ターミナルから自然な日本語でAIと対話できたら、開発作業がどれだけ楽になるでしょうか。
GoogleのGemini CLIは、まさにそれを実現する革新的なツールです。
この記事を読むことで、Gemini CLIに関する以下のような疑問が解消されます。
- Gemini CLIの詳細や特徴が知りたい
- 無料で使う方法が気になる
- インストール方法や具体的な使い方がわからない
結論から言うと、Gemini CLIは開発者のターミナル環境にGoogleの最先端AIモデルを統合する、オープンソースのAIエージェントです。1分あたり60回、1日1,000回まで無料で利用できます。
今回の記事では、Gemini CLIの概要から詳細な導入手順、実践的な使い方までを、初心者にも分かりやすく解説します。
画像解析やMCPによる外部ツール連携といった応用的な機能にも触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。
Gemini CLIとは?概要と4つの特徴

Gemini CLIは、Googleが提供するターミナル用のAIツールです。コマンドライン上で、AIモデルと対話しながら様々なタスクを実行できます。
Geminiの主な4つの特徴は以下の通りです。
- 自然な日本語でAIを操作できる
- 画像や大量のコードを扱えるマルチモーダル対応
- MCPプロトコルで外部ツールと連携できる
- 柔軟な料金体系と寛大な無料枠
それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。
1.自然な日本語でAIを操作できる
CLI(コマンドラインインターフェース)上で自然な文章で指示するだけで、Geminiモデルから即座に応答が得られます。
従来のコマンドラインツールとは異なり、「このコードのエラーを修正して」といった抽象的な指示を理解し、AIエージェントとして自律的に動作するのが最大の特徴です。
ステップ | 内容 |
---|---|
意図の理解 | ユーザーの指示の背景を深く理解します。 |
計画の策定 | タスク達成に必要な手順を考えます。 |
ツールの実行 | ファイルの読み込みやコード解析などを内部的に実行します。 |
提案と実行 | 変更点を提案し、ユーザーの許可を得てからファイルに書き込みます。 |
ファイルシステムを変更する前には必ずユーザーに実行許可を求めるため、開発者は安心してAIに作業を任せられます。
2.画像や大量のコードを扱えるマルチモーダル対応
テキストだけでなく、コードや画像を入力も扱うマルチモーダルに対応しています。
Gemini CLIのマルチモーダル対応には、主に以下の3つの側面があります。
機能 | 概要 |
---|---|
高度なテキスト・コード処理能力 | Gemini 1.5 Proの広大なコンテキストウィンドウ(最大100万トークン)を活用し、巨大なコードベース全体を一度に読み込んで理解できます。 |
視覚情報のコード変換 | PDFや手書きスケッチなどの視覚的な情報から、アプリケーションの雛形を自動生成することが可能です。 |
マルチメディア生成 | MCPを介してGoogleの画像生成AI「Imagen」や動画生成AI「Veo」と連携し、指示一つでメディアコンテンツを生成できます。 |
入出力の方法に幅があるため、複雑な処理も指示しやすいです。
3.MCPプロトコルで外部ツールと連携できる
MCP(モデルコンテキストプロトコル)という仕組みによって外部ツールを呼び出し、複数のツールをターミナルから利用できます。
MCPは、AIエージェントが外部のツールやAPI、データソースと安全に連携するためのオープンな規格です。settings.jsonという設定ファイルに情報を追記するだけで、Gemini CLIに新たな機能を付与できます。
以下は連携できるツールの一例です。
連携ツール例 | できること |
---|---|
GitHub | リポジトリの問題検索、プルリクエストの確認、コミット履歴の分析 |
Imagen / Veo | 高品質な画像や動画の生成 |
Figma | デザインツールとの連携 |
Firecrawl | Webサイトの構造化データ取得(スクレイピング) |
開発者自身が独自のMCPサーバーを構築すれば、社内APIや特殊なデータベースとの連携も実現できます。
4.柔軟な料金体系と寛大な無料枠
Gemini CLIの料金体系には無料枠と従量課金制があり、利用スタイルに合わせて柔軟に選べます。
料金体系 | 無料枠 | 従量課金制 |
---|---|---|
認証方式 | 個人のGoogleアカウント | Gemini APIキー |
コスト | 無料 | トークン使用量に基づく |
主要な制限 | 60回/分、1,000回/日 | より高いリクエスト上限 |
対象ユーザー | 個人開発者、学生、学習者 | 高頻度で利用する開発者、法人 |
無料枠は1日1,000回という非常に寛大な利用制限が設定されており、個人の開発作業であれば無料枠だけで十分に活用できるでしょう。
Gemini CLIの導入方法と使い方

ターミナルでGemini CLIを利用するまでの手順を以下の順に解説します。
- Gemini CLIをインストールする
- APIキーを作成する
- 起動させて初期設定する
- 自然言語で対話する
無料枠で利用する場合は2の手順をスキップしても構いません。
Gemini CLIをインストールする
パッケージマネージャーを使ってOSに応じてインストールします。
まず、前提条件としてNode.jsバージョン20以上が必要です。公式サイトから最新版をインストールしておきましょう。

Node.jsを用意したらターミナルのアプリを開き、以下のコマンドを入力してください。
> npm install -g @google/gemini-cli
しばらく待つと、インストールが完了します。

APIキーを作成する
Gemini CLIで従量課金制を有効化するために必要なAPIキーを取得します。
以下の手順でAPIキーが取得できます。
- Google AI StudioにGoogleアカウントでログインする
- APIキー管理ページで「APIキーを作成」ボタンを押す
- プロジェクトを選択または作成する
APIキーを取得したら、ターミナルで以下のコマンドを入力して環境変数に設定してください。
> export GEMINI_API_KEY=”ここにAPIキーを貼り付ける”
Windowsを利用している場合は、exportの代わりにsetを使うと良いでしょう。
起動させて初期設定する
Gemini CLIを動かして、初期起動時に必要な初期設定を済ませます。
ターミナルで「gemini」と入力するとGemini CLIが起動します。
カラーテーマを選べるので、上下キーでテーマを変更してエンターキーで決定してください。

その後は認証方法を聞かれるので、使い方に応じた方法を選びましょう。
- Login with Google(Googleアカウントでログインする)
- Use Gemini API Key(Google AI Studioで取得したAPIキーを使う)
- Vertex AI(Vertex AIで取得したAPIキーを使う)
認証に成功すると、ターミナルでコマンドや文章を入力できるようになります。

なお、/auth コマンドを使うことで、認証方法を変更することが可能です。
自然言語で対話する
認証を終えたらGemini CLIが使えるので、やってほしいことを自然言語で伝えていきましょう。
例として「ボタンを押してから3分経つと音が鳴るアラームを作って」と指示すると、HTMLやCSSなどのファイルを作成し始めます。
途中で質問されたときは回答を選択すると処理が再開します。

処理が完了すると作業場所にファイルが作成されるので、動作などを確認してください。

引き続き、新しい機能の追加やコード修正などを指示して開発を進めましょう。
Gemini CLIの主要なコマンド6選

Gemini CLIは自然言語で対話するのが基本ですが、スラッシュ(/)などの記号を使ったコマンドを活用すると、さらに開発効率を上げられます。
ここでは、特に使用頻度が高い代表的な6つの機能と、その使い方を紹介します。
- clear|ターミナル画面の整理
- chat|会話履歴を保存・再開
- memory|AIのメモリを管理
- compress|チャット履歴を要約
- tools|利用可能なツールの確認
- @|ディレクトリやファイルを指定
ちなみに、/helpコマンドを入力すると、Gemini CLIで使えるコマンドの一覧を確認できます。
1.clear|ターミナル画面の整理
/clear は、Gemini CLIの画面表示をすばやくリセットするコマンドです。
コマンドを実行すると過去のセッション表示が消え、現在の入力だけが表示された状態に戻ります。
作業中に履歴が増えて見づらくなったときに便利な操作です。
2.chat|会話履歴を保存・再開
/chat は、セッションの状態を保存したり、あとから再開したりするコマンドです。
ターミナルを閉じるとセッションは破棄されてしまうため、/chat コマンドを使って保存する必要があります。
コマンドの使い方は以下のとおりです。
- /chat save タグ名:指定したタグ名でセッションを保存する
- /chat resume タグ名:保存したタグ名のセッションを再開する
タグ名にはセッションの内容が分かりやすい名前を付けると良いでしょう。
複数の作業を並行して進める開発現場などで、非常に有用な機能です。
3.memory|AIのメモリを管理
/memory は、Gemini CLIのメモリに記憶させる指示内容を追加、確認するコマンドです。
AIにルールや前提条件を記憶させておくことで、出力内容の一貫性を保つことができます。
コマンドの使い方は以下のとおりです。
- /memory add テキスト:テキストの内容をメモリに記憶させる
- /memory show:記憶させたメモリを表示する
- /memory refresh:編集したファイルを再読み込みする
なお、メモリの内容はGEMINI.mdファイルに保存されています。
GEMINI.mdファイルを直接編集した際はrefreshで再読み込みさせてください。
4.compress|チャット履歴を要約
/compressは、長く続いたチャットを要点だけにまとめるコマンドです。
過去のやり取りを要約することでトークン数の消費を抑える効果があります。
/chat コマンドでセッションを保存するときや、チャットが長くなり過ぎたときなどに使うと良いでしょう。
5.tools|利用可能なツールの確認
/tools は、Gemini CLIに統合された外部ツールを一覧で確認するコマンドです。
どのツールが現在使用可能で、どんな機能を持っているかを事前に把握することで、自然文からのツール呼び出しがスムーズになります。
「/tools」のみ入力するとツール名が表示されるだけですが「/tools desc」と入力することでそれぞれのツールの役割が簡潔に解説されます。
さらに詳細な説明が必要であれば /docs コマンドで確認できるドキュメントで調べてみてください。
6.@|ディレクトリやファイルを指定
ディレクトリ(フォルダ)やファイルの内容をそのままGeminiへの入力に組み込みたいときは、場所を示すパスの前に@を付けましょう。
たとえば「@directory/file.txt このファイルの内容を要約してください」と入力すると、directoryディレクトリ内にあるfile.txtファイルの内容を要約できます。
コードレビューやドキュメント整理において、効率的な作業が可能です。
Gemini CLIに関するQ&A

Gemini CLIに関するよくある質問と回答を紹介します。
- 日本語で使えますか?
- オフラインで使えますか?
- OS(Windows, Mac, Linux)による違いはありますか?
- APIキーのセキュリティ対策はどうすればよいですか?
- Gemini CLIは商用利用に対応していますか?
- Vertex AIとは何ですか?
- 日本語で使えますか?
-
Gemini CLIは日本語を入力して使えます。
日本語で入力するとAIの返答も日本語になるので、英語が分からなくても使いやすいでしょう。
ただし、エラーメッセージなどのシステム周りは英語で表示されます。
- オフラインで使えますか?
-
いいえ、Gemini CLIはオフラインでは一切利用できません。
Gemini CLIは、Googleのサーバー上で動作するAIモデルと通信するためのツールです。
すべての機能において常時インターネット接続が必須なので、オンライン環境で利用してください。
- OS(Windows, Mac, Linux)による違いはありますか?
-
Gemini CLIの基本的な機能は、いずれのOSでも同様です。
一度インストールしてしまえば、OSの違いを意識することなく利用できるでしょう。
ただし、Node.jsのインストール方法や、環境変数を設定するコマンドのように、Gemini CLI外での操作が異なる場合があります。
- APIキーのセキュリティ対策はどうすればよいですか?
-
最も重要な対策は、ソースコードに直接書き込まず、GitHubなどの公開リポジトリにコミットしないことです。
可能であれば、Google Cloudの管理画面で、キーを利用できるIPアドレスやAPIを制限することを強く推奨します。
万一漏洩した場合はすぐに無効化し、新しいキーを再発行してください。
- Gemini CLIは商用利用に対応していますか?
-
はい、Gemini CLIは無料での使用も含めて商用利用に対応しています。
ただし、商用サービスで利用する場合はトークン数が多くなりやすいため、無料枠では上限に達する可能性が高いです。
本格的に商用利用するのであれば、従量課金制のAPIキーを使用したほうが良いでしょう。
- Vertex AIとは何ですか?
-
Vertex AIは、Google Cloudが提供する企業向けの機械学習プラットフォームです。
このプラットフォームは、Google AI Studioと比べて利用できるモデルが豊富といったメリットがあります。
また、Google Cloudの他のサービスと統合されているため、大規模開発やチーム運用に適しています。
業務レベルで本格的に導入する際はVertex AIでAPIキーを取得するのがおすすめです。
まとめ
本記事では、Gemini CLIについて解説しました。
最後に、記事の内容をおさらいしておきましょう。
- Gemini CLI = ターミナルから自然言語で操作できるGoogleのAIツール
- コード生成やエラーチェックなどの処理をAIと対話しながら進められる
- 無料利用でも1日1,000回まで実行でき、従量課金制プランも用意されている
- インストールしたGemini CLIを起動し、Googleアカウントでログインすると使い始められる
- コマンドを使うことでセッションの保存などの便利な機能が使える
Gemini CLIは、開発者の生産性を飛躍的に向上させる可能性を秘めた次世代のツールです。
ぜひこの機会に無料枠を活用して、未来のターミナル操作を体験してみてください。