プログラミングコードを自動生成できるツールの一つとして、GPT-Engineer(ジーピーティーエンジニア)は有名です。
しかし、以下のように感じている人もいるかもしれません。
- GPT-Engineerの特徴を知りたい
- 利用するまでの手順が分からない
- 2種類の使い方の違いや料金形態が気になる
結論からいうと、GPT-Engineerはアプリケーション開発に特化した強力なコード生成ツールで、オンラインサービスとローカル環境で異なる使い方が可能です。
本記事では、GPT-Engineerの概要や特徴、具体的な使い方までを詳しく解説します。
GPT-Engineerの導入を検討している方や、AIを活用したアプリ開発に興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
GPT-Engineer(ジーピーティーエンジニア)とは?5つの特徴
GPT-Engineerとは何かを、以下5つの特徴から解説します。
- 自然言語で指示した内容のプログラミングコードを生成する
- アプリケーション開発に特化している
- 複数のプログラミング言語に対応している
- オンラインサービス版とローカル環境版の2種類がある
- オンラインサービスでは無料利用も可能
1.自然言語で指示した内容のプログラミングコードを生成する
GPT-Engineerは、人が話す言葉(自然言語)による指示を理解し、それに基づいてプログラミングコードを自動生成するツールです。
「ログイン画面を作成して」や「データベース接続を設定して」と日本語で指示するだけで、書かれた内容を実現できるコードが作れます。
作成できるジャンルは幅広く、以下のようなアプリも作成可能です。
- 集客するためのランディングページ(LP)
- ログインや管理機能を実装したサイト・ツール
- ブラウザ上で動作するゲームアプリ
- AIを用いたチャットアプリ
プログラミングの経験や技術を持たないユーザーでも簡単にコードを生成できる点が、GPT-Engineerの大きな利点です。
2.アプリケーション開発に特化している
GPT-Engineerはアプリケーション開発を目的として設計されています。
作りたいアプリの概要や仕様を説明するだけで、基本的な仕組みを自動的に構築してくれます。
同じことをChatGPTでやろうとした場合、アプリを開発するという目的から事細かに説明しなければなりません。
AIを利用したアプリケーションを開発するのであれば、効率よくコードを作成・修正できるGPT-Engineerがおすすめです。
さまざまなサービスと統合している
GPT-Engineerは、アプリケーション開発に関連したさまざまなサービスと統合しています。
統合済みの代表的なサービスは、ソースコードを管理できるGitHubと、データベースを管理できるSupabaseです。
これらのサービスのアカウントをGPT-Engineerに接続することで、開発がスムーズに進められるようになるでしょう。
また、以下のサービスもGPT-Engineerと公式に統合しており、複雑な機能も簡単な指示だけで作成することが可能です。
- Runware|テキストから画像を生成する機能
- OpenAI|CharGPTモデルを利用したAI機能
- Anthropic|Claudeモデルを利用したAI機能
- Stripe|支払い処理機能
- Three.js|3Dグラフィック機能
- Resend|電子メール機能
- D3.js|チャートを作成する機能
- Highcharts|グラフを作成する機能
- p5.js|ジェネレーティブアート等のグラフィックを描画する機能
3.複数のプログラミング言語に対応している
GPT-EngineerはChatGPTを活用してコードを生成するため、ChatGPTが対応しているプログラミング言語に対応しています。
とくに、よく利用されている以下のような言語であれば問題なくコードを生成できます。
- Python
- JavaScript
- Java
- C#、C++
- HTML、CSS
- SQL
- Ruby
多くの言語に対応しているため、マイナーな言語での開発や、他言語への変換などもスムーズに実行できるでしょう。
4.オンラインサービス版とローカル環境版の2種類がある
GPT-Engineerは、インターネット上で提供されているオンラインサービス版と、個人のPCにインストールして利用するローカル環境版の2種類があります。
オンラインサービス版であるLovable(旧gptengineer.app)は、アカウントを作成すれば準備する手間なく使えるので便利です。
一方ローカル環境版は、インストールする手間がかかるものの、すでに開発中のコードを修正するのに利用できるといったメリットがあります。
利用シーンや目的に応じて使用方法を選択すると良いでしょう。
5.オンラインサービスでは無料利用も可能
オンラインサービス版ともいえるLovableでは、基本的な機能を無料で利用できます。
一日5メッセージまで実行できるため、日ごとの利用時間が短かければ課金せずに使い続けることも可能です。
一日のメッセージ回数を増やしたり、一般公開せずに開発したりしたい場合は有料プランを検討してみてください。
用意されているプランの種類と違いは以下のとおり。
プランごとの違い | Freeプラン | STARTERプラン | LAUNCHプラン | SCALEプラン |
---|---|---|---|---|
料金(月額) | 無料 | 20ドル | 50ドル | 100ドル |
メッセージ回数 | 5回/日(月50回まで) | 5回/日+100回/月 | 5回/日+250回/月 | 5回/日+500回/月 |
非公開設定 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
バッジ(Edit with Lovable表示)を隠す | × | 〇 | 〇 | 〇 |
新機能の早期アクセス権 | × | × | × | 〇 |
VIPイベント | × | × | × | 〇 |
ちなみに、SCALEプランには月ごとのメッセージ回数を増やしたプランも存在します。
- SCALE1(500回/月):月額100ドル
- SCALE2(1000回/月):月額200ドル
- SCALE3(1500回/月):月額294ドル
- SCALE4(2000回/月):月額384ドル
- SCALE5(3000回/月):月額564ドル
- SCALE6(4000回/月):月額736ドル
- SCALE7(5000回/月):月額900ドル
ローカル環境ではトークン使用量に応じた料金に
ローカル環境版では月額は発生しない代わりに、入出力した文字数(トークン量)に応じた料金がかかります。
日本語では1文字あたり1~3トークン程度、英語では1単語あたり1~2トークンになることを考慮し、使用量に注意する必要があるでしょう。
標準モデルのGPT-4oを利用した場合の料金は以下のとおり。
- 2.5ドル(入力100万トークンあたり)
- 1.25ドル(キャッシュされた入力100万トークンあたり)
- 10ドル(出力100万トークンあたり)
GPT-Engineerを実行するたびにOpenAIのAPIアカウントから差し引かれるため、使用する前に費用の入金が必要です。
Lovable(旧gptengineer.app)の使い方
オンラインサービスとして利用できるLovableでGPT-Engineerを利用する方法を、以下のステップで解説します。
- アカウントを作成してログインする
- 作成してほしいアプリの概要を入力する
- 処理が終わるのを待つ
- アプリが正常に動作するか確認する
- 作成したアプリを公開する
アカウントを作成してログインする
Lovableを利用するのに必要なアカウントを作ります。
Lovableのサイトにアクセスし、右上の「Sign in」をクリックしてください。
以下いずれかの方法でアカウントを作成すると、そのままログインできます。
- GitHubアカウントを接続する
- Googleアカウントを接続する
- メールアドレスを登録する
ログイン時にアンケートが表示されますが「Skip」ボタンでスキップしてOKです。
作成してほしいアプリの概要を入力する
トップページの入力欄に、作成してほしいアプリの概要を入力します。
入力は日本語でもOKなので、どういった仕様のアプリを作りたいか伝えましょう。
今回はシンプルに「チェスのゲームアプリを作ってほしい」とだけ入力しました。
処理が終わるのを待つ
概要を入力してエンターキーを押すと、自動的にアプリの構築が始まります。
しばらく時間がかかるので、処理が終わるのを待ちましょう。
なお、作成するアプリによっては仕様に関して質問される場合もあります。
処理中に何か質問されたときは、左下のチャット欄で返答してください。
アプリが正常に動作するか確認する
処理の完了時にアプリが自動的に実行されるので、正常に動作するか確認します。
今回はチェスのゲームを作成したので、対戦できるかどうかチェックしましょう。
実際にプレイしたところ、どの駒も好きな場所に動かせる問題が見つかりました。
アプリが想定した動きになるよう、コードを修正して完成を目指してください。
生成されたコードを修正するには
コードを修正するには、チャットの入力欄に修正内容を書いてお願いする必要があります。
たとえコーディングの知識があったとしても、Lovable上では直接書き換えることはできません。
「それぞれの駒の移動範囲を正しく設定してください。正しくない場所に移動させようとしたときは元に戻してください」のように指示を出しましょう。
アプリを再読み込みすると、正しくない移動の場合にメッセージが表示されるようになりました。
もし修正した内容を元に戻したいときは、画面左上の「History」を押して前バージョンのコードをReStore(復元)してください。
作成したアプリを公開する
満足いく仕様にできたら、アプリを公開して使ってもらえる形にしましょう。
画面右上にある「Publish」を押して公開メニューを開き「Deploy」ボタンでアプリを公開してください。
ボタンを押してしばらく待つと、アプリサイトが公開された旨が表示されます。
表示されているURLをシェアして、アプリに触れてもらいましょう。
ローカル環境でGPT-Engineerを使う手順
ローカル環境(自分のPC)でGPT-Engineerを使う方法について、以下の6ステップで解説します。
- OpenAIのAPIキーを取得する
- Pythonをインストールする
- ターミナルでコマンドを入力する
- APIキーを設定する
- 任意のフォルダにpromptファイルを作成する
- gpteコマンドを実行する
OpenAIのAPIキーを取得する
ローカル環境でGPT-Engineerを利用する際は、OpenAIのAPIキーを取得する必要があります。
OpenAIのサイトにアクセスし、右上の「Log in」を押してください。
ログイン画面になるので、以下いずれかの方法でログインしましょう。
- Googleアカウントを利用する
- Microsoftアカウントを利用する
- Appleアカウントを利用する
- メールアドレスでログインする(アカウントがない場合は先にサインアップする)
ログインすると「Start building」ボタンが表示されるので押します。
以下の項目を入力して「Create organization」で進みます。
Organization name | 組織名。英数字とスペースを入力できる |
What best describes you? | 技術力があるかどうか。 Very technical:上級者Somewhat technical:やや技術者Not technical:技術者ではない |
招待するチームメンバーのメールアドレスを聞かれますが、一番下の「I’ll invite my team later」をクリックして飛ばしてOKです。
APIキーとプロジェクトの名前をそれぞれ入力したあと「Generate API Key」ボタンを押すことで、APIキーを生成できます。
以上の操作でOpenAIのAPIキーを取得可能です。
あとで使うので、コピーして保存しておきましょう。
生成したAPIキーは、ダッシュボード画面のメニュー「API keys」で確認できます。
OpenAIアカウントにはクレジットを入金しておく
APIキーを使ってGPT-Engineerを利用する際、使用した量に応じてクレジットを消費します。
クレジットを入金していない場合は、APIキーを生成したあと「Continue」ボタンを押して、必要な額だけ入金してください。
APIキー生成画面から離れた場合は、設定画面のメニュー「Billing」内の「Add to credit balance」ボタンから入金できます。
試しに動かす程度であれば、最小額の5ドルで十分です。
クレジットカードの情報を入力し、支払いを確定させましょう。
Pythonをインストールする
GPT-Engineerを利用するのに使うPythonをインストールしていない場合、公式サイトで入手します。
公式サイトにアクセスし、最新バージョンをダウンロードしてください。
ダウンロードしたファイルを実行し、インストールを完了させればOKです。
インストールを進める途中で「Add python.exe to PATH」のチェックは必ず入れておきましょう。
ターミナルでコマンドを入力する
Pythonを手に入れたら、GPT-Engineerを自分のPCにインストールします。
GPT-Engineerを置きたい場所で右クリックし、メニューの「ターミナルを開く」を選択してください。
開いたターミナルで、以下のコマンドを順に実行します。
- git clone https://github.com/gpt-engineer-org/gpt-engineer.git
- cd gpt-engineer
- poetry install
- poetry shell
もしpoetryがインストールされていなければ、事前に以下のコマンドを入力しておきましょう。
- (Invoke-WebRequest -Uri https://install.python-poetry.org -UseBasicParsing).Content | python –
するとインストール処理が始まるので、完了するまで待つだけです。
処理が止まり、再びキーを入力できるようになったらOKです。
APIキーを設定する
GPT-EngineerがAPIキーを読み取れるように設定します。
ターミナルを開いた場所に作成された「gpt-engineer」フォルダの中にある「.env.template」ファイルの名前を「.env」に変更してください。
名前を変更したら.envファイルをメモ帳で開き「OPENAI_API_KEY=…」の行の「…」部分を、OpenAIで取得したAPIキーに差し替えましょう。
編集後は保存するのを忘れずに。
任意のフォルダにpromptファイルを作成する
GPT-Engineerがアプリを作る際に参照するプロンプト(指示文)を作成します。
作成したアプリを置きたいフォルダの中に「prompt」という名前のファイルを作成してください。
ファイル名をpromptにする際、名前の後ろについている拡張子(.txtなど)を必ず消しましょう。
名前を変更したらpromptファイルをメモ帳などで開き、プロンプトを書きます。
今回は「オセロのゲームアプリを作成してください」と入力しました。
gpteコマンドを実行する
GPT-Engineerを実行し、いよいよアプリを作成します。
ターミナルで次のコマンドを実行し、GPT-Engineerにプロンプトを処理させましょう。
- gpte (promptファイルを置いているフォルダのパス)
たとえば、PCのCドライブにあるgpt-testフォルダ内にpromptファイルがある場合、入力するコマンドは「gpte C:\gpt-test」となります。
パスを入力する際、フォルダを右クリックして「パスのコピー」を選択すると便利です。
コマンドを実行して処理が進むと「Do you want to execute this code? (Y/n)」と表示されるので、Yキーを押してください。
プロンプトを保存してよいか聞かれるので、受け入れるのであればyキーを、拒否するのであればnキーを押しましょう。
以上の操作で、promptファイルを置いていた場所にアプリのコードが作られます。
ちなみに、今回のコード生成にかかった費用は1~2円程度です。
Xserver VPSを利用するのもおすすめ
今回はローカル環境で利用する方法を解説しましたが、Xserver VPSなどの仮想サーバーサービスでGPT-Engineerを使うのもおすすめです。
Xserver VPSで利用する場合、以下のようなメリットがあります。
- GPT-Engineerアプリイメージを利用してスムーズにインストールできる
- 自宅にPCがなくても利用できる
- 24時間稼働によりチームで共同利用しやすい
- セキュリティ性が高い
電話やメールでサポートを受けられるため、分からないことがあっても解決できるでしょう。
以下のリンクから申し込めるので、GPT-Engineerの利用を検討しているのであればチェックしてみてください。
GTP-Engineerに関するQ&A
GTP-Engineerに関する、よくある質問と回答を紹介します。
- 有料で利用するメリットは?
- オンラインサービス版とローカル環境版のどちらを使えばよいですか?
- 作成したコードをGitHubで管理できますか?
- 既存のコードをインポートできますか?
- スマートフォン用のアプリを開発できますか?
- ChatGPTやAuto-GPTとの違いは?
- 有料で利用するメリットは?
-
GPT-Engineerを有料で利用する最大のメリットは、非公開の状態で開発できる点です。
無料のフリープランではプライベート設定にできないため、開発中のページに誰でもアクセスできてしまいます。
コードを公開しないで開発を進めたいのであれば、STARTER以上の有料プランに加入するか、ローカル環境でGPT-Engineerを利用するようにしましょう。
- オンラインサービス版とローカル環境版のどちらを使えばよいですか?
-
どちらを使うか迷ったら、無料で使えるオンラインサービス版(Lovable)がおすすめです。
- オンラインサービス版…小規模なプロジェクトを開発する初心者向き
- ローカル環境版…プログラミング知識のある開発者向き
まずはオンラインサービスで試し、プロジェクト規模や利用頻度に応じて切り替えてみてください。
- Lovableで作成したコードをGitHubで管理できますか?
-
Lovableで作成したコードはGitHubで管理できます。
GitHubとの連携機能を利用することで、作成したコードをダウンロードしたり編集したりすることも可能となります。
GPT-Engineerを活用する幅が広がるので、Lovableを利用するときはGitHubを連携させましょう。
画面右上の「Edit code」からGitHubを連携してください。
- 既存のコードをインポートできますか?
-
Lovableでは既存のコードをインポートできません。
ただし、ローカル環境であれば既存のコードに対してGPT-Engineerを利用することも可能です。
既存のコードが保存されたフォルダに「prompt」ファイルを配置し、コードを編集するプロンプトを書いたうえで実行させてください。
- スマートフォン用のアプリを開発できますか?
-
いいえ、GPT-Engineer自体はスマートフォン用アプリを開発できません。
ブラウザ上のWebアプリの開発にGPT-Engineerを利用しましょう。
ただし、生成されたコードをコピーし、別の開発ツールに取り込むことで、間接的にスマートフォン用アプリの開発に使うことは可能です。
- ChatGPTやAuto-GPTとの違いは?
-
GPT-EngineerやChatGPT、Auto-GPTには以下のような点が大きく異なります。
GPT-Engineer プログラミングに特化しており、指示した内容のコードを自動的に生成する ChatGPT 幅広いニーズに対応できる分、明確な指示が必要となる Auto-GPT ユーザーが設定した目標に基づいて、複数のタスクを自律的に連続して実行する 目的や用途に応じて、これらのツールを使い分けましょう。
ChatGPTを活用したプログラミングとは?コードの生成方法や開発のコツを解説 | meta land 本記事では、プログラミングでChatGPTを活用する方法やコツ、注意点などを解説します。プログラミングの知識がなくても使えるので、興味のある方はぜひ最後までご覧くださ…
まとめ
本記事では、GPT-Engineerについて解説しました。
最後に、記事の内容をおさらいしておきましょう。
- GPT-Engineerは自然言語の指示からプログラミングコードを自動生成するツール
- アプリケーション開発に特化しており、さまざまな言語に対応している
- オンラインサービス版(Lovable)とローカル環境版の2種類が提供されている
- Lovableでは基本機能が無料で利用でき、有料プランも用意されている
- ローカル環境版ではトークン使用量に応じた料金体系となっている
GPT-Engineerは、ChatGPTやAuto-GPTとは異なりプログラミングに特化したツールです。
コードの修正やGitHub連携など、開発に役立つさまざまな機能を備えています。
GPT-Engineerを活用することで、プログラミング経験の有無に関わらず効率的なアプリケーション開発が可能になるでしょう。