近年で普及が進んでいるメタバース。VRやブロックチェーンなどと組み合わせられ、企業・個人問わず幅広く利用されています。
そして観光や旅行業界でも活用されるようになりました。本記事では、以下の点を解説します。
- 観光や旅行業界でどのようにメタバースが活用されているか
- メタバース観光や旅行では、どんな体験ができるか
- どのようにメタバース観光を実現している例があるか
- メタバース観光を実現する際の初期費用ややり方
メタバースでの観光に興味を持っている人はもちろん、観光業界関係者にとっても必見の内容です。ぜひご参考にしてください。
メタバースとは、オンライン上でアバターを使ってコミュニケーションをとれる仮想空間のことです。
ゲームだけでなくビジネス、教育、建築など、さまざまな分野で活用されています。
メタバース内ではアバターやアイテムがNFT化され、仮想通貨を使って取引されるケースも。
Meta(旧Facebook)や、マイクロソフトなどの大手企業がメタバース事業に参入しており、世界的に注目を集めています。
メタバースについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。
メタバース観光とは?
まずメタバースの意味やメタバース観光の詳細についてご紹介します。
そもそもメタバースの意味をおさらいしておこう
メタバースとは、インターネット上にある仮想空間のこと。そしてそのなかに社会や経済があり、ユーザー同士がさまざまな形で交流できます。
例えば、メタバースのひとつであるDecentralandでは、アバターと呼ばれる自分の分身を自由に動かして、遊んだりコミュニケーションを取ったりできます。
またいわゆるNFTなどを売り買いし、利益を得る人も増えてきました。
メタバース観光=VRを使ったトラベル体験
この技術を観光に活用したものが「メタバース観光」です。
具体的には、メタバース観光では、VR(バーチャルリアリティ)を活用して、仮想の旅行体験を提供します。
例えば、メタバース旅行会社「Travel DX」では、VRを通して世界中の観光地を訪れることが可能。さらに360度の景色を見渡せる没入感を楽しめます。
これを自宅にいながら体感できるのがメタバース観光の最大の特徴です。
観光業界が注目する3つの理由
観光業界が、メタバースに注目する理由は大きく分けて以下の3つです。
- コロナ禍でも感染リスクのない旅行を提供できる
- 旅行費用を低減できる
- 5Gにより旅行先の映像を高画質で楽しめる
まずメタバース観光は外出しないため、感染リスクがほぼありません。これはコロナ禍で打撃を受けた観光業界にとって大きなメリットです。
また実際の旅行よりも低価格で旅行体験を提供できるため、ターゲットとなる顧客層も広がります。
さらに5Gによる高速・大容量通信で、実際の景色と遜色がない高画質な映像を提供できるようになりました。
これらが、観光業界がメタバースに注目する主な理由です。
論文でもメタバース観光の可能性が見出されている
日本政策投資銀行が発表した論文「XR・メタバースは観光振興にいかに活用できるか」でも、メタバース観光の可能性が見出されています。
本論文では、メタバース観光は、現地の魅力を高める効果があるとされます。同時に現代社会で多様化する観光ニーズに対応できるとの記載もありました。
一方で、実際の観光地とメタバースがどう協業するかが課題であるとも述べられています。
将来的には、地方自治体や観光業者が、積極的にメタバースを観光振興に取り入れていくことが期待されています。
「メタバース観光の出現により、従来の観光業はなくなるのか?」と感じる人もいるでしょう。
実際のところ、メタバース観光はあくまでもVRであり、その体験価値には限界があります。よって現地での旅を提供する従来の観光がなくなるほど代替されることはないでしょう。
むしろVRやメタバースは、「観光地の魅力を高めるツール」や「現実世界の観光地に送客するためのツール」として活用されると予想されます。
各地の観光協会もメタバース化に動いている
民間の観光関連会社だけでなく、地方自治体の観光協会もメタバース化に動いています。
たとえば、東京都渋谷区は「バーチャル渋谷」なる施設を仮想空間上に構築。
同サービスは、渋谷区の公認配信プラットフォームで、スマホやPC、VRゴーグルで利用できます。
過去にはサッカー日本代表の試合のパブリックビューイング、著名人によるトークショーなど、さまざまなイベントが開催されました。
その他にも、バーチャル原宿やバーチャル大阪なども登場。今後も日本各地がメタバース化することが見込まれます。
メタバース観光のメリット5つ
メタバース観光のメリットは、大きく分けて以下の5つです。
- 自宅にいながら旅行や観光を楽しめる
- 観光に行けない人もターゲットにできる
- 通常は見せられない場所も観光してもらえる
- メタバースなら事故・事件のリスクがほぼない
- ファンタジー的な世界も観光できる
メタバース観光のメリットについて知ることで、さらに深い理解を得られるはずです。
順に見ていきましょう。
1.自宅にいながら旅行や観光を楽しめる
自宅にいながら気軽に旅行や観光が楽しめることは、メタバース観光の最大のメリット。
実際の旅行では、現地への移動時間も考慮して旅行計画を立てる必要があります。しかしメタバース観光では、時間もお金もさほどかからないため、気軽に旅行ができます。
これによって多くの場所へ出かけることも可能に。1日でフランス▶︎ドイツ▶︎米国▶︎フィリピンと世界中を飛び回ることもできます。
せっかく時間とお金をかけて旅行に行っても、天気に恵まれず、観光を満喫できなかった経験がある人もいるでしょう。
メタバース観光では、常にベストな天候のもと旅を楽しめます。
日程調整も、現実での旅行ほどむずかしくありません。
このように、天候や日程を気にしなくて済むのもメタバース観光の魅力の1つです。
2.観光に行けない人もターゲットにできる
メタバース観光では、金銭的、時間的な都合で旅行を諦めていた顧客層もターゲットにできます。
また、お年寄りや身体障がい者など、現実での旅行がむずかしい人にも体験を提供することが可能。
ビザや国籍の問題で渡航が困難な人も、メタバース観光なら問題ありません。
新しい層をターゲットにできるのもメタバース観光のメリットの1つです。
3.通常は見せられない場所も観光してもらえる
現実ではアクセスが困難な場所でも、メタバースなら何の問題もなく観光できます。
例えば、絶海の孤島である沖ノ鳥島、一般人の立ち入りが禁じられている軍艦島などにもアクセス可能。
断崖や洞窟などの危険な場所でも問題ありません。このように現実ではアクセスがむずかしいエリアも、メタバース観光なら存分に楽しめます。
4.メタバースなら事故・事件のリスクがほぼない
現実での旅行では、さまざまな事故・事件のリスクがともないます。
メタバース観光なら、その危険はほぼありません。きわめて安全に旅行を楽しめます。
旅行先を選ぶとき「行きたいけれど、治安の関係上行けそうにもない」と思ったことはないでしょうか?例えば2023年現在ロシアと戦争状態にあるウクライナは、とても行けそうにありません。
しかしメタバース観光なら、こういった場所にも安全に立ち入れます。
5.ファンタジー的な世界も観光できる
実際に存在する場所だけでなく、創作されたファンタジー的な世界を観光することも可能。
例えば、メタバースのひとつである「cluster」では、クリエイターが創作したオリジナルのバーチャル空間を旅できます。
るでゲームの中に入り込んだかのような景色を体感できるのはメタバース観光だから可能なことです。
デメリットは初期費用と技術的ハードルの高さ
メタバース観光には、メリットだけでなくデメリットも存在します。初期費用と技術的ハードルの高さです。
初期費用は、どの程度のクオリティを求めるかによりますが、最低でも数千万円ほど必要でしょう。
さらには観光地をメタバース化しなければいけません。そしてVRに適応させ、画質も美麗である必要があります。
観光を楽しませるために、VRガイドなどの用意も必要です。
これらを実現するには相当なレベルの技とノウハウが求められます。
初期費用と技術的ハードルは、メタバース観光を実現するうえで大きな壁となるでしょう。
メタバース観光の事例
ここではメタバース観光の事例を5つ紹介します。
- 山形新聞社
- 西日本鉄道
- SBINFT
- TravelDX
- Google Earth VR
実際の事例を見ることで、自社活動のご参考にしてください。
山形新聞社/メタバースで観光地と名産物を堪能
山形新聞社では、VR環境で山形県の観光地や名産品紹介を楽しめる「街なかメタバース」のサービスを提供しています。
本サービスでは、専用のゴーグルとリモコンを操作することで、山形県の観光地である古刹の山寺(山形市)や最上川舟下りを大迫力の360度視点で体験できます。
さらには山形名産の日本酒などの製造工程も見学可能。
同サービスは、山形県のDX推進にも大きく貢献しています。
西日本鉄道/「にしてつバース」で電車やバスに乗れる
西日本鉄道は、車両の運転席に乗って、運転を疑似体験できる「にしてつバース」を提供。
普段は座れない運転席に座り、さらに運転まで体験できるのは、鉄道ファンや子供には魅力的なコンテンツです。
また同空間では通常見られない車内の様子や、保線作業中の写真なども展示しています。
さらにサービスのもう一つの軸として、NFTを利用したデジタルコンテンツの販売も行っています。
SBINFT/「バーチャル白浜」で地域活性化
SBINFT株式会社は、ブロックチェーンを活用したプラットフォーム事業を行っている企業です。
同社は、和歌山県白浜町で開催されるストリートアートプロジェクト「POW!WOW!JAPAN」をバーチャル再現して、地域の活性化を目指しています。
本プロジェクトでは、アートや音楽、ダンスなどの多様なカルチャーを体感可能。
プロジェクトをVRで体験するだけでなく、新たな文化交流の場としても活用されています。
このプロジェクトに加えて、プラットフォーム内でのNFT作品の出品や販売も実施。
近年は都市部への人口一極集中などで、地方創生の必要性が高まっています。
SBINFTが手掛けるこの地方創生プロジェクトは、再現性も高く、多くの地域の参考になる事例だと言えます。
TravelDX/メタバースで夢の世界旅行を実現!
TravelDXは、メタバースの世界旅行を提供しています。
VR映像で表示されるガイドとともに、360度ビューの環境で各地を巡ることが可能。
現地のガイドが話す外国語はAI翻訳され、日本語として出力することもできます。
2023年4月時点で、世界100ヶ国、1000ヶ所のオンラインツアー映像を収録。TravelDXだけで世界中を旅できます。
Google/Google Earth VR/無料で世界を歩き回る
Google Earthにも、VR機能が追加されました。
対応するVRゴーグルがあれば、世界中の街や自然、建物などを自由に飛び回れます。
Google Earthは顧客側に利用料金が発生しません。
「お金をかけずに海外旅行気分を味わう」という夢が、VRで実現しています。
まとめ
本記事では、メタバース観光の定義や実際の事例などをご紹介してきました。
最後に重要な点をおさらいしておきましょう。
- メタバース観光=VRを使ったトラベル体験
- 各地の観光協会もメタバース化に動いている
- メタバース観光のメリットは自宅にいながら観光が楽しめること
- デメリットは初期費用と技術的ハードルの高さ
- 無料で世界中をVR体験できるサービスも登場
メタバース観光はすでに実用化され、そのクオリティも急成長しています。これまでの旅行の概念を覆すさらに革新的なサービスが生まれるかもしれません。
また、Google Earthのように、無料で世界各地をVRで旅できるサービスも存在します。今後は、どのように他社対比の付加価値をつけられるかが、観光業各社の課題となりそうです。