論文や官公庁が発表するPDFは貴重な資料ですが、読み込んで理解するのは大変です。そのような時、PDFの要旨を一瞬でまとめてくれるツールがあるといいですよね。
しかし、
- PDF資料を要約してくれないかな
- 要点がひと目でわかればよいのに
- 英語論文も瞬時にまとめてほしい
上記のような悩みをお持ちの方もおられるでしょう。
結論からいうと、ChatPDFを使えば簡単にPDFの要旨をまとめてくれます。今回は、AIがPDFを瞬時に要約してくれるChatPDFについて解説します。
画像付きで詳しく解説しているので、使用方法や料金などを知りたい方は最後までご覧ください。
ChatPDFとは?4つの特徴を紹介
ChatPDFには次の4つの特徴があります。
- ChatGPTのAPIを利用した論文要約AI
- ログイン不要
- 1日120ページ×3PDFまでなら無料で利用可能
- 論文や契約書の要約にぴったり
順に見ていきましょう。
1.ChatGPTのAPIを利用た論文要約AI
ChatPDFは、OpenAI社が開発した対話式AI、ChatGPTを利用したAIチャットボットサービスです。英語の論文でも、日本語で質問すると日本語で返答してくれます。
PDFはアドビ社が開発したファイル形式で「Portable Document Format」を略したものです。
データを紙に印刷したときの状態をファイル形式で保存しており、どのようなデバイスで開いても、レイアウトは崩れません。
紙の書類の軽量化に役立ち、論文や公共の資料などに利用されています。
Bing版のChatPDFはウェブ検索結果もまとめてくれる
Microsoft Edgeを利用している方であれば、Bingでも論文の要約が可能です。
論文をMicrosoft Edgeで開くと、Bing AIのサイドバーにPDFが読み込まれます。
まだ開発段階ですが、無料で利用できます。
2.ChatPDFはログイン不要
ChatGPTはアカウントを作成してログインが必要でしたが、ChatPDFではアカウント作成が不要です。
Webサイトにアクセスして、そのままログインせず利用できるのがメリットです。
ただし、アカウントを作成しておけば、ログを残せます。数日にわたって同じPDFで作業する場合は、アカウント登録しておくとよいでしょう。
ChatPDFはスマホアプリでも利用できます。
アプリストアで「PDF」と入力すれば、ChatPDFを始め、PDFを要約してくれるアプリがサジェストされます。スマホ派の方は、試してみましょう。
3.1日120ページ×3PDFまでなら無料で利用可能
2023年7月現在、次のような条件内であれば無料で利用できます。有料プランと表で比較してみましょう。
無料プラン | Plusプラン |
---|---|
無料 | 5ドル(約700円)/月 |
120ページ/1PDF あたり | 2,000ページ/1PDFあたり |
10MB/1PDF あたり | 32MB/1PDF あたり |
3PDF/日 | 50PDF/日 |
50問/日 | 1,000問/日 |
よほどの作業量ではない限り、無料プランで対応できそうです。
ChatPDFはChatGPT-3.5を使用しています。アップロードしたPDFのすべての段落に対して、セマンティックインデックスを作成するようプログラムされています。
- セマンティックインデックスとは?
-
曖昧な検索文でも文章内容を参考にしてユーザーの検索意図を理解し、検索結果を提供する技術。
質問に対して、最も関連の高い段落を見つけ、ChatGPTのAPIが回答を生成します。現在、GTP-4を追加しようと検討中です。
4.論文や契約書の要約にぴったり
ChatPDFは、論文や契約書などの要約に有効です。
「教育」「貿易」「金融」「法律」「ビジネス」など、さまざまな分野で活用できます。英語の論文であっても日本語に要約できるので、かなりの時間を短縮できるはず。
英語で記載されたものも、日本語で質問すれば、日本語で回答を得られます。また複雑な契約書も要点を効率よく理解できるでしょう。
アップロードしたファイルは、安全なクラウドストレージに保存され7日後には削除されるため、情報漏洩の心配もなく利用できます。
とはいうものの、流出の危険性がまったくないとは言えません。
機密データなどを取り扱う場合は、よく検討してから利用しましょう。
ChatPDFの使い方の手順とコツ
ChatPDFの使い方の手順とコツを4つのステップで解説します。
ここから先は、このページを別画面で開きながら操作するとわかりやすいですよ。
- PDFをダウンロードする
- ChatPDFにアクセスする
- PDFファイルをアップロードする
- 質問をする
順に見ていきましょう。
PDFをダウンロードする
まず対象のPDFをダウンロードしましょう。試しに東京大学松尾研究室出身の株式会社 Daisy創業者兼代表取締役、大澤昇平氏の英語論文で作業してみます。
対象となるPDFにアクセスして、右上のダウンロードボタンを押します。
PDFファイルをアップロードする
次にダウンロードしたPDFを一番上の枠にドラッグ&ドロップします。
一度に複数ファイルを処理することはできません。利用する場合は、1PDFごとに質問するようにしましょう。
質問をする
ChatPDFがアップロードしたPDFを読み込んでくれました。次のような画面になれば、読み込み完了です。
右下枠に質問を投げかけていきます。
難解な英語論文ですが、ChatPDFに質問していきつつ理解を深めていきましょう。
質問:日本語で500字以内に要約して
「このPDFファイルは、「Truthful Self-Play」という新しい進化学習のフレームワークについて説明しています。このフレームワークは、自己対戦をメカニズムデザインに基づいて改良し、エージェント同士の協力的な信号を引き出すことで、バイアスのない状態表現を可能にします。数値実験により、このフレームワークがプレデタープレイ、トラフィックジャンクション、スタークラフトのタスクで最先端のパフォーマンスを発揮することが示されています。」
これだけではさっぱりわからないので、続けて「数値実験の具体的な手順を500字で」「INTRODUCTION部分を400字でまとめて」「論文で示されたフレームワークについて要旨を」など質問してみました。
しかし、数式がメイン部分なので、どうもピンときません。そこで「数式部分を簡単に説明して」と質問しました。すると下記のように丁寧に解説してくれました。
数式部分を簡単に説明して
「この論文では、いくつかの数式が使用されています。以下に、主な数式を簡単に説明します。 – 式(1):この式は、ピア予測法によって計算される報酬の期待値を表しています。ここで、rは報酬、pはエージェントが提供した情報の正確性、qは他のエージェントが提供した情報の正確性を表します。 – 式(2):この式は、エージェントの方策を更新するために使用される勾配法の式です。ここで、θはエージェントのパラメータ、Jは報酬の期待値を表します。 – 式(3):この式は、報酬の期待値を計算するために使用される関数です。ここで、Vは状態価値関数、πは方策、rは報酬を表します。 – 式(4):この式は、報酬の期待値を計算するために使用される関数です。ここで、Qは状態行動価値関数、πは方策、rは報酬を表します。 これらの数式は、進化学習における真実の信号を引き出すためのフレームワークの理論的な基盤を提供しています。」
さらに結論を聞けばわかるだろうと次のような質問をしました。
結論部分を300字でまとめて
「この論文では、進化学習において真実の信号を引き出し、エージェント同士を協力的にするためのフレームワークが提案されました。このフレームワークは、自己対戦を改良したものであり、ピア予測法を用いて架空の報酬を追加することで、真実の信号を引き出し、エージェント同士を協力的にすることを目的としています。数値実験により、このフレームワークがプレデタープレイ、トラフィックジャンクション、スタークラフトのタスクにおいて最先端のパフォーマンスを発揮し、スーパーヒューマンAIを作成するための一般的なフレームワークになり得る可能性があることが示されました。また、このフレームワークは、部分観測環境でのマルチエージェント強化学習において、真実の信号を引き出すことができるため、監視のバイアスがない高レベルな抽象表現を生成することができます。これにより、進化学習における真実の信号の重要性が強調され、スーパーヒューマンAIの実現に向けた新たな可能性が示唆されました。」
つまりこの論文は、スーパーヒューマンAIを作成するための適切な学習方法を数値で証明しているわけですね。
ちなみに、この論文は東大発ベンチャーによる国産チャットAIを、米国の国際学会で認可を取得するために提出されたものです。
英語を一文も読まなくても、ChatPDFのおかげで内容や要旨をつかめました。
質問のコツ
解析が終了すると、最初の枠に「質問例」が提案されます。質問をクリックすると、答えが生成されます。
英語の質問だと英語で返答されますが、そのあと「日本語に訳して」と指示すれば日本語で回答してくれるので便利です。
ほかにも「〇字以内で」「簡単に説明して」などの質問もおすすめです。
やり取りしたChatの内容は、右上のボタンからテキスト形式でダウンロードできます。
ChatPDF以外にもある!PDF要約ができるAIツール4選
ChatPDF以外にもPDFの要約ができるAIツールはあります。数あるAIツールの中からおすすめの4つを紹介します。
- Notion AI|Notion上で利用できるAIアシスタントサービス
- Chatbase|ChatGPTをベースにしたAIチャットボット
- PDFelement|PDFの編集ができる
- SciSummary|科学論文の要約を自動化するAIツール
順に見ていきましょう。
1.Notion AI|Notion上で利用できるAIアシスタントサービス
Notionは、メモやタスク管理、議事録、データベース化など多機能に使えるクラウド型アプリです。ビジネスで活用する人も少なくありません。
そのNotionがAI機能を搭載したNotion AIをリリースしました。
文章作成を効率化することに特化しており、ビジネス文章やブログ記事の作成の効率化に役立ちます。ChatGPTとの違いは、プログラミングのコードが生成できない点です。
手順は次のとおりです。
- メニューから「ページを追加」を選ぶ
- 要約したい記事のURLか文章をコピー&ペースト
- AIに依頼をクリック
- 「日本語で要約する」を入力
そのほかにもさまざまな質問を投げかけてみましょう。
無料であれば1ユーザーあたり20回/月まで。有料版は10ドル/月/ユーザーで、回数無制限となっています。支払いは、クレジットカード、デビットカード、Apple PayまたはGoogle Payが利用できます。
2.Chatbase|ChatGPTをベースにしたAIチャットボット
Chatbaseは、ChatGPT-3.5-turboを利用したAIチャットボットビルダーです。アップロードしたPDFファイルや入力したテキスト、Webサイトのページを解析して、チャットボットを作成します。
95の言語に対応しており、2023年7月現在は次のツールと連携できます。
- WordPress
- ZAPIer
- alack
- shopify
各プランの詳細は次の表のとおりです。
趣味 | 成長 | 標準 | 無制限 | |
---|---|---|---|---|
月額 | 19ドル (約2,600円) | 49ドル (約6,800円) | 99ドル (約1万3,500円) | 399ドル (約5万5,000円) |
回数 | 2,000 | 5,000 | 10,000 | 40,000 |
チャットボット数 | 5 | 10 | 20 | 40 |
文字数 | 200万 | 400万 | 600万 | 1,100万 |
オプション | なし | なし | GTP-4 | GTP-4 |
標準プランと無制限プランでは、GTP-4をオプションで使用できます。
3.PDFelement|PDFの編集ができる
PDFelementは、PDFの読み込みと要約ができるだけでなく、編集・変換・結合・圧縮・署名・OCRまでできるソフトです。
書き込みや画像や図形の挿入、テキストリンクや透かしの追加など自由に編集可能です。
AIアシスタント「Lumi」(ChatGPT)が内蔵されているので、文章の要約・意味の解釈・校正・書き換えもできます。
プランは買い切りで標準とプロ版の2つです。
プロ版 | 標準版 | |
---|---|---|
価格 (永続ライセンス) | 14,800円 | 8,980円 |
機能1 | PDF変換や印刷のパッチ処理OCR光学文字認識・パッチ処理PDF圧縮フォームフィールド作成電子署名 | ✖ |
機能2 | 直接編集Word、Excel、Powerpointに変換注釈追加他多数 | 〇 |
Windows版とMac版があり、無料トライアルもできます。100万社以上の導入実績があり、個人向けというよりも企業や大学向けのサービスといえます。
4.SciSummary|科学論文の要約を自動化するAIツール
SciSummaryは、科学論文をカンタンに理解するために設計されたAI要約ツールです。アメリカの主要な大学で導入されています。
2023年3月にリリースされて以来、2万人を超えるユーザーから5万以上の論文の要約に利用されています。
GTP‐3.5およびGTP-4を使用しており、PDF、URL、文章などの要約が可能です。要約スタイルを段階に分けて選択できるので、文章で指示する必要がありません。
費用は下記の通りです。
プラン名 | 費用 | 利用可能単語数 |
---|---|---|
無料プラン | 無料 | 15,000単語/1ヶ月GTP‐3.5ベース |
プレミアムプラン | 4.99ドル(約700円) | 100万単語/1ヶ月GTP-4ベース |
プレミアムプラスプラン | 8.99ドル(約1,200円) | 200万単語/1ヶ月GTP-4ベース |
ダッシュボードにPDFをアップすると、指定した長さの概要が受信箱に届きます。
科学者・学生・愛好家に人気のツールです。
ChatPDFに関するQ&A
ChatPDFに関する、よくある質問をまとめました。
- ChatPDFの料金はいくら?
- ChatPDFの使い方は?
- ChatGPTとどちらがおすすめ?
- PDF内の画像は読み込めない?
- 日本語でも使える?
順に見ていきましょう。
- ChatPDFの料金はいくら?
-
ChatPDFは無料で利用できます。ただし無料プランだと、次のような制限があります。
- 1ファイルにつき120ページ以下
- 最大10MB
- 1日に3ファイルまで
- 質問は1日50件まで
無料プランで足りない場合は、月額5ドルでPlusプランにアップグレード可能です。有料版であれば次のような上限となり、ほぼ制限なく利用できます。
- 1ファイルにつき2,000ページまで
- 最大32MB
- 1日に50ファイルまで
- 質問は1日1,000問まで
- ChatPDFの使い方は?
-
Webサイトにアクセスして、ドラッグ&ドロップで利用できます。アカウント登録する必要がなく、無料で利用が可能。
手順は次のとおりです。
- PDFをダウンロードする
- ChatPDFにアクセスする
- PDFファイルをアップロードする
- 質問をする
アカウント登録すれば、過去ログも残ります。有料プランにアップロードすれば1日50本までアップロードが可能。アプリをインストールすれば、スマホでも利用できます。
- ChatGPTとどちらがおすすめ?
-
ChatPDFはChatGPTを使用しています。基本機能は同じですが、PDFの読み込みをしやすい仕様になっているのが特徴です。
よくある質問を提案してくれるので、アップロードしたあとは生成された質問をクリックするだけで簡単に要約ができます。
デメリットとして、アップロードしたPDFに関連した質問以外はできない点が挙げられます。
また、ChatGPTを内蔵していても、プログラミングコードの作成はできません。
論文などを読み込む機会が多い方にとっては、ChatGPTよりもChatPDFのほうが使い勝手がよいでしょう。
- PDF内の画像は読み込めない?
-
PDF内に掲載されている画像や表などは、2023年7月現在のところ読み取れません。
ただし、表内のテキストは読み取られていますが、正しい行と列の関連付けには問題があるでしょう。
- 日本語でも使える?
-
日本語を含め、あらゆる言語の読み取りと質問が可能です。
PDF内で使用されている言語と違う言語で質問した場合、質問した言語で返答が生成されます。
もし希望の言語で回答が生成されない場合は「日本語で要約して」「英語で要約して」と指示しましょう。
まとめ
この記事では、ChatPDFについて解説しました。
最後に重要なポイントをおさらいしておきましょう。
- ChatGPTのAPIを利用した論文要約AI
- ログイン不要
- 1日120ページ×3PDFまでなら無料で利用可能
- ChatPDFは「教育」「貿易」「金融」「法律」「ビジネス」分野に便利
ChatGPTでも論文の要約はできますが、PDFをそのままアップロードできるChatPDFのほうが便利だといえます。
ほかのPDF要約ツールに比べて無料でできる範囲が広いのもChatPDFの優秀なところ。
ただし論文や資料の読み込み作業の多い方、学術的な仕事をしている方、1日3つ以上の論文を要約したい方であれば、有料版がおすすめです。