近年多くの企業が独自の大規模言語モデルを開発していますが、中でもDeepSeekが注目を集めています。
中国で2023年に起業したばかりのAIスタートアップ企業ですが、技術革新を優先してAIモデルを開発していることが特徴です。
わずかなリソースで世界でも注目されるようなAIモデルを生み出しています。
しかし、DeepSeekについて次のような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
- DeepSeekは何ができるの?
- DeepSeekはなぜショックといわれているの?
- DeepSeekが開発された理由は?
- DeepSeekは簡単に使えるの?
結論からいえば、DeepSeekは高性能かつ低コストであることから衝撃を与えショックだといわれています。
そこで、この記事ではDeepSeekの特徴や使い方、ショックといわれる具体的な理由について詳しく解説するので参考にしてください。
DeepSeekとは?5つの特徴について解説

DeepSeekは、中国の杭州に拠点を置くAIスタートアップ企業が開発した大規模言語モデル(LLM)です。
起業家の梁文峰氏によって2023年末に設立され、技術革新に特化して事業を進めてきました。
OpenAIのモデルに匹敵する性能を持つAIを単価でリリースしており、従来のAI開発の常識を覆す開発を進めています。
DeepSeekの特徴は次の通り。
- 手軽に使える対話型AIアプリ
- DeepSeek-R1|o1モデルに近い性能を持つ推論モデル
- ChatGPTと比較してAPI費用が安価
- スマホアプリでも利用可能
- 画像入力にも対応
1.手軽に使える対話型AIアプリ
DeepSeekは中国のスタートアップ企業が開発した対話型AIアプリで、2025年1月にリリースされるとすぐに人気に火がつきました。
手軽に使えるチャットインターフェースで、質問に答えたり、ウェブで検索したり、推論したりできる点が特徴です。
DeepSeekの最新AIモデルは、OpenAIの「ChatGPT」など米国のトップクラスのモデルと同等の性能を持ちながら、開発コストは600万ドルほど。
これに対し、米国のAI企業は10億〜数十億ドル(日本円で約1,500億円〜数千億円)を費やしているといわれています。
DeepSeekのアプリは一部機能のみ無料。iOS版、Android版、ウェブ版が提供されており、AppleのApp Storeの無料アプリカテゴリーで上位にランクインしています。
DeepSeekの登場は、AIアシスタント分野における中国勢の台頭を示すものといえるでしょう。
2.DeepSeek-R1|o1モデルに近い性能を持つ推論モデル
DeepSeek-R1は、中国のDeepSeek社が開発した大規模言語モデルで、OpenAI社のo1モデルと同等の性能を実現しながら、運用コストはわずか3%に抑えられています。
本モデルは、GRPO強化学習により推論能力を大幅に向上させ、約10万件の厳選データを用いたSFTで言語混在や可読性の問題を解決しています。
また、数学系難問セットにおいて従来モデルより平均20%高い得点を記録しており、蒸留技術により大型モデルの知識を小型モデルへ効率的に転移することに成功したのです。
さらに、処理速度が2倍、消費電力が50%削減されており、Wired誌は登場をLLM進化の一歩と評価し、拡張に期待します。(参照:DeepSeekの「R1」搭載チャットボットを使い、ChatGPTと比べてみた)
3.ChatGPTと比較してAPI費用が安価
ChatGPTと比較してDeepSeekはAPI費用が安価であることが特徴の一つです。
DeepSeekはユーザーが特定機能のみを利用できる課金モデルを採用しており、不要な機能にかかるコストを削減できます。
例えば、テキスト生成出力のAPI利用料が100万トークンあたり2.19ドルと、ChatGPTの高度な推論モデルo1の60ドルと比較して約27分の1です。
以下は、DeepSeek R1とChatGPT o1のコスト比較表です。
100万トークンあたり | OpenAI o1 | DeepSeek R1 |
---|---|---|
入力トークン料金 | 約 $15.00 | 約 $0.55 (キャッシュミス時) 約 $0.14 (キャッシュヒット時) |
出力トークン料金 | 約 $60.00 | 約 $2.19 |
※コンテキストキャッシングにより、同一プロンプトの場合は低料金が適用される
DeepSeek の R1 は、同等の推論性能を持ちながらも、OpenAI o1 と比べて大幅に低コストで利用できる点が特徴です。
4.スマホアプリでも利用可能
DeepSeekのAIチャットボットは、iOSおよびAndroidのスマートフォンアプリでも利用できます。アプリストアで「DeepSeek」を検索してインストールすれば、手軽に利用を開始できます。
アプリ版では、同社が開発した大規模言語モデル「DeepSeek-R1」を無料で利用可能です。通常の高速モードと、時間をかけて深く思考するDeepThinkモードの2種類から選択できます。
2025年1月時点で、DeepSeekアプリは米国時間でのApp Store無料アプリランキングで1位を獲得するほどの人気を博しています。
OpenAI社のChatGPTに匹敵する性能を持ちながら、無料で利用できる点が大きな魅力です。
5.画像入力にも対応
DeepSeekは、2023年1月27日に画像生成AIモデル「Janus-Pro(ジャヌス・プロ)」を発表しました。
Janus-Proは、テキストから画像を生成できるマルチモーダルAIモデルで、自然風景、建物、動物など、あらゆるタイプの画像に対応しています。
従来のDeepSeekは主にテキストベースのAIでしたが、Janus-Proにより画像入力にも対応するようになりました。具体的には以下のような特徴があります。
特徴 | 説明 |
---|---|
マルチモーダル | テキストと画像の両方を扱える |
高品質な画像生成 | 自然な画像を高速に生成可能 |
幅広いジャンル対応 | 風景、建物、動物などさまざまなジャンルの画像生成に対応 |
現在、Janus-Proにより画像入力にも対応したことで、テキストだけでなく画像を用いたより多彩なアプリケーションへの応用が期待されています。
画像生成AIの分野で存在感を増すDeepSeekの今後の動向に注目が集まっています。
中国に批判的な内容は検閲が入る問題も
中国発のAIアシスタント「DeepSeek」が急速に人気を集めていますが、中国に対して批判的な内容を入力すると、回答が検閲される問題が指摘されています。
deepseekに天安門広場事件のことを聞いたら、話題を変えられるんだよ、と娘に聞いたので、やってみたら本当だったw pic.twitter.com/uG3ICJN6sL
— なぉぉぉ (@mishpod03) January 30, 2025
実際にDeepSeekに中国の人権問題や台湾の地位などについて質問すると、回答が拒否されたり、中国寄りの偏った内容しか返信されなかったりするケースが報告されています。中国政府による情報統制の影響を受けている可能性が高いと考えられるでしょう。
以下は、DeepSeekが回答できなかったり、検閲したりした質問の一例です。
- 天安門事件について
- 新疆ウイグル自治区の人権侵害問題
- 香港の民主化デモ
- 台湾の主権や独立の是非
- 中国共産党の一党独裁体制への批判
優れた性能を持つ一方で、検閲の問題を抱えるDeepSeekの利用については慎重な判断が求められます。
DeepSeekショックといわれる理由

DeepSeekショックといわれる理由は次の通り。
- 半導体大手NVIDIAの株価が急落する要因となった
- データの不正入手疑惑がある
半導体大手NVIDIAの株価が急落する要因となった
DeepSeekが登場したことで、AI業界ではハードウェアに依存している現状を変える傾向にあります。
従来の認識では、NvidiaのH100をはじめとする高性能なGPUが必須とされていました。
しかし、DeepSeekの登場によってNVIDIAの株価が急落したことで、DeepSeekショックと世界中で大騒ぎとなったのです。
一方でNvidiaのジェンスン・ファンCEOは「AIの進化を支えるためには大規模な計算リソースが重要である」と強調しています。
AnthropicのダリオCEOも「高品質なAIを作るためにはコストが必要である」と述べており、状況は大きく変化しないようです。
データの不正入手疑惑がある
DeepSeekは、公開されていないOpenAIのデータを盗取したとの疑惑があり、OpenAI社では調査を進めているところです。
さらに、輸出を禁止している米エヌビディア製の最先端半導体をDeepSeekが購入したとの疑いもあります。
いずれも調査が進んでいる状況であり、今後のニュースを確認する必要がありそうです。
DeepSeekの使い方を解説【スマホアプリ版】

DeepSeekの使い方は次の通り。
- アプリをインストール
- 必要情報を登録する
- メッセージを送信する
- 画像を送信する
- ドキュメントを送信する
アプリをインストール
スマホでDeepSeekを使うためには、まずアプリをインストールしましょう。

必要情報を登録する
アプリをインストールしたら、必要情報を登録します。
メールアドレスや電話番号の他に、Googleアカウントでもサインイン可能です。
Googleアカウントを利用する場合は、自動的に情報を読み取ってくれるのでスムーズにサインインできるでしょう。

サインインが完了したら、TOPページを確認してください。
「こんにちは、私はDeepSeekです」と表示されたらサインインが完了し使える状態となります。

メッセージを送信する
サインインできたら、メッセージを送信しましょう。
DeepSeekは日本語で入力できるので安心してください。
ここでは「アメリカには州がいくつありますか」と質問してみます。
すると「アメリカには50の州があります。」と回答が得られました。

シンプルではありますが、正しい情報を提供してくれるようです。
次に同じ質問をDeeoThinkをタップした状態で試してみましょう。

思った以上に丁寧で内容をしっかりと伝えてくれるのがわかりますね。
また、検索ボタンも使ってみましょう。
「花粉症対策についてまとめて」と入力して検索ボタンを押した状態で矢印ボタンをタップ。
なんと46件のURLを調査してまとめた結果を提供してくれました。

英語で質問すると、英語で返信してくれます。
そのため、他の言語で仕事をされている方にもおすすめです。
画像を送信する
DeepSeekにはカメラ機能が備わっているので、実際に使ってみましょう。
メッセージを入力する欄の下部にある+アイコンから、写真のOCNボタンをタップし、カメラをONにしてください。
調べたい物を撮影して、関連する質問をしてみましょう。
すると、次のように詳しく説明してくれます。
画像処理用AI DeepSeek-VL2をRTX4070TIで動かしてみる
あくまで、予測ではありますがGoogleレンズと同じような使い方ができます。
また、すでに撮影した画像を送信する方法もあります。
同じようにメッセージ入力画面の一番下にある+アイコンから写真のOCNボタンをタップしましょう。
画像に関連した質問をすることで、回答してくれます。
必ず正しいというわけではないのですが、参考程度にならできるのではないでしょうか。
また、シンプルな画像を送ればより正確な回答を得られるでしょう。
ドキュメントを送信する
DeepSeekは、ドキュメントの読み込みも可能です。
例えば、メモ帳に記録したことやPDFファイルにも対応しています。
PDFに書かれた内容を要約してもらったり、関連した質問をしたりとさまざまな使い方が考えられるでしょう。
DeepSeekについてよくある質問

DeepSeekに関するよくある質問についてまとめました。疑問をお持ちの方は参考にしてください。
- DeepSeekの各モデルの特徴は?
- 利用時の注意点を教えてください
- DeepSeekが開発された背景は?
- APIでも利用できますか?
- 日本語に対応していますか?
- 安全性に問題はないですか?
- 画像は生成できますか?
- DeepSeekの各モデルの特徴は?
-
DeepSeekには次のようにさまざまなモデルがあります。
- DeepSeek Coder
- DeepSeek-R1
- DeepSeek-V2
- DeepSeek-V3
- DeepSeek LLM
DeepSeekの初期モデルであるDeepSeek Coderは、一般の人向けではなく研究者を中心として提供されています。
DeepSeek-R1は、OpenAI o1モデルよりも性能がいいといわれており論理的、かつ数学的な推論を得意としている点が特徴です。
また、後続モデルであるDeepSeek-V2はLLMランキングで上位に選ばれるなど価格競争力があり注目されています。
さらに、パラメータ数を増やしたモデルがDeepSeek LLMです。
このように、DeepSeekはさまざまなモデルが登場しており今後も新しいものが登場すると予想されています。
- 利用時の注意点を教えてください
-
DeepSeekでは、エンドユーザーや開発者などを含めて不利益につながるような使い方はできません。
また、提供する情報が必ず正しいとは限りません。
例えば、「現在のアメリカ大統領は誰ですか?」と入力します。
すると、DeepSeekは次のように答えてくれました。
ジョー・バイデン氏が2021年1月20日に第46代アメリカ合衆国大統領に就任するまでは正解ですね。
ただ、実際の任期は2025年1月20日までで2025年2月20日の時点では、ドナルド・トランプが就任しています。
このように、DeepSeekに限ったことではないのですが、AIが提供する情報は必ず正しいとは限りません。
そのため、利用する際はファクトチェックが必要です。
- DeepSeekが開発された背景は?
-
DeepSeekは、アメリカが半導体輸出を規制したことがきっかけで開発されました。
最新鋭のNVIDIA H100 GPUへのアクセスが制限されたのです。
利用できるオープンソースや計算リソースを効率的に使って開発することで、DeepSeekが生まれました。
- APIでも利用できますか?
-
DeepSeekはAPIでも利用でき、OpenAIの1/27でAPIを使えることから多くのユーザーが使いやすくなりました。
さらに、オープンソースとしてDeepSeek-R1を活用してモデルを再利用や改良、検証できるため需要が高まることでしょう。
- 日本語に対応していますか?
-
DeepSeekは中国の企業が作ったサービスですが、日本語に対応しているので安心です。
日本語でメッセージ欄に質問すれば、日本語で回答してくれます。
- 安全性に問題はないですか?
-
DeepSeekは高性能で安価で提供されていることから、AI業界で大きな注目を集めています。
一方で、安全性に対する懸念が高まっていることも事実です。
DeepSeekは中国企業であることから、集めたデータが中国政府に渡るといわれており、各国の企業や政府機関が利用を制限している場合もあります。
例えば、アメリカでは海軍やNASAなどの機関がDeepSeekの利用を控えるように指示を出しています。
また台湾では公的機関の職員がDeepSeekを使ってはいけないといった措置を発表。
AIで入力したメールアドレスや電話番号などの個人情報や、テキストや音声デバイス情報などが含まれています。
そのため、政府機関や大手企業がDeepSeekを使うことによって重要な情報が漏れるリスクがあるのです。
- 画像は生成できますか?
-
DeepSeekは2025年1月に、Janus Pro(ヤヌスプロ)とよばれる画像生成AIを発表。
Stable Diffusion XLやDALL-E 3と変わらないほどの性能を持つと評判です。
デカップリングとよばれる、画像を理解する手順と生成の手順をそれぞれ違う経路で進めていきます。
別の経路で進めることで、それぞれの作業が干渉することがなく精度を高めることに成功。
まとめ
この記事では、DeepSeekについてまとめました。
最後に重要な点をおさらいしておきましょう。
- DeepSeekは2023年に中国で起業したばかりのAIスタートアップ企業
- DeepSeek-R1はOpenAIのモデルに匹敵すると話題
- 高性能でありながら、価格が安いことも特徴
- 対話型AIアプリで画像やドキュメントの読み込みも可能
DeepSeekはスタートアップ企業でありながら、設立した梁文峰氏は複数のAIを使った投資会社を立ち上げた実力者。
1年でOpenAIのモデルに匹敵するDeepSeek-R1を低コストで提供できるサービスを提供しています。
あまりの性能の高さと価格の安さにショックといわれることもありますが、今後どのようなAIモデルが登場するのか注目が集まります。