2024年以降、業務効率化や創作支援を目的としたAIツールの導入が急速に広がっています。
なかでも存在感が大きいAIツールとして、Copilot(コパイロット)とChatGPT(チャットジーピーティー)があります。
しかし、次のような疑問を持っている方も多いでしょう。
- CopilotとChatGPTの具体的な違いがわからない
- 自分の用途に合うのはどちらか知りたい
- 料金プランや導入方法の比較が難しい
結論から言うと、CopilotとChatGPTはどちらもOpenAIのGPT-4系モデルを基にしていますが、用途や導入環境、カスタマイズ性に明確な違いがあります。
今回は、Microsoft CopilotとChatGPTの違いについて徹底比較します。
AIツールの選定に悩んでいる方は、ぜひ本記事を最後までご覧ください。
CopilotとChatGPTの違い

CopilotとChatGPTの違いは、一言でまとめると法人向けかどうかです。
それぞれの主な特徴や違いについて、以下表にまとめました。
比較項目 | Copilot | ChatGPT |
---|---|---|
提供元/開発元 | Microsoft(OpenAIと提携) | OpenAI |
搭載AIモデル | Microsoft製品向けに最適化したGPT-4o | GPT-4o、GPT-4.1などを用途に応じて選択可能 |
利用できるプラットフォーム | Microsoft 365、Windows、Webなど幅広く統合 | Webやアプリで手軽に使える |
主な用途・活用場面 | Office業務やデータ活用の効率化 | 自由な対話や創造的作業への対応 |
導入のしやすさ | Microsoft環境との連携前提で法人向けに導入しやすい | 登録のみで個人から法人まで利用できる |
セキュリティ・データ管理体制 | Microsoft 365基準の統合的なガバナンス | プランに応じた柔軟なセキュリティ構成 |
カスタマイズ性・拡張性 | Microsoft製品内に最適化、拡張性は限定的 | プラグイン・API・カスタムGPTで柔軟に拡張可能 |
料金体系 | 無料プランあり、Microsoft 365利用者が主な対象 | 無料〜法人プランまで段階的に選べる体系 |
ここでは、大きな違いとなる以下4つのポイントについて詳しく解説します。
- 主な用途・活用場面
- 法人利用への導入のしやすさ
- カスタマイズ性および拡張性
- 料金体系と無料利用
1. 主な用途・活用場面
CopilotとChatGPTは、活用される場面や目的に明確な違いがあります。
CopilotはMicrosoft 365と深く統合されており、文書作成やメール処理、表計算など日常的な業務の自動化や効率化に特化しています。
たとえば、Outlookでメール文を自動生成したり、Excelでの関数やグラフを作成したりする支援が主な活用方法です。
一方、ChatGPTは幅広いテーマへの柔軟な応答が可能で、多用途に対応できます。
文章作成や学習支援、プログラミングサポートなどの用途に応じて、話し方やトーンを調整したうえで出力することが可能です。
業務フローに組み込みたい場合はCopilot、幅広い創作や情報探索に活用したいならChatGPTが適しています。
2. 法人利用への導入のしやすさ
CopilotはMicrosoft 365環境に最適化されており、とくに法人での導入がしやすい設計が特徴です。
既にMicrosoft 365を利用している企業であれば、スムーズに導入できるでしょう。
一方、ChatGPTは登録だけで誰でも使い始められるため手軽ですが、既存ツールと統合するには手間がかかります。
ChatGPTには法人向けのTeamプランやEnterpriseプランが用意されているものの、Copilotの管理機能と比べると制限があります。
Microsoft環境との統合や、一括したライセンス管理機能を活用したいのであれば、Copilotの導入がおすすめです。
3. カスタマイズ性および拡張性
CopilotはMicrosoft 365製品に最適化されており、外部アプリケーションとの連携やユーザー独自の拡張は制限されています。
Copilot Studioを利用すれば一定のカスタマイズは可能ですが、用途の幅は広くありません。
一方ChatGPTは、自社アプリに組み込めるAPIや、外部サービスに接続できるカスタムGPTなど、カスタマイズ手段が豊富です。
閉じた環境での一貫した業務支援にはCopilotが適していますが、AIを柔軟に活用する際はChatGPTに軍配が上がるでしょう。
4. 料金体系と無料利用
CopilotとChatGPTはどちらも複数のプランが用意されており、無料で利用することも可能です。
それぞれで用意されているプランは以下のとおり。
プラン | Copilot | ChatGPT |
---|---|---|
個人用プラン | ・Microsoft Copilot Pro(月3,200円) | ・Plus(月20ドル) ・Pro(月200ドル) |
法人用プラン | ・Microsoft 365 Copilot(月4,497円) | ・Team(月30ドル/ユーザー) ・Enterprise(要問合せ) |
CopilotをMicrosoft 365内で使うには有料プランの契約が必要で、Microsoft 365自体のライセンスも別途必要となります。
無料のCopilotでは、対話形式で利用するCopilot Chat機能しか使えないので注意してください。
無料利用の範囲でCopilotとChatGPTを比べた場合、回数に制限のないモデルが用意されているChatGPTのほうが使いやすいでしょう。
Copilotの特徴と強み

ここでは、Copilotを選ぶ決め手となりうる特徴や強みとして、以下4点を深掘りします。
- 複数のデバイスやプラットフォーム
- Microsoft 365全体とのシームレスな統合
- ビジネス向けセキュリティとガバナンス
- 法人向けの導入と運用のしやすさ
1. 複数のデバイスやプラットフォーム
対話形式で利用できるCopilot Chatは、さまざまなデバイスやプラットフォーム上で無料から利用できます。
webブラウザやデスクトップアプリケーション、モバイルアプリなど、ユーザーの使用環境に応じて柔軟なアクセスが可能です。
とくにWindows 11にはCopilot Chatが標準搭載されており、OSの一部としてAIを活用できる点は他のサービスにはない優位性と言えるでしょう。
ただし、Copilotの真価を発揮できるMicrosoft 365上での活用には、有料プランのMicrosoft 365 Copilotに加入する必要があります。
2. Microsoft 365全体とのシームレスな統合
Microsoft 365 Copilotを購入することで、Microsoft 365関連ツールでAIが自然にサポートしてくれる機能を利用できます。
例として、関連ツールと使用例を以下表にまとめました。
Word(ワード) | 文章の自動生成や添削、画像の生成 |
Excel(エクセル) | データの分析と視覚化、セルの並べ替えや装飾、数式の簡素化 |
PowerPoint(パワーポイント) | アイデアの具体化、スライドの整理や追加、画像の生成 |
Outlook(アウトルック) | メールの要約や添削、下書きの執筆 |
こうした実行結果がツール上で直接反映されるため、生成結果をコピーする手間もいりません。
ITスキルやツールの使い方に自信がないユーザーでも、高度な作業を直感的にこなせるようになるでしょう。
なお、Copilot Proに加入しても上記ツールのAI活用が可能です。
3. ビジネス向けセキュリティとガバナンス
Copilotは厳格なセキュリティ基準に準拠しており、企業のガバナンス要件を満たしています。
具体的なセキュリティ対策は以下のとおりです。
セキュリティ対策 | 内容 |
---|---|
ユーザー認証 | Microsoft Entra ID(旧Azure AD)を使用したSSOや多要素認証 |
情報保護機能 | Microsoft PurviewによるDLP(情報漏洩防止)およびIRM(権限管理) |
データの学習利用 | AIモデルの学習にデータが一切使用されない |
データ管理と保存 | 企業ごとに隔離された環境で運用 |
コンプライアンス準拠 | ISO、GDPR、SOC 2などの国際的な認証や規制に対応 |
監査ログ・可視化 | ユーザー操作や生成内容を追跡できるアクティビティ履歴やログ機能 |
このように、Copilotは安全にAIを活用できる体制が整えられています。
4. 法人向けの導入と運用のしやすさ
Copilotは、既にMicrosoft 365を導入している企業であれば、非常にスムーズに導入できます。
導入に必要なのは、対応するMicrosoft 365ライセンスと、追加のCopilotライセンスのみ。
管理者はMicrosoft 365管理センターからライセンスの一括割り当てやポリシーの設定を行うことができるため、IT部門の負担も最小限に抑えられます。
また、ユーザー側は使い慣れたOfficeアプリ内にCopilotが自然に組み込まれているため、特別な学習やトレーニングを必要としません。
このように、導入から活用までがシームレスに完結する点が、Copilotの大きな強みです。
ChatGPTの特徴と強み

ここでは、ChatGPTの主な特徴と強みについて、以下4つの観点から詳しく解説します。
- 自由度の高いプロンプト対応
- 用途に応じたモデルの変更
- カスタムGPT・API連携などの拡張性
- 過去の会話内容などを記憶するメモリ機能
1. 自由度の高いプロンプト対応
ChatGPTの大きな特長は、プロンプト(指示文)の自由度が極めて高く、多様な業務内容・文体・形式・視点での出力に対応できることです。
たとえば、ChatGPTであれば冗談交じりに対話したり、フランクな話し方に順応したりと、あらゆるプロンプトに対して適切な反応をしてもらいやすいです。
あらかじめ出力形式を指示しておけば、出力される結果を意図的に大きく変更させることも可能。
柔軟な指示で応答の形式やトーンを自在に制御したい場面において、ChatGPTは特に強みを発揮できます。
2. 用途に応じたモデルの変更
ChatGPTでは、利用者のプランや目的に応じてAIモデルを選択できるメリットがあります。
無料プランで4oを限定的に使える点はCopilotと同様ですが、4.1 miniモデルに切り替えることで回数制限なく利用できます。
さらにPlusやTeamプランに加入すれば、4oや4o mini以外にも以下のようなモデルを利用できるように。
- o3|より高度な推論が可能
- o4-mini|高度な推論と速さを兼ね備えている
- o4-mini-high|コーディングや視覚的な推論が得意
- 4.1|迅速なコーディングと分析に適している
- 4.1 mini|日常的な作業の効率化に使える
- 4.5|アイデア出しや調査に向いている
こうしたモデル選択の柔軟性が、ChatGPTの多様な活用を支える基盤となっています。
3. カスタムGPT・API連携などの拡張性
ChatGPTが特に優れているのは、外部ツールに接続したりアプリに組み込んだりできる拡張性です。
以下のような機能を活用することで、ChatGPT単体では実現できない処理も可能になります。
カスタマイズ手段 | 概要 | 具体的にできること |
---|---|---|
API提供 | OpenAI API経由でモデルにアクセス | ・自社アプリにGPT機能を組み込む・チャットボットやFAQ自動応答・自動での要約や翻訳・コード生成 など |
プラグイン対応 | 他サービスと連携する機能を追加可能 | ・外部サービスと連携(Zapier、Wolfram Alpha等)・リアルタイムでの検索やデータ取得 |
カスタムGPT | ユーザー自身が独自仕様のGPTを作成 | ・指示文(プロンプト)の事前設定・特定業務に最適化した専用AIを構築 |
ChatGPTのこうした柔軟な拡張性は、企業でも個人でも自由なAI活用の土台となっています。
4. 過去の会話内容などを記憶するメモリ機能
ChatGPTでは、ユーザーの過去の会話内容や好み、タスク傾向などをAIが記憶するメモリ機能が利用できます。
たとえば「いつも敬語で話してほしい」「特定のフォーマットで答えてほしい」といったスタイルを記憶させることで、毎回同じ指示を繰り返す必要がなくなります。
さらに、2025年4月にはメモリ機能が大幅に強化され、過去のチャット履歴から重要な情報を検出して回答することも可能に。
特に重要だと思われる情報はAIが自動的に記憶してくれるので、チャットを繰り返すたびにユーザーに合った出力をしてもらいやすくなるでしょう。
なお、メモリ機能はオン/オフが切り替え可能で、保存された内容をユーザー自身が確認したり削除したりすることもできます。
CopilotとChatGPTの違いに関するQ&A

CopilotとChatGPTの違いに関する、よくある質問と回答を紹介します。
- CopilotとChatGPTは同じAIモデルですか?
- CopilotとChatGPTの日本語対応に差はありますか?
- プログラミングに向いているのはどちらですか?
- どちらを選べばいいか迷ったときの判断基準は?
- CopilotとChatGPTは同じAIモデルですか?
-
はい、どちらも同様のOpenAI製モデルを利用しています。
なぜなら、Microsoft社とOpenAI社はパートナーシップを締結しており、ChatGPTのモデルを利用する権利をCopilotが得ているからです。(参考:Microsoft)
ただし、CopilotはMicrosoft製品向けに最適化されているため、出力内容に差はあります。
- CopilotとChatGPTの日本語対応に差はありますか?
-
どちらもGPT-4oを採用しており、日本語対応に大きな差はありません。
CopilotもChatGPTも日本語で指示できるので、不自由を感じることはないでしょう。
- プログラミングに向いているのはどちらですか?
-
実装作業の効率化を目的とするなら、Copilotの方がプログラミングに向いています。
ただし、本記事で紹介したMicrosoft 365 Copilotではなく、GitHub Copilotを別に契約する必要があります。
- GitHub Copilot Business(個人向け):約2,714円/月
- GitHub Copilot Enterprise(法人向け):約5,571円/月
GitHub CopilotはVisual StudioやVisual Studio Codeに統合されているため、コーディングの作業効率が上がりやすいです。
一方、対話形式でコードを生成したりデバッグしたりする用途であれば、高度な推論もできるChatGPTが便利でしょう。
- どちらを選べばいいか迷ったときの判断基準は?
-
利用目的と環境に応じて利用するツールを選びましょう。
- Copilot:Microsoft 365製品との連携や業務効率化を重視
- ChatGPT:柔軟な対話形式やカスタマイズ性を重視
どちらも無料プランで試用できるので、実際に体験してから選ぶのもおすすめです。
Microsoftと連携した機能は無料で試せないので注意してください。
まとめ
本記事では、CopilotとChatGPTの違いについて解説しました。
最後に、記事の内容をおさらいしておきましょう。
- CopilotはMicrosoft 365との統合に強みがあり、業務効率化に適している
- ChatGPTは自由度が高く、創造的な用途や学習支援に向いている
- 法人利用では、Copilotのほうがセキュリティ面で優れている
- 開発したアプリとの連携などのカスタマイズ性が高いのはChatGPT
- 両者は同様のAIモデルを搭載しているが、使われ方に大きな違いがある
CopilotとChatGPTは、それぞれに異なる強みを持つAIツールです。
ぜひ、あなたの業務や学習、創作に最適なかたちで活用してみてください。