昨今では生成AIとデータ活用が当たり前となり、スキルの学び直し（リスキリング）の速度が競争力を左右します。
しかし、次のような疑問を持つ方も多いでしょう。
- AIリスキリングが何なのかわからない
- 助成金を使って研修費用を抑えたい
- 助成金を申請する際の注意点が気になる
結論から言うと、AIリスキリングはAIを利用するスキルを学び直すことで、研修の受け方に応じた助成金制度に申請すれば費用を抑えられます。
本記事では、AIリスキリングや助成金にかかわる要点や注意点などを解説します。
企業や個人でのスキルアップを目指したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
AIリスキリングとは？助成金にかかわる5つの要点
AIリスキリングとは、AIスキルを再教育することで、国が推奨する成長分野への人材移動を促す取り組みです。
ここでは、AIリスキリングと助成金活用の要点を次の順で解説します。
- AIスキル再教育を国が推奨している
- 助成金を申請すると受講後に受け取れる
- 計画届と支給申請が必要
- 対象となる講座が指定されていることもある
- 企業と個人で申請主体が異なる
１.AIスキル再教育を国が推奨している
すべての働く人がスキルを学び直し、成長分野へ移動できる社会を政府は目指しています。
その背景にあるのは、急速なAI技術の進化と深刻なデジタル人材不足です。
日本の企業では、AI分野の人材が圧倒的に足りていないため、国全体でリスキリングを促す必要が生じています。
このことから、AIを学ぶ必要性の大きさがうかがい知れるでしょう。
２.助成金を申請すると受講後に受け取れる
AIリスキリングを計画的に実施すれば、厚生労働省や経済産業省などから助成金を受け取れる可能性があります。
助成金は返済不要の支援金で、要件を満たせば必ず受け取れます。
費用に対して割合で給付されるため、高額なAI研修を受ければリターンも大きいです。
ただし金額には上限があるので注意してください。
３.計画届と支給申請が必要
助成金の受給には、計画届と支給申請の両方が必要です。
計画届は受講する前に、支給申請は受講した後に、それぞれ提出します。
どちらか一方でも提出できていないと助成金は受け取れないので注意してください。
なお、制度によっては支給申請のみの提出で助成金が受け取れる場合もあります。
４.対象となる講座が指定されていることもある
申請する助成金制度によっては、給付の対象となる講座が指定されているケースもあります。
たとえば、個人で利用できる教育訓練給付金は、厚生労働大臣指定講座のみが対象です。
特に指定されていない制度でも、動画視聴のみの研修は対象外となる可能性があります。
AIリスキリングで助成金を受け取りたい場合は、助成金の要件を確認したうえで講座を選ぶとよいでしょう。
５.企業と個人で申請主体が異なる
助成金の申請を提出する責任者（申請主体）は、制度の対象者によって異なります。
企業向けの制度では会社が申請しますが、個人向けの制度では受講する本人が申請者です。
立場によって必要書類や助成率が変わる場合もあるため、申請するのが企業か個人かを明確にしてください。
AIリスキリングで活用できる主な助成金・補助金5選
AIリスキリングで活用できる助成金・補助金は、企業向けと個人向けで異なります。
ここでは、企業・個人が使いやすい助成金および補助金として以下5つを解説します。
- 人材開発支援助成金｜企業の従業員研修に最適
- DXリスキリング助成金｜地域企業の教育支援
- IT導入補助金｜AIツール導入と研修を併用可能
- 教育訓練給付金｜個人の受講費を軽減できる
- リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業｜キャリア支援と一体化
１.人材開発支援助成金｜企業の従業員研修に最適
AI研修を企業として実施する場合、最も活用しやすいのが人材開発支援助成金です。
この制度では、AIスキルやデータ分析など新たな業務領域へのリスキリング研修が助成対象となります。
研修は業務と切り離して行うOFF-JT形式が基本で、一定の時間数・到達度評価・学習記録が必要です。
研修後には、出席率8割以上や支払い証憑の整備、賃金支給実績などをもとに支給申請してください。
計画届は訓練開始の6か月前〜1か月前に提出する必要があるため、AI研修の実施時期から逆算して準備を始めましょう。
| 主な対象 | 企業（雇用保険適用事業主） |
|---|---|
| 対象要件 | 受講者が雇用保険被保険者であること。訓練計画の策定・届出が必要。 |
| 申請手続き | 研修前に計画届を提出（開始6か月前〜1か月前）。研修後に支給申請。 |
| 給付される額・割合 | ・経費助成：研修費の45〜75％程度 ・賃金助成：訓練時間中の賃金の30〜75％を支給（区分により異なる） |
| 公式サイト | 厚生労働省：人材開発支援助成金 |
２.DXリスキリング助成金｜地域企業の教育支援
東京の自治体が実施するDXリスキリング助成は、地域の中小企業が従業員にAI研修を実施する際に活用できます。
各自治体内で勤務する従業員が対象であり、受講費の3/4が助成されます。
申請は自治体ごとに年度単位で募集され、受付期間内の申請が必要です。
東京以外の自治体でも同様の助成金がありますが、制度によって名称が異なるので注意してください。
| 主な対象 | 企業（東京内勤務の従業員が対象） |
|---|---|
| 対象要件 | 勤務地・勤務先所在地など地域要件を満たすこと。都内勤務者などが対象。 |
| 申請手続き | 自治体が定める募集期間内に申請。年度ごとに受付を実施。 |
| 給付される額・割合 | 受講費の3/4（上限7.5万円／人、企業上限100万円） |
| 公式サイト | 東京都：DXリスキリング助成金 |
３.IT導入補助金｜AIツール導入と研修を併用可能
IT導入補助金は、企業がAIツールやシステムを導入する際、その費用の一部を補助する制度です。
導入ツールの操作・活用方法を習得する計画を提出することで、導入支援費として研修が補助対象になることがあります。
研修単体では適用できないためハードルは高いですが、ITツールなどを導入するのであれば申請を検討するとよいでしょう。
補助対象や申請スケジュールは年度ごとに変わるため、最新の募集要項を必ず確認してください。
| 主な対象 | 中小企業・小規模事業者 |
|---|---|
| 対象要件 | ITツール導入および業務効率化を目的としていること。 |
| 申請手続き | 公募期間内に申請し、採択後に実施・報告。 |
| 給付される額・割合 | 補助率最大1/2。導入支援を含む研修費も対象となる場合あり。 |
| 公式サイト | IT導入補助金2025 |
４.教育訓練給付金｜個人の受講費を軽減できる
AI研修を個人で受講する場合に活用できるのが、教育訓練給付金です。
この制度は、厚生労働大臣が指定したAI関連講座を受講すると給付金が支給されます。
対象となる講座は厚生労働省の検索システムで探せるので、受講する予定があればチェックしてみてください。
受講前に資格確認を満たして申請する必要があるので、申請し忘れないよう注意しましょう。
| 主な対象 | 個人（雇用保険加入者） |
|---|---|
| 対象要件 | 厚生労働大臣指定の講座を受講し、一定の加入期間などの要件を満たすこと。 |
| 申請手続き | 受講前に資格確認。修了後に支給申請（電子申請も可）。 |
| 給付される額・割合 | 受講費の20〜80％を給付 ・一般：20％ ・特定一般：50％ ・専門実践：最大80％ |
| 公式サイト | 厚生労働省：教育訓練給付制度 |
５.リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業｜キャリア支援と一体化
経済産業省が実施するリスキリング事業は、AIスキルを含む実践的な学びとキャリア支援を一体で受けられる制度です。
対象者は、転職やキャリアアップを目的としてAI関連講座を受講する個人。
受講料の半額に、転職成功に対する追加支援が加わり、最大56万円相当が補助されます。
ただし、厳密に言うとこの制度で支援されるのは、一連のサービスを提供している補助事業者です。
補助事業者が受け取った支援をもとに、対象となる受講者に還元される形となっています。
| 主な対象 | 個人（転職・キャリアアップ希望者） |
|---|---|
| 対象要件 | 相談・講座・転職支援を一体的に利用すること。 |
| 申請手続き | 事務局公募期間中に申請し、修了・成果確認後に支援反映。 |
| 給付される額・割合 | ・受講料の1/2（上限40万円） ・転職・スキル達成により追加1/5（上限16万円） |
| 公式サイト | リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 |
助成金を申請する際の注意点5つ
AIリスキリングで助成金を申請する際は、期限厳守や証拠書類の保管などに注意が必要です。
ここでは、申請する際につまずきやすい以下の注意点を解説します。
- 申請期限を厳守する
- 経費の使い方を区別する
- 実績証拠を必ず残す
- 他制度との併用を避ける
- 制度が変更されてないか定期的に確認する
１.申請期限を厳守する
それぞれ提出期限が決まっており、期限を過ぎると助成金は受け取れなくなります。
たとえば、計画届の提出期限が1か月前までであれば、1週間前に提出しても受理されません。
また、要件を満たした研修が実施できたとしても、支給申請が遅れてしまうと不支給となります。
AIリスキリングを計画する際は、計画届と支給申請を期日までに提出するよう気を付けてください。
特に、研修期間が長期間に及ぶ場合は要注意です。
２.経費の使い方を区別する
助成金の対象となる経費は細かく定められているため、用途の区別を明確にしてください。
多くの場合、機材の購入費やシステム導入費などは対象外とされます。
対象外の経費を含めて申請すると、審査で差し戻されたり減額されたりする可能性も。
研修に直接かかる費用と、それ以外の運営・設備費をきちんと分けて記録しましょう。
領収書や支払い明細などの証拠書類をすべて保管しておくと、いざというとき安心です。
３.実績証拠を必ず残す
助成金を受け取るためには、研修を確実に実施した証拠を残す必要があります。
実績を示す以下のような資料は、支給申請をする際に提出しなければなりません。
- 出席記録
- 修了証
- 支払い証明
- 教材の領収書
オンライン講座の場合は、受講時間や進捗状況が分かるログデータを用意します。
複数人で受講する場合は、参加者ごとの記録を個別に残すよう徹底してください。
４.他制度との併用を避ける
複数の助成金や補助金を同じ研修に対して同時に利用するのは避けましょう。
多くの制度では、同一の受講費や講師費を別の制度でも申請することを禁止しています。
ただし、それぞれの制度の要綱を確認し、対象範囲や経費の区分を明確に区別することで併用できる可能性はあります。
事前に窓口へ相談し、制度同士の併用可否を確認するのが確実です。
５.制度が変更されてないか定期的に確認する
助成金制度は、年度ごとに内容が見直されるのが一般的です。
そのため、過去の情報を参考にすると、助成率や上限額などの条件が異なっている可能性があります。
特にAIリスキリング関連の制度は、技術の進化や人材政策の方針に合わせて更新される傾向が強いです。
申請する際は必ず公式サイトや公的機関の発表をチェックし、最新情報をもとに計画を立ててください。
AIリスキリング助成金に関するQ&A
AIリスキリング助成金に関する、よくある質問と回答を紹介します。
- 個人でも助成金を利用できますか？
- AIリスキリングの研修内容はどこまで助成対象？
- 社員の一部だけでも申請できる？
- 自社でAI研修を実施しても助成金は出る？
- 生成AIスキルの学習も助成対象になる？
- 転職・キャリアチェンジ目的でも利用できる？
個人でも助成金を利用できますか？
はい、個人でも利用できる制度があります。
リスキリングを目的とした助成金には、企業向けのほかに、個人の学び直しを支援する仕組みも整備されています。
一定の要件を満たせば、在職中でも離職後でも申請できるケースも。
受講前に手続きが必要なものが多いため、準備は早めに進めましょう。
AIリスキリングの研修内容はどこまで助成対象？
助成金の対象となる研修内容は「業務に関連し、生産性やスキル向上につながるもの」に限られます。
趣味的な内容やAIとは直接関係のない学習テーマは対象外となることがあります。
研修計画書などを作成する際には、AI活用が業務改善やスキル転換にどう結びつくかを具体的に記載するとよいでしょう。
助成対象と認められるかどうかは、講座の目的・内容・学習成果が明確であるかが判断基準です。
社員の一部だけでも申請できる？
はい、社員の一部のみがAI研修を受ける場合でも申請できる制度があります。
助成金は、特定の部署や役職者を対象にした研修でも認められる場合が多いです。
例えば、「データ分析担当者を育成する」「営業部門で生成AIを活用する」など、業務上の必要性を示すと申請が通りやすくなります。
全社員に共通するスキル研修ではなくても、どの範囲でどのように必要か明記しましょう。
自社でAI研修を実施しても助成金は出る？
条件を満たせば、社内で実施するAI研修も助成対象になる場合があります。
例えば、外部講座を利用せずに、専門知識を持つ社内講師や外部講師を招いて社内研修を行うケースです。
講座がAI活用に関する体系的な内容であり、教育目的が明確であれば、助成金の条件に合致すると判断されやすくなります。
なお、社内で開催する場合も、研修内容や受講時間などの記録を客観的に残さなければなりません。
生成AIスキルの学習も助成対象になる？
ChatGPTのような生成AIの学習も、業務での活用を目的とした内容であれば助成対象に含まれる可能性があります。
例えば、以下のような目的であれば実務と結びつきやすいため、助成金の対象となりやすいでしょう。
- 文章自動生成
- データ整理
- 顧客対応の自動化
一方で、芸術的な創作を学ぶといった、業務と関係の薄い学習は対象外になることが多いです。
AI技術の発展に合わせて審査基準も変化しているため、最新のガイドラインを確認しておきましょう。
転職・キャリアチェンジ目的でも利用できる？
はい、在職中でも離職後でも、キャリアアップを目的としたAIリスキリングに助成を受けられる制度があります。
AIスキルは多くの業界で需要が高いため、転職や再就職に直結する学習内容が支援対象となる傾向があります。
ただし、自己啓発や趣味的な学びは支援対象と認められない可能性が高いです。
助成金を申請する際は、学んだスキルをどのようにキャリアに活かすかを具体的に説明するとよいでしょう。
まとめ
本記事では、AIリスキリングや助成金について解説しました。
最後に、記事の内容をおさらいしておきましょう。
- AIリスキリングは国が推進しており、企業や個人を支援している
- 助成金は原則として受講前と受講後に手続きが必要
- 申請の締め切りや重複に注意する
- 対象となる講座や経費を事前に確認すると安心できる
- 制度や要件が更新されるいないか最新情報を必ず確認すること
AIリスキリングは、費用負担を抑えながらAIスキルを習得できる選択肢です。
ぜひ受講開始前から計画を立て、企業や自身に適した制度を利用して学びを進めてください。
