近年ではビジネスシーンでAIを利用するのが当たり前のことになりつつあります。しかし、
- AIを利用すると、どのようなメリットがあるか知りたい
- デメリットや問題点があるか知りたい
- ビジネスシーンで実用性があるのか知りたい
このように思っている人は多いのではないでしょうか?結論からいえばAIを活用すれば、生産性の向上や人的リソースやコストの削減、顧客満足度の向上など、さまざまなメリットが得られます。
一方で、ビジネスそのものを頓挫させかねない大きな問題を引き起こすことも。
そこで本記事ではAIを使うメリットやデメリット、実際に使用事例に関して解説します。ビジネスシーンでのAIの活用を考えている人はぜひ参考にしてください。
AIを利用するメリット5つ
AIを利用するメリットは数多くありますが、主だったところでは以下が挙げられます。
- 生産性向上
- 人的リソースとコストの削減
- ヒューマンエラーや事故の現象
- マーケティング精度の向上
- 遠隔コミュニケーションの円滑化
生産性向上やリソース・コストの削減をはじめ、ほぼすべての企業にとって重大な部分に多くのメリットをもたらします。それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
1.生産性の向上
AIを利用すれば、生産性を大幅に向上させられます。人間が不得意なことを、機械が故の正確性で素早くこなせるからです。
たとえば、業務マニュアルを作成するケースを考えてみましょう。人間が書いた場合は、誤字や脱字などが発生する可能性があります。しかしAIの場合は、きちんとしたオペレーションが実施されているなら、間違えることはありません。
またAIは人間と異なり、過酷な環境下でも24時間休みなく連続して作業が可能です。さらにメンタルに左右されず、人間のように精神的な要因で作業効率や品質を落とすこともありません。
人間が不得意なことを代理させている間、人間にしかできない高度な作業に集中できるため、さらに生産性は高まるでしょう。
2.人的リソースとコストの削減
人的リソースやコストを削減できるのも大きなメリットです。
AIを活用すれば、これまで人間がやっていた作業の一部を自動的に進められます。たとえば、以下のようなケースが考えられるでしょう。
- AIチャットボットを活用してカスタマーサポートの代わりにする
- Chat GPTなどを活用してメールの文章などを出力する
- AI画像生成ツールを利用してイラストを出力する
- 人事評価基準をAIによって生成し平等な評価を実施する
このように、人間がやっていたことをAIが担当することで、リソースやコストを削減可能です。たとえばAIチャットボットを導入するだけでも、オペレーターを動員する必要がなくなります。そうすれば相当のリソースやコストをカットできるでしょう。
一例として、Googleは無料のAIチャットボットのNotebookLMを公開しています。これを使うだけでもある程度リソースやコストをおさえられるでしょう。
余ったリソースやコストを別の業務に投下すれば、生産性なども向上します。
3.ヒューマンエラーや事故の減少
ヒューマンエラーや事故を防止できるのも、大きなメリットです。先述しましたが、規律を持って動くAIは、人間のようなミスを犯しません。また、ミスや故障を検知することにも長けており、事前に事故のリスクを発見できるようになります。
一例として、宮崎県の一部で使われている海難事故防止技術、みまもりシステムが挙げられます。
みまもりシステムは、海流や風向きなどを分析し、危険があればそれを報告する技術。これにより、海難事故を防止できるようになっています。
またAIをロボットに組み込めば、人間が立ち入れない危険な環境でも、自身でできます。これもヒューマンエラーや事故の防止に役立つでしょう。
4.マーケティング精度の向上
マーケティング精度を向上させられるのも大きなメリットです。専用のAIツールが多々あり、これらがマーケティングの分野で存在感を発揮しています。
たとえばWebマーケティング企業オプトはAIツールCRAIS for Textを開発、運用しています。
ChatGPTを活用した同ツールでは、広告用のテキストを生成したり、その効果を測定したりし、適切な広告運用の形を見出すことが可能です。
その他、CTR(広告の表示回数の割合)・CVR(購入や申し込みに至った割合)を予測したり、オーバーレイを自動修正したりする機能もあります。
5.遠隔コミュニケーションの円滑化
遠隔コミュニケーションがやりやすくなるのも大きなポイントです。AIを搭載したチャットツールなどが台頭し、リモート環境下でも密なやりとりができるようになりました。
たとえば、社内SNS・ビジネスチャットであるWowTalkには、ChatGPTを活用したAIアシスタントが搭載されています。AIは、商品や社内状況を学習し、利用者が質問したとき、適切な回答をおこないます。
本来なら営業・マーケティング・技術部門などの担当者に直接聞かなければ解消できない問題も、リモート環境下で解決できるわけですね。
リモート環境下でのコミュニケーションロスは、多くの企業にとって大きな問題。しかしAIが間に入ることで、遠隔でもやり取りが円滑化されます。
AIを利用するデメリットと問題点
一方でAIを利用することにはさまざまなデメリットと問題点もあります。一例として以下が挙げられます。
- 法整備の不足による法的問題の発生
- AIの特性を逆手に取った悪用
- AIツール運用にかかるコスト増加
- 作業工程などのブラックボックス化
このようにAIを使うことには多くのデメリットがあり、それを理解して活用するのが重要となります。それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
法整備の不足による法的問題の発生
まず、AIに関する法整備が追いついておらず、法的なトラブルが起こりうる点が挙げられます。
2024年3月18日現在、日本ではAIに関する法律が施行されておらず、何が合法で何が違法か判然としない状態にあります。
たとえばAIによって出力されたイラストは、場合によっては著作権侵害に該当するかもしれません(参考文献:東洋経済オンライン)。
何の問題もないと思って使っていたイラストが、誰かの著作物に類似し、その著作者から告訴される、といったことも考えられます。法整備が追いついておらず、法的責任を負わされるリスクがあるのは、大きなデメリットです。
一方で自社・自身側の権利を侵害されたうえ、法的に保護されないなどの問題も考えられます。一刻も早い法整備が望まれます。
EUでは、世界初となる人工知能(AI)の包括的な規制法案が可決されました。2026年にEU加盟国での施行を予定しています。
世界標準ルールとすることを目的としているため、日本でも同様のルールが設定される可能性も考えられるでしょう。
日本でもAIツールを利用したビジネスを行い、EUの顧客が対象となれば法案が適応されることに。違反すると制裁金が課せられるため、注意が必要です。
AIの特性を逆手に取った悪用
また、AIが悪用されうるのもデメリットです。
AIを使って、作業効率を高めたり、あるいは生活が便利になったりするなら問題ありません。しかし高度な性能を逆手に取り、以下のように悪用されるケースもあります。
- AIの学習能力を利用し巧妙な詐欺を仕掛ける
- ディープフェイク動画など、他者の肖像権や著作権を侵害するコンテンツを制作する
- ハッキングなどでAIに干渉し、誤った内容を学習させる
このようにAIが悪い方向で活用され、他者の資産を奪ったり、権利が侵害したりするなどの問題も散見されます。
実際にディープフェイクを使って、8,500万円を詐取した事件もありました。
これらを完全に取り締まるのは困難です。したがって個人もしくは企業の自衛意識が求められるでしょう。
AIツール運用にかかるコスト増加
またAIツール運用にかかるコストも増加するでしょう。
近年ではさまざまなツールがリリースされ、またその目的も多様化しています。マーケティングや社内SNS、チャット、セキュリティ強化など、さまざまです。
そうすると数多くの有料のAIツールを導入を検討する必要があるでしょう。そしてそれらを実際に導入するなら、相応の初期費用とランニングコストが生じます。
あまりにも多くのAIツールを導入すると、生産性は向上する一方、そのコストが大きな負担になるかもしれません。
予算に余裕がない場合でも、AIの進歩や業界のトレンドによって導入せざるを得ない状況に陥ることもあり得ます。
作業工程などのブラックボックス化
作業工程などがブラックボックスになる点にも注意してください。ここでいうブラックボックスとは、「AIが何らかの結論を出すものの、その判断の根拠が不明になる現象を指します。
たとえば、AIを人事採用に活用するケースを考えてみましょう。Amazonでは、2017年ごろ、AIツールを使って適切な人員を採用する仕組み作りに取り組みました。
しかしAIが女性差別的な評価基準を持ってしまい、大きな批判を受けることとなりました。そのうえ、なぜそのような評価基準に到達したかがブラックボックス化しており、原因究明できず、結果としてAIによる人事採用が中断されています。
このようにAIの作業工程がブラックボックスに入ってしまうと、正しい結論を導き出せない、それに至った根拠を提示できないなどの問題が生じるわけですね。
AIの活用事例
メリットとデメリット両面があるAIですが、すでに長所を活かした活用事例が多々あります。
今回は特に効果的かつ社会的な意義もある以下の事例を紹介します。
- AI管理サービスを利用して自社運送車両の無事故化|有限会社春華堂
- AIチャットボットを導入して業務効率化|パーソルテンプスタッフ
- AIを活用した画像解析でがんを早期発見|神戸大学など
AI管理サービスを利用して自社運送車両の無事故化|有限会社春華堂
銘菓のひとつ、うなぎパイを取り扱う春華堂は、AIを搭載した運行管理ツールVehicle Managerを導入しています。
ツールの導入により、同社は、所有する17台の運送車両の、加速・ブレーキ・速度オーバーなどを一元的に確認できるようになりました。
またドライバーに対して安全運転に対して表彰する旨を伝えます。結果としてドライバーは無理のない運転を心がけるようになり、導入4ヶ月、無事故記録を更新しています。
また下記のように、士気の向上などの効果があり、ひいてはブランドイメージの向上につながりました。
AIチャットボットを導入して業務効率化|パーソルテンプスタッフ
人材派遣会社のパーソルテンプスタッフでは、AIチャットボットのひとつ、exaBase FAQを活用して業務を効率化しています。
同社の主要サービス、ジョブチェキには、上図青枠内のようにチャット用のポップアップが現れます。ユーザー(派遣の仕事を探している人)は、チャットボットとテキストで会話する形で、仕事を探す、質問することが可能。
exaBase FAQに搭載されたAIは、あらかじめ登録された知識やこれまでの検索結果に基づき、よりよいチャットサポートを自動的に見出します。これによりユーザーはより正確な回答を得て、同社はユーザーサポートに関係する業務を効率化することに成功しました。
AIを活用した画像解析でがんを早期発見|神戸大学など
医療面でもAIは活用されています。医療機器や医薬品の開発を修行とする富士フィルムと神戸大学は、AIツールを使って膵臓がんを発見するプログラムを確立しました。
AIに膵臓がんのCT画像をインプットし、患者に同様の特徴が見受けられる場合、膵臓がんの疑いがあると知らせる仕組みです。その精度は高く、9割ほどの確率でがんを発見できています。
膵臓がんを見つけるのは困難で、発症した場合の死亡率も非常に高いものでした。しかしこのプログラムの登場により、早期発見、もしくは死亡を回避できるなどの期待が高まっています。
AIを利用するメリット・デメリットに関するよくある質問
本記事ではAIのメリットやデメリットに関して解説しました。
ここではよくある質問に回答します。
- このままAIが発達した場合のメリットとデメリット
- 生活面におけるAIのメリットは
- AIに依存しすぎるとどうなるか
- このままAIが発達した場合のメリットとデメリット
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このままAIが発達した場合、前述の生産性の向上や事故の防止をはじめとしたメリットを、より高いレベルで得られるでしょう。人間が働かなくても、多くの成果を、より効率的に得られるようになりそうです。
一方でAIツールの運用コストの発生や、作業工程のブラックボックス化などのデメリットも強くなるでしょう。
またAIが人の仕事を奪ってしまうことも問題視されています。生成AI活用普及協会は、事務員やライティング、工場のオペレーションやフロント業務などはAIで代替可能との見解を示しています(参考文献:生成AI活用普及協会)。
一方で営業やコンサルティング、カウンセラーなどの対人職はAIに代替えされにくいとされます。もし仕事を失いたくないのであれば、AIではできないことに特化するのを心がけたほうがよいかもしれません。
- 生活面におけるAIのメリットは
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生活面においては、利便性の向上や生活費の削減、障がいに対するサポートなどのメリットが期待できます。たとえば近年では、AIを搭載したロボット掃除機が台頭しています。
これはAI搭載型のロボット掃除機のひとつ、D10sProです。AIが画像認識によって部屋の構造を学習し、効率的かつ効果的な清掃を実施できるようになります。
このように日常生活でもAIが登場し、暮らしをサポートするようになりつつあります。
- AIに依存しすぎるとどうなるか
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AIに依存すると、たとえば以下のような問題が起こるでしょう。
- 人間が何かを習熟する必要性が失われ、能力が低下する
- AIに不具合が生じた場合、本来の機能を果たせなくなる
- 倫理的、道徳的でない影響が生じやすくなる
まずAIが発達しすぎると、人間が能力を高める必要がなくなり、ある意味で退化する可能性があります。またAIも大元は機械にすぎず、そこに不具合が生じると本来の機能を果たせなくなるかもしれません。
さらに倫理や道徳まで学習できないAIが、人道に反する判断を下し、それが実生活に影響を与えるかもしれません。
映画作品で描かれたAI依存の未来AIをはじめとした技術発展による弊害は、これまで多くの作品で描かれてきました(いわゆるSF)。
ディズニー映画のウォーリーでは、環境汚染によって居住不可能になった地球を脱して、宇宙船で暮らす人々の様子が描かれています。
宇宙船にはAUTOという人工知能、つまりAIが搭載されています。人間はAUTOによって身の回りを世話されており、歩く能力すら損ないました。
もちろんこれはフィクションであり、AIを活用したからといって、ただちに歩行できないほど退化するとは限りません。しかしウォーリーのように多くの映画が示唆するような状態にならないため、AIに依存せず活用する姿勢が、今後は重要になるかもしれません。
まとめ
この記事では、AIを活用するメリットとデメリット、活用事例について解説しました。
最後に重要な点をおさらいしておきましょう。
- AIを活用するメリットは生産性の向上や人的リソースとコスト削減など
- デメリットはAIツール運用のコスト増加や作業工程はブラックボックス化すること
- 問題点は法整備不足による法的問題発生やAIを悪用することによる被害
- AI管理サービスを活用して自社運用車両の無事故化に活用されている
- AIチャットボットによる業務効率化にも活用
AIを活用すれば、これまで人間が担ってきた作業を自動化し、人的リソースやコスト削減が可能です。一方で、法整備がまだ整っていないことで、気づかぬうちに法的問題が発生するリスクも存在します。
AIについてよりよく知り、安全かつ効果的に業務や生活に役立てていくことが重要でしょう。