2024年、Googleは開発者向けにAIモデルを試せるプラットフォームGoogle AI Studioを発表し、大きな注目を集めています。
しかし、次のような疑問を持っている方も多いでしょう。
- Google AI Studioで具体的に何ができるのか知りたい
- 専門知識がなくても使えるか知りたい
- 料金がかかるのか知りたい
結論から言うと、Google AI Studioは、Googleの最新AIモデルを無料で試せる開発者向けのプラットフォームです。直感的な操作でAIの出力を試したり、アプリケーション開発のプロトタイプを構築したりできます。
今回は、Google AI Studioの基本的な特徴から、具体的な使い方までを詳しく解説します。
AI開発に興味がある方や、最新のAI技術に触れてみたい方は、ぜひ本記事を最後までご覧ください。
Google AI Studioとは?5つの特徴

ここでは、Google AI Studioの主な特徴について、以下の順で解説します。
- 多様なAIモデルが用意されている
- パラメータを操作して出力を調整できる
- 無料での利用が可能
- 外部サービスと連携できる
- 他ユーザーと共有できる機能もある
1.多様なAIモデルが用意されている
Google AI Studioは、開発者がGoogleの強力なAIモデルを手軽に利用できるプラットフォームです。
その最大の特徴は、多様なモデルラインナップにあります。
高性能なマルチモーダルAIであるGeminiや、オープンソースで軽量なGemmaなど、用途に応じて最適なモデルを選択可能です。
さらに、開発中の先行モデルも提供されることがあるため、常に最先端のAI技術を試せます。
2.パラメータを操作して出力を調整できる
Google AI Studioでは、AIの出力を細かく調整するためのパラメータが用意されています。
例えば、「Temperature」パラメータを調整することで、生成されるテキストの創造性をコントロールできます。
温度を高く設定するとより独創的で多様な表現になり、低くするとより決定的で一貫性のある出力が得られます。
他にも、出力の長さを制限する「Output length」など、様々なパラメータを直感的に操作し、生成結果を最適化することが可能です。
3.無料での利用が可能
Google AI Studioは、Googleアカウントさえあれば誰でも無料で利用を開始できます。
無料プランでも、多くのモデルや機能を試すことができ、1分あたりのリクエスト数に制限はあるものの、学習や個人的な試用には十分な範囲です。
プラットフォーム上で機能を試すだけなら費用はかからない手軽さが、AI開発のハードルを大きく下げています。
なお、本格的なアプリケーション開発でAPIを利用する場合や、無料枠の上限を超えて利用する際には料金が発生します。
4.外部サービスと連携できる
Google AI Studioは、外部のデータやサービスと連携する機能も備えています。
例えば、特定のURLを指定して、そのWebページの内容をAIにコンテキストとして読み込ませるURL context機能が使えます。
また、API呼び出しにも対応しており、外部データをリアルタイムで取り込めるAIアプリケーションも構築することが可能です。
こうした機能を活用することで、チャットボットのようなシステムから複雑な計算が必要な報告書作成まで、多様な使い方ができるでしょう。
5.他ユーザーと共有できる機能もある
Google AI Studioには、作成したプロンプトやプロジェクトを他のユーザーと共有する機能があります。
生成した結果や設定を保存し、共有可能なリンクを生成することで、チームメンバーや共同研究者と同じ環境で作業を進めることが可能です。
また、他のユーザーが生成したプロンプトや画像が公開されている場合もあるため、参考にしたり利用したりできます。
一人ではできない開発も、Google AI Studioを通して他のユーザーと協力すれば実現できるかもしれません。
Google AI Studioの始め方と使い方

Google AI Studioを始めるのは非常に簡単で、特別な準備は必要ありません。
ここでは、Google AI Studioの始め方と基本的な使い方を、以下の手順で解説します。
- Googleアカウントでログインする
- 使うモデルを選択する
- 出力に関するパラメータを設定する
- プロンプトを入力して実行する
1.Googleアカウントでログインする
Google AI Studioを利用するために、まずは公式サイトにアクセスし、ログインボタンを押してください。

必要なものはGoogleアカウントだけです。
Googleアカウントでログインするとチャット画面に移動し、すぐに利用を開始できます。

2.使うモデルを選択する
プロンプトを入力するチャット画面で、利用するモデルを選択します。
設定欄にあるドロップダウンメニューに現在のモデルが表示されているので、使用したいAIモデルに変更してください。

高速な処理が得意なGemini Flashや、より高度な推論が可能なGemini Proなど、目的に応じてモデルを使い分けましょう。
カーソルを合わせた際に表示される詳細に金額が記載されていますが、これはAPIで利用するときにかかる価格なので、気にする必要はありません。

3.出力に関するパラメータを設定する
モデル以外にも設定できる項目があるので、プロンプトを入力する前に変更しておきます。
選択したモデルによってパラメータが異なりますが、Gemini 2.5 Proでは以下のパラメータを確認・設定できます。
パラメータ | 説明 |
---|---|
Token count | 現在のチャットで入出力したトークン数と、無料で利用できるトークン数の上限。 |
Temperature | 出力のランダム性。 値が高いほど創造的で多様な回答になる。 |
Thinking mode | Thinking(深い推論)モードを使うかどうか。 |
Set thinking budget | Thinkingモードにトークン数を割り当てるかどうか。 ONにするとトークン数を入力できる。 |
Structured output | JSONなどの構造化形式で出力するかどうか。 ONにすると具体的な構造を編集できる。 |
Code execution | リアルタイムにコードを実行する環境を作るかどうか。 |
Function calling | 外部APIを呼び出すかどうか。 ONにすると呼び出すAPIなどを入力できる。 |
Grounding with Google Search | Google検索の結果を参考にするかどうか。 |
URL Context | プロンプトに入力されたURLを参照するかどうか。 |
Safety setting | 有害なコンテンツをブロックする設定。 以下それぞれを段階的に変更できる。 ・Harassment(嫌がらせ) ・Hate(差別的) ・Sexually Explicit(性的) ・Dangerous Content(暴力的、犯罪助長) |
Add stop sequence | 入力した単語が出力された時点で生成を停止する。 |
Output length | 出力される文の最大トークン長。 |
Top P | 次に出る単語の確率分布で許容する合計値。 値が大きいほど単語の候補が増え、出力内容がブレやすくなる。 |
Structured outputなどのツール系は同時に複数使用できないので注意してください。
4.プロンプトを入力して実行する
パラメータの設定が完了したら、いよいよプロンプトを入力します。
中央のテキストエリアに質問や命令を書き込み、Runボタンを押して実行してください。
実行してしばらく待つと、AIからの返答が出力されます。
プラットフォームは英語で表示されていますが、入力するプロンプトは日本語でもOKです。

Googleドライブと連携していない場合、画面を切り替えると出力結果は消えてしまうので注意しましょう。
Google AI Studioのできること5選

Google AI Studioは、単にテキストを生成するだけでなく、多様な機能を活用して様々なタスクを実行できます。
ここでは、Google AI Studioでできることの中から代表的な5つの機能と、その使い方を解説します。
- AIとのリアルタイムな音声対話
- 画像や動画の生成
- アプリの構築
- Googleドライブへの保存
- APIキーの発行と取得
1.AIとのリアルタイムな音声対話

Google AI Studioでは、テキストだけでなく音声を使ったリアルタイムな対話が可能です。
この機能を使うには、左のメニューで「Stream」を選択します。
プロンプト入力欄の下にあるボタンを押すことで、音声だけでなくWebカメラやPC画面を使った入力も可能です。
対話の履歴はテキストとしても記録されるため、後から内容を確認することもできます。
2.画像や動画の生成

Google AI Studioは、テキストから画像や動画などのメディアを生成する機能も備えています。
左のメニューで「Generate Media」を選び、利用するモデルを選択してください。
Imagenを選ぶと画像生成が、Veoを選ぶと動画生成ができます。
生成したいメディアの内容をプロンプトで入力するだけなので、複雑な操作は不要です。
3.アプリの構築

Google AI Studioには、作りたい概要をプロンプトに入力するだけでアプリを開発する機能もあります。
左のメニューで「Build」を選ぶとアプリを開発する画面になるので、実装したい機能を書いてください。
プロンプトを実行するとコードを生成する画面に切り替わり、入力された内容に従ってアプリが構築されていきます。
意図したとおりに動かないときは、さらにプロンプトを実行して修正することも可能です。
4.Googleドライブへの保存

Googleドライブと連携することで、Google AI Studioでの作業内容を保存できます。
左のメニューで「History」を選択してGoogleドライブへのアクセスを許可してください。
連携が完了すると、Googleドライブのマイドライブに「Google AI Studio」フォルダが作成され、以降の作業内容が自動的に保存されるようになります。
保存された内容を削除したいときは。GoogleドライブまたはHistoryの画面で削除することも可能です。
5.APIキーの発行と取得

Google AI Studioで利用できるAIを自身のWebサイトやアプリに組み込みたい場合、APIキーを発行して組み込む必要があります。
上部の「Get API key」ボタンからダッシュボード画面に移動して「APIキーを作成」ボタンを押してください。
するとGoogle Cloudに新しいプロジェクト「Gemini API」が作成され、同プロジェクト内でAPIキーが生成されます。
すでにGoogle Cloudにプロジェクトが存在している場合は、APIキーを作成するプロジェクトを選択できます。
作成したAPIキーを自分のプログラムに設定することで、GoogleのAIを統合させましょう。
Google AI Studioに関するQ&A

Google AI Studioに関する、よくある質問と回答を紹介します。
- 日本語化できますか?
- プロンプトを実行するとエラーになります
- Google AI Studioの料金体系は?
- Geminiとの違いは何ですか?
- Vertex AI Studioとの違いは?
- 入力したデータはAIの学習に使われますか?
- 日本語化できますか?
-
Google AI Studioの画面は、現在のところ英語表記が基本です。
しかし、AIへの指示であるプロンプトは日本語に完全対応しており、問題なく日本語で対話や指示ができます。
英語が苦手な場合は、Google ChromeのDeeplyやGoogle翻訳を利用して、ページ全体を日本語に翻訳すると良いでしょう。
- プロンプトを実行するとエラーになります
-
プロンプトを実行した際にエラーが発生しやすい原因は以下のとおりです。
- サーバーへのリクエストが集中している
- リクエストの頻度が多すぎる(Rate Limitを超えている)
- 入出力トークンの量が制限を超えている
- Safety settingでブロックされている内容が関わっている
特に無料プランではサーバーへのリクエストが集中しやすく、AIモデルがしばらく応答できなくなることも。
エラーが頻繁に起きるようであれば、有料でAPIを使うことも検討したほうが良いかもしれません。
- Google AI Studioの料金体系は?
-
Google AI Studioのプラットフォーム自体は、Googleアカウントがあれば無料で利用できます。
無料プランには1分間あたりのリクエスト数(RPM)などに制限がありますが、個人的な学習や試用には十分です。
APIキーを取得して外部のアプリケーションからAIモデルを利用する場合は、モデルや使用量に応じた従量課金制の料金が発生します。
ダッシュボード画面から支払いに関する設定ができるので、APIを使う前に設定しておきましょう。
詳細な料金体系はこちらのページで確認できます。
- Geminiとの違いは何ですか?
-
GeminiはGoogleが開発したAIモデルそのものの名称で、Google AI StudioはGeminiを含めたAIモデルなどを動かせるプラットフォームです。
また、Google AI Studioとは別にGeminiのプラットフォームが提供されていますが、こちらは一般ユーザーに提供されているサービスとなっています。
Geminiのモデルを活用してアプリを開発したり、性能を確かめたりしたい開発者にとっては、Google AI Studioが向いているでしょう。
- Vertex AI Studioとの違いは?
-
Google AI StudioとVertex AI Studioは、どちらもGoogleのAIモデルを利用できるプラットフォームですが、主なターゲットユーザーと用途が異なります。
Google AI Studioは、主に個人開発者や研究者が手軽にAIモデルを試せる実験室のような場所です。
一方Vertex AIは、Google Cloud上で企業などの大規模なプロジェクト向けに提供されている、本格的な工場と言えます。
AI事業を大規模に進めたいのであれば、Vertex AI Studioの利用を検討してみると良いでしょう。
- 入力したデータはAIの学習に使われますか?
-
Google AI Studioの無料版では、サービスの品質向上のために入力データが利用される可能性があります。
他のユーザーに学習結果が出力される危険性もあるため、機密情報や個人情報の入力は避けるべきです。
有料のAPIサービスを利用する場合は入力データを学習に使われないようにできるので、ビジネスで利用する際は注意してください。
まとめ
本記事では、Google AI Studioで何ができるのか、その特徴から使い方、料金体系までを解説しました。
最後に、記事の内容をおさらいしておきましょう。
- Google AI StudioはGoogleの最新AIモデルを無料で試せる開発者向けプラットフォーム
- AIモデルやパラメータを調整して出力を最適化できる
- Googleアカウントがあれば無料で始められる
- 音声対話、画像生成、アプリのコード生成なども可能
- 使い方によっては従量課金制の有料利用がおすすめ
Google AI Studioは、AI開発の知識がない方でも、最先端の技術に触れることができる非常に強力なツールです。
ぜひこの記事を参考に、Google AI Studioを使って様々なAIの可能性を体験してみてください。