Microsoftのメタバース事業はどうなる?レイオフやAIとの関係、ゲーム会社買収の歴史を解説

メタバース事業に力を入れると公言し、数年かけて関連企業の買収や他社との連携を強めてきたMicrosoft。

しかし突然大規模なレイオフをはじめるなど、メタバース事業を取り巻く環境は常に変化しています。

本記事では、買収や撤退を繰り返しているMicrosoftが、今現在どうなっているのかわかりやすくまとめています。

主要なできごとを把握し、これからの展開についての予測の精度を高めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

そもそもメタバースとは?

メタバースとは、オンライン上でアバターを使ってコミュニケーションをとれる仮想空間のことです。

ゲームだけでなくビジネス、教育、建築など、さまざまな分野で活用されています。

メタバース内ではアバターやアイテムがNFT化され、仮想通貨を使って取引されるケースも。

Meta(旧Facebook)や、マイクロソフトなどの大手企業がメタバース事業に参入しており、世界的に注目を集めています。

メタバースについて詳しく解説している記事があるので、参考にしてください。

目次

Microsoftのメタバース事業は2023年に大きな変革期を迎えた

2023年現在、Microsoftはメタバース事業に関するこれまでの取り組みをひっくり返すようなニュースを、いくつも発表しました。

数あるニュースのうち、現在の状況と今後を予測するために知っておきたいトピックは、次の5つです。

  • 10,000人のレイオフ、メタバース事業も一部解散
  • メタバース事業の予算の一部をAI事業に回す予定か
  • メタバースと関連の深いXR事業に継続投資を宣言
  • Microsoft は Meta との連携も報道している
  • メタバース・AI・XRの鍵は既存事業Azureか

それぞれ順番に確認していきましょう。

10,000人のレイオフ、メタバース事業も一部解散

画像引用:マイクロソフト エンタープライズ チーム

2023年1月、Microsoft の公式ブログで公表された記事が話題となりました。

同社が10,000人以上のレイオフを予定していることや、一部事業の売却を予定していることが明らかになったからです。

(参考記事:Subject: Focusing on our short- and long-term opportunity

記事の内容で明らかになったのは次の3つ。

  1. 2023年3月末までにコスト最適化のために10,000人をレイオフする
  2. 将来のプラットフォームにむけた長期投資を継続する
  3. レイオフ対象の従業員には尊厳と敬意をもって対応する

レイオフをきっかけにインダストリアルメタバースの開発チームが解散され、Microsoft はメタバース事業から撤退するのかといった憶測が飛び交いました。

インダストリアルメタバースとは?

画像引用:産業での活用が進むメタバース

インダストリアルメタバースは産業で活用されるメタバースです。

3Dモデリングやシミュレーションを通じて、製品設計やプロセス最適化が行われ、省資源・効率化を目指します。

一般人がゲームなどを楽しむコンシューマーメタバースとは別の産業として、注目されています。

メタバース事業の予算の一部をAI事業に回す予定か

画像引用:search with a new AI-powered Microsoft Bing and Edge

大規模レイオフのニュースの後、Microsoft はメタバース事業をあきらめ、AI事業に注力するのではないかという考察が増えています。

Microsoft とパートナーシップを結んでいるOpenAI社が開発したAI、ChatGPT や GPT4 が世間を賑わせているからです。

2023年3月には、Microsoft が提供するウェブブラウザの Edge に AI を搭載した「Bing」が公開されました。

さらに、Microsoft365 に AI を搭載する Copilot のリリース予定を発表するなど、スピード感のある展開を見せています。

Copilotとは?

Microsoft365(WordやExcel)にAIを搭載し、文章やスライドの作成、計算を効率化できる。

メタバースと関連の深いXR事業に継続投資を宣言

画像引用:農業経営改革へ、現場から始まる農業 DX HoloLens 2 の向こう側に 広がる農業の未来

Microsoft が現在 AI に注力しているのは確かですが、メタバース事業も引き続き新しい動きを見せています。

2023年3月6日には、ヘッドセットデバイスの HoloLens 2 を使い、現実にデジタル情報を重ね合わせるXRのプロジェクトの事例が公開されました。

記事内では実際の操作シーンや映像の画像が公開され、すでに実用レベルであるとのことが伺えます。

画像引用:農業経営改革へ、現場から始まる農業 DX HoloLens 2 の向こう側に 広がる農業の未来

メタバースの事業規模を見直した結果、力を入れるべきXRの事業中心の方向性に切り替えたとも考えられます。

MicrosoftはMetaとの連携も報道している

画像引用:マイクロソフトと Meta、未来の仕事と遊びの没入体験の提供で連携

Microsoft のメタバース事業で忘れてはいけないのが、Metaとの連携です。

仕事にも遊びにもより深い没入体験を提供するためとして、2022年10月に両社が手を組んだことがニュースになりました。

具体的には、Microsoftが提供するMesh for Microsoft Teams を Meta が提供するVRデバイス  Meta Quest に導入するというもの。

画像引用:マイクロソフトと Meta、未来の仕事と遊びの没入体験の提供で連携

Microsoft と Meta、2社ともAIのニュースが多くなっていますが、メタバース事業での連携が解消されたわけではありません。

ChatGPTの登場でAIの話題が盛り上がったように、なにかのキッカケでメタバース事業が注目される可能性もあります。

これまでと変わらず、メタバース事業からは目が離せません。

メタバース・AI・XRの鍵は既存事業Azureか

画像引用:Azure

MicrosoftがメタバースやAI、XRの事業に力を入れているのは、既存のクラウドコンピューティング事業である Azure のシェア拡大を目指しているからだと考えられています。

クラウドサーバー(IaaS)のシェア状況は現在、Amazon社のAWSが1位、MicrosoftのAzureは2位です。

下記画像は、2021年までのシェアをグラフにしたものです。

画像引用:Huge Cloud Market Still Growing at 34% Per Year

Microsoft社が徐々にシェアを広げている現在、メタバースやAIなど大規模なサーバーが必要となる事業によって、さらなる需要を見つけようとしているのでしょう。

メタバース・AI・XRの後押しがあれば、AWSを抜いてシェア1位の座につく可能性も十分にあります。

Microsoftはメタバース事業のために企業を買収している

画像引用:マイクロソフト、Activision Blizzard の買収を発表

Microsoftは2014年から、着々とメタバース事業に関連するゲーム会社を買収しています。

とくに業界を騒がせたのは以下の3つです。

  • 687億ドルでActivision Blizzardを買収交渉中
  • Minecraftで有名なMojangを2014年25億ドルで買収
  • ベセスダの親会社ゼニマックス・メディアも傘下に

それぞれ、当時の状況なども振り返りながら掘り下げていきましょう。

1.687億ドルでActivision Blizzardを買収交渉中

画像引用:Activision Blizzard

CALL OF DUTY(コールオブデューティー)やDIABLO(ディアブロ)など、数々のヒットタイトルをもつActivision Blizzard社。

同社の買収のために、Microsoftは687億ドル、日本円にすると約8兆円という金額で交渉を進めています。

買収が成功すれば、ゲーム業界のパワーバランスが変わってしまうかもしれないほど大きな転換点です。

Microsoft Gaming の CEO フィル スペンサーは、次のように述べています。「世界中のプレイヤーが Activision Blizzard のゲームを愛しており、同社のクリエイティブチームが最高の仕事をしていることは確実です。人々が好きなゲームを好きな場所でプレイできる未来を、共に築いていく所存です。」

引用元:マイクロソフト、Activision Blizzard の買収を発表

MicrosoftがActivision Blizzard社の人気に、非常に期待していることがわかります。

2.Minecraftで有名なMojangを2014年25億ドルで買収

画像引用:https://account.mojang.com/

2014年、当時としては異例の25億ドルで、Minecraft(マインクラフト)を開発したMojang(モヤン)を買収しました。

Microsoftのメタバース事業のなかでも人気のゲームソフトであり、買収から9年経った現在も人気は衰えていません。

土地を開発し、建築物を建て、コミュニケーションをする。メタバースに求められる機能を備えたゲームでまだまだ多くの可能性を秘めています。

3.ベセスダの親会社ゼニマックス・メディアも傘下に

画像引用:zenimax.com

Skyrim(スカイリム)やOblivion(オブリビオン)など、オープンワールドのゲームで有名なベセスダ。

Microsoftは、ベセスダの親会社であるゼニマックスメディアごと2021年に買収。

買収にあたって、Starfield(スターフィールド)とREdfall(レッドフォール)という2つのビッグタイトルを独占し、波紋を呼びました。

Microsoftが手がけるメタバース事業

ここでは、Microsoft が手がけるメタバース事業を3つ紹介します。

  • ホログラムを操作できるヘッドセット「HoloLens 2」
  • メタバースで仕事をする「Mesh for Microsoft Teams」
  • モノやビジネスをデジタルで作るIoT「Azure Digital Twins」

それぞれ確認していきましょう。

ホログラムを操作できるヘッドセット「HoloLens 2」

画像引用:https://www.microsoft.com/ja-jp/hololens

HoloLens 2は、Microsoft製のMixed Reality(複合現実)を実現するデバイスです。

ホログラムを自然に操作したり、音声コマンドで操作したりできます。

法人向けと一般向けの両方に販売されており、一般向けの価格は422,180円とVRヘッドセットのなかでもやや高額です。

技術仕様詳細
光学シースルー ホログラフィック レンズ (導波路)
解像度2 k 3:2 光エンジン
ホログラフィック密度>2.5k 光点 (ラジアンあたりの光点)
アイベースのレンダリング3 次元での目の位置に対するディスプレイの最適化
引用元:HoloLens 2の技術仕様

メタバースで仕事をする「Mesh for Microsoft Teams」

画像引用:Mesh for Microsoft Teams が目指す、「メタバース」空間

Mesh for Microsoft Teamsは、仮想空間でビジネスやコミュニケーションができるサービスです。

ビジネスツールであるMicrosoft TeamsをVRで利用できます。

リモートワークにおいても、よりリアルなコラボレーションやコミュニケーションが可能になります。

ホログラムを使った操作などが期待されていますが、現在はまだ一般公開されていません。

モノやビジネスをデジタルで作るIoT「Azure Digital Twins」

画像引用:Azure Digital Twins

Azure Digital Twinsを利用すると、現実世界の物理的な空間をデジタルツインとしてモデリングし、そこにセンサーデータやデバイス情報を統合することができます。

作成されたデジタルツインは、現実世界の状態をリアルタイムに反映

Azureの従量課金制に加え、Azure Digital Twinsは基本的に無料で使用できるというユニークな料金体系となっています。

Youtubeでは、Azure Digital Twins とUnityを使用した動画も投稿されています。

Microsoftとメタバースに関するよくある質問

ここでは、Microsofとメタバースに関するよくある質問とその回答をご紹介します。

今回取り扱うのは、以下の4つです。

  • メタバースの今後の可能性は?
  • 日本マイクロソフトの社名は?
  • 日本マイクロソフトの資本金はいくらですか?
  • Microsoftが撤退したメタバース事業はありますか?

それぞれ順番にお答えしていきます。

メタバースの今後の可能性は?

メタバースは、今後ますます進化するでしょう。

技術がさらに発展すれば、用途もさまざまに分岐していくからです。

具体的には次のような用途が考えられます。

  • 教育
  • トレーニング
  • リモートワーク
  • ショッピング

ゲームだけでなくビジネスやエンターテイメント、医療や政治までメタバース上に実現できるかもしれません。

ブロックチェーン技術と組み合わせれば、デジタルアイテムの保管や取引も容易になります。

デジタル経済は、技術とともに進歩していくことでしょう。

日本マイクロソフトの社名は?

日本マイクロソフトの正式な社名は、「日本マイクロソフト」 です。

2011年2月1日、日本法人として25周年を迎えたことをきっかけに「マイクロソフト株式会社」から変更しました。

当時のWebニュースでは、次のように記録されています。

同社では、「日本に根差した、日本の社会から信頼される企業を目指して、社名に、日本という名称をつけた」と説明している。

引用元:なぜマイクロソフトは、新社名に「日本」を付けたのか?

当時は社名に「日本」がつくことが珍しかったようです。

通称として今でも、”Microsoft Japan” や “MS Japan” と呼ばれることもあります。

日本マイクロソフトの資本金はいくらですか?

日本マイクロソフトの資本金は4億9,950万円です。

そのほか基本的な会社概要を表にまとめました。

本社所在地・連絡先108-0075 東京都港区港南 2-16-3 品川グランドセントラルタワーTelephone: 03-4332-5300
設立1996年 2月
資本金4億9950万円
代表者代表取締役 社長 津坂 美樹 (TSUSAKA Miki)
従業員数3,040 名 (2022 年 4 月 1 日 現在)
事業内容ソフトウエアおよびクラウドサービス、デバイスの営業・マーケティング

上記の情報は、会社概要ページが最終更新された 2022 年7月11日のものです。

より詳しく知りたい方は、日本マイクロソフト株式会社 会社概要のページをご確認ください。

Microsoftが撤退したメタバース事業はありますか?

撤退までとはいきませんが、2021年半ばにHoloLens 3を開発中止、2023年2月にインダストリアルメタバース部門が解散しています。

HoloLens 3の開発が中止された理由は、技術的に未熟でユーザーが満足するようなデバイスを作れないという課題があったためです。

インダストリアルメタバース部門の解散については直接的な理由は述べられていないものの、AI事業にコストを集中するためであると考えられています。

まとめ

本記事では、Microsoftが取り組むメタバース事業について解説しました。

最後に重要な点をおさらいしておきましょう。

  • 10,000人のレイオフ、メタバース事業も一部解散
  • メタバース事業の予算の一部をAI事業に回す予定か
  • メタバースと関連の深いXR事業に継続投資を宣言
  • Microsoft は Meta とも連携もしている
  • メタバース・AI・XRの鍵は既存事業Azureか

2023年に入ってから状況が大きく変わりました。

バズワードとなっているAIに注力する形になり、メタバース事業は一部規模を縮小しています。

一方でAzureがクラウドサーバーのシェア1位をとるには、メタバース事業の成功は欠かせない要素です。

今は、メタバースに再び力を入れるタイミングを待ちつつ、ゲーム会社の買収などで力をつける時期なのかもしれません。

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この記事を書いた人

「Metaland編集部」は、Web3.0、メタバース、AIといった最新のトピックを皆様にお届けします。専門知識がない方でもご心配は不要です。情報を深くかつ分かりやすく解説することを重視し、新しいデジタル時代への案内役となることを目指しています。一緒に新たなステップを踏み出しましょう!

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