。

主力のサービスであるFacebookもARやVRと関連させるとしており、メタバースの将来性に関心が高まるきっかけとなりました。

また、時間や場所を問わず利用できるメタバースと教育の相性が良い点も忘れてはなりません。

遠く離れた場所で行われている授業にも、いつでもどこからでも参加できることで、教育の門戸が大きく開かれました。

実際に学校でもメタバースは導入されていますか?

高校や大学、また海外でもメタバースは導入されています。

バーチャル空間で授業を受けられるほか、VRゴーグルを使うことで従来のオンラインレッスンよりも能動的に学べます。

授業以外にも、オープンキャンパスや運動会など学校行事の開催も可能で、学校自体をバーチャル化しているケースも。

仮想空間を利用することで不登校問題などの社会問題の解決にもつながります。

企業でもメタバースは導入されていますか?

企業でも新人研修をはじめとする教育にメタバースが導入されています。

離れた場所の人と交流したり、VRコンテンツを使ったりするなどさまざまな方法でメタバースを活用中。

メタバースを研修に導入することで、業務内容のシミュレーションを通じて実践的なスキルや知識を身につけられます

さらに、起こりえる事故や危険な状況などを仮想空間で再現することによって、効果的な教育環境を構築できるようになるのです。

メタバースはさまざまな業界で企業の研修において、今後活用される機会が増えることでしょう。

他に教育現場でメタバースに期待できることはありますか?

メタバースを導入することで、不登校対策や国際交流などさまざまなことが可能になります。

メタバースを活用することで、学校に通えない子供たちに教育の機会を提供したり異なる国や文化の人々との異文化交流を通して国際人材の育成にもつながります。

今後より豊かな教育環境を構築するために、メタバースの需要が高まることが見込まれています。

メタバースを使ったSTEAM教室はありますか?

イトーキでは、メタバースを使ったSTEAM教室を運用中です。

メタバースを活用することで、海外の生徒とアバターを使ってコミュニケーションをとったり研究発表会をしたりすることが特徴です。

従来のWeb会議システム利用時と比較して、コミュニケーション能力やクリエーション力が身についたことがわかっています。

参考:イトーキ、文部科学省の採択事業によりメタバースを活用した「バーチャルSTEAM教室」を開発し、静岡聖光学院にて実装(PR TIMES)

まとめ

この記事では、教育現場へのメタバース導入理由や事例などについてまとめました。

最後に重要な点をおさらいしておきましょう。

  • 学校で幅広くメタバースが導入されている
  • 地方自治体や企業でもメタバース導入が進んでいる
  • 現実世界ではできないような研修ができる
  • 遠く離れた人とコミュニケーションがとれる

メタバースは教育分野と相性がよく、学校や企業などさまざまな目的で活用されています。

仮想空間で現実と同じような環境を作れることから、遠く離れた場所にいる人と交流をしたり現実では危険なことでも体験できたりします。

今後さらに教育分野において、さまざまなメタバースの活用方法が増えていくでしょう。

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この記事を書いた人

「Metaland編集部」は、Web3.0、メタバース、AIといった最新のトピックを皆様にお届けします。専門知識がない方でもご心配は不要です。情報を深くかつ分かりやすく解説することを重視し、新しいデジタル時代への案内役となることを目指しています。一緒に新たなステップを踏み出しましょう!

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